Strategy & Tactics誌 第77号(1979年11月-12月号)の付録で後にSPIから箱入りで発売された『奇襲空挺部隊』は『エバン・エマール』(Eben Emael)、『クレタ』(Crete)、『レッド・デビルス』(Red Devils)の3個のゲームが同梱されている。
この3個のゲームはゲーム・スケールもルールも異なる全く別なゲームである。
『エバン・エマール』(Eben Emael)(以下EEと略す。)は、1940年5月10日に行われたベルギーのエバン・エマール要塞への空挺強襲作戦を戦術級レベルで再現するゲームである。
ゲーム・スケールは1ヘクス=100m、1ターン=12分、1ユニットが1個分隊である。
ユニットを見ると驚いた!攻撃力も防御力も移動力も射程も士気も、部隊名以外はとにかく数字が何も書いていない。裏は釘付け状態(Pinned)を表す。印刷がズレているのはこの頃のSPI品質なので許してあげよう。
ルールを読むと、移動力は全て"4"。分隊ユニットの射程は全て"2ヘクス"だ。防御力に相当する被有効値(Effectiveness Rating)は、ドイツ軍"4"、ベルギー軍"3"だ。攻撃力は戦闘結果表で使う列の違いにあたる。
ゲームの手順は、以下のとおり。
ドイツ軍プレイヤーターン
ステップ1:ベルギー軍戦闘態勢判定フェイズ
ステップ2:ドイツ軍射撃フェイズ
ステップ3:ドイツ軍移動フェイズ
ステップ4:ベルギー軍防御射撃フェイズ
ステップ5:ドイツ軍突撃フェイズ
ステップ6:ドイツ軍回復フェイズ
ベルギー軍プレイヤーターン
ステップ7:ベルギー軍射撃フェイズ
ステップ8:ベルギー軍移動フェイズ
ステップ9:ドイツ軍防御射撃フェイズ
ステップ10:ベルギー軍突撃フェイズ
ステップ11:ベルギー軍回復フェイズ
地図は、横22ヘクスx縦17ヘクス=横2200mx縦1700mのエバン・エマール要塞周辺を表している。印刷色の関係で、斜面(Slope)ヘクスサイドと崖(Cliff)ヘクスサイドの違いがよくわからない。明らかに崖のヘクスサイドには自分でマジックで線を描いた。
Board Game Geekに添付されていた下記ファイルが正しいとすると、ヘクス1606からヘクス1621までとヘクス1506からヘクス1522までの間が崖(Cliff Hexside)だ。
https://boardgamegeek.com/filepage/80049/st77-paratroop-rules-summary
11ヶ所のケースメイト型トーチカ(射撃方向が決まっている)と7カ所のキューポラ型トーチカ(360度射撃可能)と兵舎(?)のような建物が描かれている。
戦いの目的は、ドイツ軍はトーチカに近づいて爆弾で破壊することで、ベルギー軍はそれを阻止することだ。
ヒストリカル・シナリオとベルギー軍空挺作戦準備シナリオの2個のシナリオがある。
空挺作戦ゲームなのに、降下ルールがないのにガッカリさせられた。空挺作戦ゲームは、「風に流されてしまうのではないか」、「予定したポイントに降下できるかどうか」というのが空挺作戦ゲームの肝なのに、ヒストリカル・シナリオは配置場所があらかじめ決まっているし、ベルギー軍空挺作戦準備シナリオは、ドイツ軍プレイヤーが自由に配置場所を決められる。『戦闘指揮官』(Squad Leader)シリーズの降下ルールを参考にして、ヘクス数を半分にして降下ルールを追加すると面白いかもしれない。
戦闘解決は独特のものだ。射撃するユニットやトーチカのタイプによって使う列が異なり、サイコロを1個振り、地形などのサイコロ修整する。サイコロの目と射撃するユニットやトーチカのタイプの列を交差すると数値が読み取れる。もう一度サイコロを振り、その数値を加算した値が、目標の被有効値(Effectiveness Ratig)より大きければ「釘付け」状態となりユニットを裏返す。"4"以上大きければ、ユニットは全滅し除去する。
近接突撃フェイズでは、ドイツ軍は、ベルギー軍分隊を攻撃するかトーチカ爆破の試みをすることができる。分隊を攻撃するときは、近接突撃結果表で、部隊数の差とサイコロの目を交差して結果を見る。トーチカ爆破は、通常の爆薬は"3"、110ポンド爆薬だと"5"の爆破力を持っている。サイコロ1個振り、爆破力以下なら爆破成功だ。
テーマとなったエバン・エマール要塞の戦いが2時間程度で一方的に終わった戦いだったこともあり、ドイツ軍が次々とトーチカを破壊していく展開になる。ドイツ軍側でソロプレイするのに向いている。ベルギー軍は最初はほとんどいないが、後から続々とやってくる。ベルギー軍が増える前にどれだけトーチカを破壊できるかがポイントになる。
空挺部隊の奇襲を受けた側が兵力が多くても三々五々集結すると効果的な戦いができないことがよくわかる。空挺部隊も降下時点ではどうしても散らばってしまうので集結して戦力となるのに時間がかかることもよくわかる。
『戦闘指揮官』(Squad Leader)ルールで、『戦闘指揮官』(Squad Leader)の地図の縮尺で本当のエバン・エマール要塞の地図を使ったシナリオがあったら、プレイしてみたいものだ。
「付録だから仕方ないかぁ・・・。あとの2作も同じだと残念だなぁ・・・。」と思った。しかし、他の2作はEEとは違って降下ルールがあり、作戦を堪能できる面白いゲームだった。
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