Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

S&T 77号『奇襲空挺部隊』(PARATROOP) 『クレタ』(Crete)

Strategy & Tactics誌 第77号(1979年11月-12月号)の付録で後にSPIから箱入りで発売された『奇襲空挺部隊』は『エバン・エマール』(Eben Emael)、『クレタ』(Crete)、『レッド・デビルス』(Red Devils)の3個のゲームが同梱されている。

 この3個のゲームはゲーム・スケールもルールも異なる全く別なゲームである。

 『クレタ』(Crete)は、1941年5月20日から6月1日にかけて行われたクレタ島をめぐる戦いをシミュレートしたゲームだ。

 ゲーム・スケールは、1ターン=1日、1ヘクス=1マイル(約1.6km)の大隊レベルだ。

 

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Strategy & Tactics誌 77号 Paratroop

 地図盤は、クレタ島を3個に分割して3個の地図に分かれており、地図間移動には1ターンかかる。それぞれの地図に空港があり、守る英軍としてはどこにドイツ軍が攻めてくるのかわからないので、兵力配分をどうするか悩ましいところだ。一方のドイツ軍も英軍の配置によって、どこに降下するかよく考えないといけない。

 ゲームの手順は次のとおり。

 独軍プレイヤーターン

 ステップ1:独軍降下フェイズ

 ステップ2:独軍移動フェイズ

 ステップ3:独軍戦闘フェイズ

 英軍プレイヤーターン

 ステップ4:英軍移動フェイズ

 ステップ5:英軍戦闘フェイズ

 

 スタッキング制限は3ユニットまで。相手ZOCに入ったら停止。戦闘は、戦闘比。攻撃は任意。ドイツ軍には空軍による支援があり最大3ユニット、9攻撃力増やすことができる。降下時にサイコロを振り、平地の場合1/3、荒地/タウンの場合、2/3の確率で、降下時漂流が発生し、サイコロを振った結果により方角を決め、1ヘクス漂流し降下する。

 道路移動に必要な移動力が1/3なので、道路に沿って地図のかなり大きく移動できる。

 よくできているなぁ、と感心したのが戦闘結果表だ。全力戦闘結果表(All Out Attack Combat Results Table)と限定攻撃戦闘結果表(Limited Attack Combat Results Table)の2種類の戦闘結果表があることと、Ca=反撃(Counter Attack)という戦闘結果だ。

 相手に大きな損害を与える可能性が低くなるが味方を失うリスクも低くなるのが、限定攻撃戦闘結果表(Limited Attack Combat Results Table)だ。ユニット数が少なく間違ってもAe=攻撃側全滅の結果を出したくない時ならこちらを使うのもいい。

 Caは、防御側が、全防御部隊を1ヘクス退却させるか、攻撃側の1ヘクスに対して反撃を行うか、防御側が選択する。Caは、どちらかが退却するか、他の戦闘結果が出るまで、何度も繰り返す可能性がある。うまく相手を包囲して攻撃すると、Caが出ても1-3のような不利な戦力比での戦闘を強要し、結果的に、相手ユニットを除去することができる。

 降下先や移動だけでなく、攻撃をどうするかも頭を使ってよく考える必要がある。

 

 連合軍は、英軍が12ユニット、46攻撃力。オーストラリア軍が12ユニット、33攻撃力。ニュージーランド軍が9ユニット、37攻撃力。ギリシア軍が10ユニット、30攻撃力。合計43ユニット、146攻撃力。

 

 ドイツ軍は、落下傘で降下する降下猟兵が13ユニット、86攻撃力。グライダーで空港に着陸する山岳猟兵が12ユニット、72攻撃力、合計25ユニット、158攻撃力。空軍が7ユニット、15攻撃力なので、総合計32ユニット、173攻撃力になる。

 

 降下猟兵が降下して空港を確保すると、山岳猟兵がグライダーで着陸できる。ドイツ軍としては、なるべく早く空港を確保し、山岳猟兵が着陸できるようにする必要がある。降下猟兵をどう配分しどこに降下させるかが、頭の使いどころだ。3個の地図に分配すると、少数過ぎて英軍に包囲されてしまう。1カ所だと兵力は集中できるが、英軍も兵力を集めてくるし、確保できる空港が1カ所だと山岳猟兵の増援が2カ所に比べて遅くなる。降下するとみせかけて待機することで、英軍を釘付けにすることもできる。このあたりのバランスのとりかたが実に難しく面白い。

 

 プレイアビリティーは高いし、空挺作戦らしさをうまく表現した、空挺作戦ゲームの最高傑作だと思う。さすがはジェームズ・ダニガンの作品だ。