話題になっているので読んでみた。
読む前は「今さら独ソ戦?何か新しいことあるのか?」と正直思った。
読んでみて驚いたのは、ドイツ国防軍がヒトラーに責任転嫁していたことだ。
1970年代に読んだ本は確かにそういう本が多かった。だが、それは最近間違いであることが実証されているらしい。ヒトラーの理不尽な命令でドイツ国防軍が仕方なくやったと思われていたことが、実は国防軍自らやったこともあるそうだ。
バルバロッサ作戦の杜撰な作戦計画には驚いた。
もう一点、驚いたのは、ソ連の勝利の一つに「作戦術」というソ連の軍事ドクトリンがあった、という点だ。「作戦術」というのは、p.153によると、「目的を達成すべく、戦線各方面に「作戦」あるいは「戦役」を、相互に連関するように配していく。」ことだ。p.157によるとドイツ軍が「作戦次元の勝利を積み重ねていくことで、戦争の勝利につなげるとの発想しかなかった」ことと対比している。本書には書いていないが、日本軍の場合、一回の決戦に賭けたのだが、それと比較しても「作戦術」の考え方には驚かされる。
だが一番驚いたのは、p.221の図だ。通常戦争、世界観戦争(絶滅戦争)、収奪戦争の3つの円がバランスよく並んでいたのが1941年6月から12月。それが、だんだん世界観戦争(絶滅戦争)の円が大きくなり、1943年8月以後は、世界観戦争(絶滅戦争)に収奪戦争、絶対戦争が包含されてしまったというのだ。
極端に少ないスターリングラードから帰還したドイツ軍捕虜など、そう考えないと独ソ戦については説明がつかないことが多い。
戦争だから悲惨なことがあったことは否定できないのだが、それでも、西部戦線や西側諸国の考え方は、独ソ戦に比べれば、まだマシと思える。
大陸国家の陸戦に対する考え方は、どこでも世界観戦争(絶滅戦争)、収奪戦争になっていくと思う。
いろいろと考えさせられた本である。