Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

K2P『ドイツ装甲軍団2』(モスクワ'41)ゲーム紹介

国際通信社から2022年8月10日発売された『ドイツ装甲軍団2』はワールド・ウォー・シリーズの第10作目となり、『モスクワ'41』と『レッド・タイフーン』の2 in 1ゲームだ。そのうちの『モスクワ'41』をご紹介する。

 

1941年9月30日から12月5日までのモスクワ攻防戦がテーマだ。

 

commandmagazine.jp

■ゲーム・デザイナー

ゲームデザイナーは、中黒靖氏だ。

 

■最初の発表

2008年12月の『コマンドマガジン』第84号で発表されたゲームだ。もう14年前なのかぁ・・・。

■コマンドマガジン第84号『モスクワ'41』

 

■ゲーム・スケール

ゲーム・スケールは、次の通りだ。

●1ユニットがドイツ軍が師団、ソ連軍が軍団レベル

●1ターンは第1ターンが1日、第2ターン以後は7日~10日だ。

●1ヘクスの対辺距離は・・・あれ?書いてないですね。モスクワからツーラ(Tula)約170kmが14ヘクス、モスクワからクリン(Klin)約101kmが6ヘクス、モスクワからオリョール(Orel)約364kmが24ヘクスなので、1ヘクス12から16kmのようだ

 

■地図盤

地図盤はA1(594×841mm)1枚。特殊コート紙が採用されている。

戦闘結果表やターン記録トラックなどが印刷された補助シートが別途用意されている。

 

■ルール・ブック

ルール・ブックは7ページ(表紙除く)

■ユニット数

ユニット数は236個だ。

汎用マーカーとして、A)戦闘比マーカー(上の写真の一番左)、B)戦闘の順序マーカー(上の写真の左から二番目と三番目)、C)MOVEマーカー(上の写真の一番右と右から二番目)の三種類が用意されている。

 

A)戦闘比マーカーは、『ドイツ戦車軍団』シリーズや『ドイツ装甲軍団』シリーズでおなじみだ。

B)戦闘の順序マーカーは、数字の下に「ORDER」と書かれているシンプルなマーカーだ。どの順番で戦闘を実施するかを明らかにしたものだ。作戦級ゲームでは、どの組み合わせの戦闘をするか、どの順番でどんな戦闘比で戦闘するか、よく忘れるので、とてもありがたい。使ってみるとこれはとても便利だ。これまでありそうでなかったのが不思議な気がする。

C)MOVEマーカーはアルファベットの下に「MOVE」と書かれている。アルファベット1文字が2枚組になっている。移動前に1枚を配置し、移動後どこまで到達できるかを数えるのにもう1枚を使える。作戦研究に便利だ。

 

■勝利条件

勝利条件はドイツ軍が3ヘクスあるモスクワを1ヘクスでも確保するとサドンデス勝利。

モスクワを確保できないと勝利得点対象の10個の都市の確保、地図盤北東端からドイツ軍機械化ユニットが突破した数、ドイツ軍機械化ユニットの損害、ソ連軍反撃命令未達成部隊数による両軍勝利得点を比較して点数が多い方が勝利だ。

面白いのは10個の都市の勝利得点については、どの都市が何点なのかゲーム終了時まで両軍ともわからない点だ。各都市に勝利得点マーカーを裏返して置いておくのだ。

 

■シーケンス

シーケンスは、第1ターンのみ、次のとおり。

A.ドイツ軍プレイヤー・ターン

 1.第1移動フェイズ

 2.第1戦闘フェイズ

 3.第2移動フェイズ

 4.第2戦闘フェイズ

 5.回復フェイズ

B.ソ連軍プレイヤー・ターン

 1.援軍登場フェイズ

 2.移動フェイズ

 3.戦闘フェイス

 4.回復フェイズ

 

第2ターン以後は、次のとおりだ。

A.ドイツ軍プレイヤー・ターン

 1.天候決定フェイズ(第6~9ターンのみ)

 2.移動フェイズ

 3.戦闘フェイズ

 4.回復フェイズ

B.ソ連軍プレイヤー・ターン

 1.援軍登場フェイズ

 2.移動フェイズ

 3.戦闘フェイス

 4.回復フェイズ

 

ソ連軍は戦力がわからないアントライドシステムで裏返しに配置する。

ソ連軍には親衛赤軍への昇格ルールというのもある。

 

■支配地域(ZOC)

支配地域(ZOC:Zone Of Control)に入ったら停止。最初からZOCにいる場合、一旦、ZOC外に出てから再度ZOCに入る。いわゆるZOC to ZOCの移動はできない。

 

■スタック

スタックはドイツ軍は2個まで。ソ連軍は1個

移動フェイズ終了時と戦闘フェイズ終了時に判定する。

 

■移動

移動については、ドイツ軍機械化部隊のみ戦略移動がある。

道路移動は機械化部隊のみ0.5移動力だ。

また、第6ターン以後の天候決定フェイズの結果によってドイツ軍機械化部隊の移動力が増加する。冬将軍の到来によって移動力が減るのかと思ったら増えるようだ。ユニット上の移動力が冬将軍到来時(史実どおり)で、天候決定フェイズの結果が例年通りまたは暖冬だった場合、ということなのだろう。

 

■戦闘

戦闘は隣接している敵ユニットを任意に攻撃する、いわゆるメイ・アタックだ。

戦闘結果表は戦闘比で、地形によるコラムシフトがある。

戦闘比は1:3から6:1だが、仮に10:1でコラムシフトが3左の場合、10:1=>9:1=>8:1=>7:1とし、6:1を利用すると、ルールに明確に書いてあるのがわかりやすい。10:1を最大の戦闘比6:1にしてから3コラムシフトなのか、迷うことが多かっただけに、この記載はとてもわかりやすい。

戦闘結果で混乱状態になると、ソ連軍は混乱状態マーカーをユニットに載せ、ドイツ軍は裏返す。混乱状態の場合、ZOCを失い、移動や戦闘不可になる。混乱状態の時に敵ユニットの攻撃を受けると自動的に除去される。

 

戦闘後前進では、防御側ユニットがいたヘクスに進入後、そこが敵ZOCにない場合、機械化部隊のみ2ヘクス目の前進を行える。これを「突破」と呼ぶ。

 

■回復フェイズ

回復フェイズの手順は次の通り。

1. 混乱状態ユニットの連絡線判定

2. 混乱状態ユニットの回復

3. 正常状態ユニットの連絡線判定

これもルールの明確化が図られていていい。

 

■特別ルール

特別なルールとしてスターリンの反撃命令」がある。

ターン記録トラックに第2から第5ターンの「反撃?」チットを置く。ソ連軍回復フェイズ終了時に「反撃?」チットを裏返す。そこに「反撃命令」と印刷されていると、次ターンのシーケンスがソ連軍先行になる。「反撃命令」となると、ソ連軍プレイヤー・ターンが2回続くことになる。時期が後になるほど多数のユニットで攻撃しないといけなくなる。

A.ソ連軍プレイヤー・ターン

 1.援軍登場フェイズ

 2.移動フェイズ

 3.戦闘フェイズ

 4.回復フェイズ

B.ドイツ軍プレイヤー・ターン

 1.天候決定フェイズ(第6ターンのみ)

 2.移動フェイズ

 3.戦闘フェイス

 4.回復フェイズ

 

■感想

一点、残念なのは、『コマンドマガジン』第84号の歴史解説記事やリプレイ記事が入っていないことだ。本ゲームを購入した人にはIDやパスワードを教えてくれて、記事をサイトかPDFで提供してくれると嬉しい。

 

本ゲームは、非常にシンプルなシステムだが、とてもスリリングな展開になる。

ゲーム時間も240分(4時間)程度とちょうどいい。個人の感想になるが、私は3時間±1時間程度で終わるゲームがちょうど半日程度なので一番好きだ。

 

ゲーム展開は序盤は圧倒的なドイツ軍にソ連軍が押されてどんどん兵力を失い、後退し続ける。

モスクワに近づくにつれ、ソ連軍の援軍が到着してくる。そのため、ドイツ軍は、「倒しても倒してもソ連軍が涌いてくる」ような錯覚に陥る。

シンプルなゲーム・システムで200個程度のユニット数で、モスクワ攻防戦のそんな雰囲気を堪能できる好ゲームだ。