『コマンドマガジン』第166号の付録ゲームは『マレンゴの戦い』(Napoleon in Italy, 14 June 1800)だ。
このゲームの紹介は以下のリンク参照
haruichiban0707.hatenablog.com
■初期配置
初期配置は決まっており、ユニットの裏にヘクス番号が書いてある。
■オーストリア軍の作戦
フランス軍の援軍が来る第3ターン前に、勝利条件のPietrabuona(1111)、Marengo(1412)を占領したい。第3ターンまでならユニット数は25対17だ。戦力比88対50だ。
その上、フランス軍を撃破し、Marengo(1412)東の丘の上で防衛体制を作りたい。
■フランス軍の作戦
戦力比でオーストリア軍を上回るまでは防戦になるだろう。包囲されて各個撃破されないようにして援軍を待ち、少しずつでもオーストリア軍に出血を強いる。
全部の援軍が到着してもユニット数28対25。戦力比81対88でフランス軍は不利だ。
第9ターン以降のフランス軍反撃ルールが使えるまでフランス軍がどれだけ戦力を残せるかが大きな鍵になる。
地形を利用して守りながらオーストリア軍の出血を増やし第9ターン以降、反撃する。
■第1ターン(1800/06/14)
「全軍前進!!」
高らかな進軍ラッパとともに全軍が前進開始した。
しかしすぐにBormida河が障害になり、0607から0708の橋と0906から1005の橋しか東に向かえないことで渋滞が発生して進軍できない。これは誤算だ。
それでもオーストリア軍のFrim率いる歩兵とPilaが先頭に立つ騎兵がフランス軍第101歩兵師団を攻撃した。
なお、下の写真にある3-1のマーカーは国際通信社の『ドイツ戦車軍団』からの流用で本ゲームには付属しない。
フランス軍は退却した。Pilaの騎兵が前進。歩兵が前進すると、次にフランス軍が2対1の戦力比だが騎兵なら1対1だから騎兵を前進させた。
第1ターンのフランス軍は半分の移動力だ。端数は・・・あれ?書いてない。う~む。今日は切り捨てにしよう。
フランス軍はMarengo(1412)西の小川に防衛線を敷く。
1110の戦いはフランス軍が後退。Pietrabuona(1111)をオーストリア軍Pila率いる騎兵が占領した。
■第2ターン
オーストリア軍の渋滞は継続中。
だが前進した部隊が次々と戦闘に入る。
1508ではフランス軍Cham騎兵隊が退却。オーストリア軍Frim騎兵隊が前進。
1311でフランス軍第101歩兵師団が退却。オーストリア軍Nobl騎兵隊が前進。次のフランス軍の攻撃はこのままなら小川越えなので1-2の戦力比だ。マスト・アタックだと河川が防衛線にならないではないか。河川越えの場合、メイ・アタックにするのが妥当ではないだろうか。
1112ではオーストリア軍退却。フランス軍がPietrabuona(1111)奪還。
オーストリア軍が渋滞して少数部隊を逐次投入しているから戦場だけで見るとフランス軍の方が戦力が大きい。機動力もあるのでオーストリア軍を包囲して攻撃する。Orderマーカーは、国際通信社の『ドイツ装甲軍団2』からの流用で本ゲームには付属しない。このマーカーは作戦級ゲームではとても便利なマーカーだ。これまでなかったのが不思議だ。
1310では突出したオーストリア軍Nobl騎兵隊が退却不能のため潰滅した。1210ではオーストリア軍ORei騎兵隊がフランス軍第96歩兵師団を撃退した。
1010ではフランス軍第44歩兵師団が撃退された。Pietrabuona(1111)をオーストリア軍奪還。
■第3ターン
オーストリア軍の渋滞は続く。戦端を開くのが早すぎたか?しかし、もうこうなったら戦うしかない。
1408はオーストリア軍が撃退された。
ここで勝っていたら次の1309の戦いでDrになれば除去できたのだが。
1309ではフランス軍退却。
1112でフランス軍退却。
1311ではオーストリア軍ORei騎兵隊が後退。
フランス軍はここで戦闘後前進すると・・・1-3か。やめておこう。
1309ではフランス軍が撃退された。
1112ではオーストリア軍StJu騎兵隊が退却。退却の余波でPila, OReiも北に退却。
■第4ターン
オーストリア軍が続々と戦場に到着してきてあちこちで戦闘が始まった。
1707でオーストリア軍退却
1608でもオーストリア軍退却
1509でフランス軍Kell騎兵隊後退。
1311でフランス軍退却
1410でフランス軍Cham騎兵隊後退
1510でオーストリア軍退却
1012でフランス軍DuVi率いる騎兵隊後退。オーストリア軍Latt歩兵師団が戦闘後前進した。
1112でオーストリア軍StJu退却。フランス軍第43歩兵師団がPietrabuona(1111)を奪還。
オーストリア軍Lattの歩兵師団が危機に陥った。逆に見ると、Pietrabuona(1111)に前進したフランス軍第43歩兵師団が包囲される危地に進んだともいえる。
1012でフランス軍退却
オーストリア軍は前進しない。Pietrabuona(1111)の戦闘でフランス軍の後退を許さないようにするためだ。
1606でフランス軍退却
1508でオーストリア軍退却
1411でフランス軍退却
Pietrabuona(1111)でフランス軍第43歩兵師団退却不能のため潰滅した。
オーストリア軍StJu騎兵隊がPietrabuona(1111)奪還!!
1410でフランス軍退却
■第5ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
1014でフランス軍退却
1212でオーストリア軍退却
1312は川越だから1-2。フランス軍退却
1605でオーストリア軍退却
1609でフランス軍退却
フランス軍プレイヤーターン
フランス軍の狙いはStortiguona(1013)のLattの騎兵隊だ。包囲に成功した。50%の確率で撃破できる。
1609でオーストリア軍Pila退却
1211で川越だが砲兵を集中させたオーストリア軍がフランス軍StJu騎兵隊を撃退した。
Stortiguona(1013)でLattの騎兵隊が活躍し、フランス軍を撃退した。
両軍の損失
オーストリア軍24ユニット84戦力
対するフランス軍18ユニット50戦力
前線には13ユニット34戦力
■第6ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
オーストリア軍の攻撃が激しくなった。
1609,1512,1707でフランス軍退却
1803でオーストリア軍退却
1605では2/3の確率でフランス軍潰滅だがオーストリア軍が撃退された。
オーストリア軍LCol砲兵隊に支援されたKnes歩兵師団がフランス軍砲兵隊を攻撃。砲撃で圧倒されたフランス軍が後退した。
これで1212で2/3の確率でフランス軍第28歩兵師団が潰滅する。フランス軍が激しい抵抗をしてオーストリア軍が後退した。
1610でオーストリア軍退却
0915でフランス軍退却
1115でオーストリア軍退却
オーストリア軍としてはフランス軍潰滅を狙った2ヶ所で潰滅させることができなかったのはショックだ。
フランス軍プレイヤーターン
1313でオーストリア軍Knes歩兵師団が退却不能のため潰滅。
1603,1609でオーストリア軍退却
1707,0915,1512でフランス軍退却
オーストリア軍23ユニット79戦力
対するフランス軍21ユニット61戦力
前線には13ユニット34戦力
■第7ターン
1115でEx!!フランス軍DuViの騎兵隊とオーストリア軍Retzの歩兵師団が相撃ち
1212でフランス軍第28歩兵師団潰滅。
1016でフランス軍Gd騎兵隊退却
1613でフランス軍退却。オーストリア軍Wele歩兵師団が突出し孤立している。
1908でフランス軍退却
1603でフランス軍退却
フランス軍プレイヤーターン
1117でフランス軍Gd騎兵隊潰滅。
1212でフランス軍退却
1709,1908,1603でオーストリア軍退却
1612では50%の確率でオーストリア軍Wele歩兵師団が潰滅する。サイコロの目は2!!オーストリア軍Wele歩兵師団潰滅!!
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍21ユニット68戦力
対するフランス軍18ユニット55戦力
前線には11ユニット31戦力
オーストリア軍は大きな戦力の部隊を失ったのが痛いがまだ優勢と言えるだろう。
■第8ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
1907でフランス軍退却
1710でフランス軍Kell騎兵隊潰滅
Marengo(1412)でフランス軍退却。オーストリア軍がMarengo(1412)占領。
1413でフランス軍退却。先に1413を攻撃していてこの結果だったらMarengo(1412)にいたフランス軍砲兵隊は退却不能で潰滅できた。
1711,1611でオーストリア軍退却
フランス軍プレイヤーターン
1907でフランス軍退却
1809でオーストリア軍退却
Marengo(1412)で1-3と思ったら町の防御力は2倍だったから1-10だ。フランス軍Viet砲兵隊潰滅。Pietrabuona(1111)攻防戦が大きく違った展開になったかもしれない。
1413でフランス軍退却
潰滅した両軍ユニット
既にオーストリア軍はフランス軍30戦力以上潰滅させたのであとはMarengo(1412)とPietrabuona(1111)を守りきれば勝利だ。
オーストリア軍21ユニット68戦力
対するフランス軍18ユニット48戦力
前線には11ユニット28戦力
■第9ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
1614,1516でフランス軍退却
1515はフランス軍が包囲された。5/6の確率でフランス軍CnGd歩兵師団が潰滅する。サイコロの目は6!!オーストリア軍を撃退した。
1905でフランス軍退却
1909でフランス軍退却
1809で50%の確率でフランス軍潰滅する。サイコロの目は4。オーストリア軍退却。
1611でオーストリア軍退却
1711でフランス軍退却
フランス軍プレイヤーターン
フランス軍はまだ反撃宣言しない。
1905,1909でフランス軍退却
1516でオーストリア軍Latt歩兵師団が退却不能のため潰滅。7戦力の部隊だけにオーストリア軍にとっては痛い損害だ。
1711でEx。オーストリア軍sche騎兵隊とフランス軍AvGd歩兵隊が相撃ち
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍19ユニット60戦力
対するフランス軍15ユニット40戦力
前線には11ユニット25戦力
■第10ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
オーストリア軍の攻撃はまだ続く。
2106でオーストリア軍退却
2086でフランス軍DuMe騎兵隊潰滅
1711でフランス軍退却
1515でフランス軍退却
フランス軍プレイヤーターン
フランス軍はまだ反撃宣言しない。
1515でオーストリア軍退却
2107でオーストリア軍退却。これで包囲されていたMura騎兵隊の包囲が解けた。
2106にいるフランス軍Mura騎兵隊が退却。
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍19ユニット60戦力
対するフランス軍13ユニット37戦力
前線には11ユニット31戦力
■第11ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
2107,1813でフランス軍退却
1514でEx。フランス軍第101歩兵師団とオーストリア軍Ulm歩兵師団が相撃ち
1811でEx。フランス軍第72歩兵師団とオーストリア軍Frim歩兵師団が相撃ち。
フランス軍プレイヤーターン
フランス軍は反撃宣言。
オーストリア軍が防衛態勢を整える前にフランス軍の反撃が始まった。
2107でオーストリア軍Pion歩兵師団潰滅
2007でフランス軍退却
1314でオーストリア軍Lama歩兵師団潰滅
1813でフランス軍退却
1714でオーストリア軍退却
1413でフランス軍退却
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍15ユニット49戦力
対するフランス軍11ユニット31戦力
反撃宣言しているので11ユニット62戦力
■第12ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
1714でフランス軍退却
2010,2107でオーストリア軍退却
フランス軍プレイヤーターン
1908でオーストリア軍Bell歩兵師団潰滅
1714でオーストリア軍退却。フランス軍前進。これで1813のオーストリア軍StJu歩兵師団が退却不能になった。
1813でフランス軍退却
1413でオーストリア軍退却
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍14ユニット46戦力
対するフランス軍11ユニット31戦力
反撃宣言しているので11ユニット62戦力
■第13ターン
オーストリア軍プレイヤーターン
1714でオーストリア軍退却
1413でオーストリア軍退却。Marengo(1412)をフランス軍占領。
フランス軍プレイヤーターン
1913でオーストリア軍ORei騎兵隊潰滅
1612でフランス軍退却
1610から1611,1711を攻撃。フランス軍退却
1313でフランス軍退却
1411でオーストリア軍退却
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍12ユニット42戦力
対するフランス軍9ユニット26戦力
■第14ターン(最終ターン)
オーストリア軍プレイヤーターン
オーストリア軍としては、なんとかMarengo(1412)を奪還したい。
1913でオーストリア軍退却
1614,1514で上の写真でマーカーは1-2だが、1-1だ。オーストリア軍退却。フランス軍前進。
1512でフランス軍Cham騎兵隊退却不能のため潰滅。オーストリア軍前進
1513でフランス軍退却
Marengo(1412)でどちらがこの町を占領するかは50%の確率だ。
サイコロの目は3!フランス軍第9歩兵師団退却不能のため潰滅!!
オーストリア軍がMarengo(1412)を奪還!!
フランス軍プレイヤーターン
両軍、勝利条件の(1)の敵ユニット除去を満たしている。
あとはフランス軍はMarengo(1412)から4ヘクス以内に(2)10戦力あること。この条件もフランス軍は満たしているので引き分け以上確定だ。
オーストリア軍はMarengo(1412)とPietrabuona(1111)に自軍ユニットがいることだ。フランス軍がMarengo(1412)を奪取するとオーストリア軍はこの条件を満たせなくなるからフランス軍の勝利になる。
フランス軍はMarengo(1412)奪取を狙って最後の攻撃だ。
1713でフランス軍退却
1514でフランス軍退却
1313でオーストリア軍退却、フランス軍前進Marengo(1412)で1-2。フランス軍が勝ってMarengo(1412)を占領する確率は1/3だ。
サイコロの目は4!!
フランス軍退却!!
引き分け~!!
潰滅した両軍ユニット
オーストリア軍12ユニット42戦力
対するフランス軍7ユニット19戦力
■感想
このゲームはゲーム展開が流動的で面白い!!
両軍とも攻防を楽しめ、互角な展開で、一方的にならない。
両軍の動きもダイナミックで面白い。
このゲームが何度も再版される理由がよくわかった。
確かにゲーム展開としては両軍ともシビれて、それが面白い。
ルールが簡単だから作戦に集中できる。
ゲーム開始時は、序盤のオーストリア軍は、圧勝できるだろう、と思っていたが、渋滞が発生し、部隊を思うように展開できないことには焦った。
オーストリア軍は北から進んだ部隊が北に行きすぎてMarengo(1412)から離れすぎて、Marengo(1412)攻略部隊とうまく連携できなかったのが勝機を逸した原因だったと思う。
かなりフランス軍部隊を除去したから安心していたが、「反撃宣言」の効果が予想以上に大きかった。もう1ターン早く、Marengo(1412)防衛の戦線を構築しておくべきだった。
フランス軍はこんなに部隊を失うとは思わなかった。部隊を失っても「反撃宣言」でここまで何とかなるとは思わなかった。
前半のフランス軍はもう少し部隊を温存するためにどうしたらいいか研究したい。
さて、ゲームとしては終了したが、この後、歴史はどうなるだろう?
オーストリア軍はフランス軍を全滅寸前まで追い込んだ。それをもって「我が軍はフランス軍部隊を多数倒したので勝利だ。」と宣伝してオーストリアに凱旋するだろうか?
それともこのままフランス本土へ攻め込むだろうか?フランス本土へ攻め込む余裕はなさそうだし、このままイタリアに駐留する力も無いように思う。
「無敵ナポレオンの神話が崩れた」と言われると、この時期のナポレオンは政治的にこれだけの損害に耐えられるだろうか?
などと考えるといろいろな展開が考えられて面白い。
『コマンドマガジン』第166号の中で、高梨俊一氏が「NAWはよく考えられたゲームシステムであるが、ナポレオン戦争との相性があまりよくないように思える。(中略)NAWのプレイヤーは包囲しか考えない。(中略)互いに敵をZOCで囲むことを目的とする戦闘にはナポレオン戦争らしさが感じられない。」と書いているが、同感だ。
例えば、本ゲームでは砲兵は他の兵科と違った特徴があるが、騎兵にはない。ナポレオン時代の騎兵には、第二次世界大戦とは違って、その突撃に戦術としての意味があったと思う。騎兵による突撃は、歩兵にとっては恐怖の的だったろう。騎兵突撃を再現したルールがあっていいかもしれない。そうやってゲームシステムは複雑になっていくのだが。
高梨氏が書いているように、本ゲームでは、ヒストリカルな部分の表現は足りないかもしれないが、それを補って余りあるこのゲームの魅力は、ダイナミックな攻防が楽しめる点だ。
同じルールで、ユニットのデザインとマップ上の地名を変えただけで、ナポレオン戦争ではない別の戦いを表現できると思う。
高梨氏によると、戦闘結果表の主要部分がユニットの後退である「流動型の戦闘システム」、マスト・アタック、戦闘結果でないと敵ZOCから脱出できない「リジットZOC」が、本ゲームをはじめとするNapoleon at Waterloo(NAW)システムの特徴だそうだ。
このシステムは、射程距離が短く、殺傷能力が低く、指揮官からの命令を伝えるコミュニケーション手段が未発達な、野戦電話も無線もない20世紀より前の戦争を表現するには向いていると思う。手柄を立てたい前線指揮官が、上級司令官の意図に反して戦端を開き進むに進めず引くに引けない状況を表現していると思う。
指揮官はまだ戦端を開くなと思っても、前線で小競り合いが始まってしまい、離れようとしても後から敵がついてきて離脱できない、などということは、20世紀の戦争より前は多々あっただろう。(20世紀の戦場でもあっただろうが)
そういう戦場を表現するには最適なシステムだと思う。ナポレオン戦争、日本の戦国時代や幕末の戊辰戦争の戦いにも向いているシステムだと思う。
本ゲームは、ゲームとしては、プレイアビリティが高く、展開が面白く、研究しがいがある傑作ゲームだと思う。