Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

『コマンドマガジン』166号を読んでみた


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国際通信社の『コマンドマガジン』第166号を読んでみた。

付録ゲームはSPI社『マレンゴの戦い』(Marengo : Napoleon in Italy, 14 June 1800)だ。デザイナーは、あの巨匠ジェイムズ・ダニガン氏。

特集は『マスト・アタックの世界』

今回の特集の切り口には驚いた。青文字は私の感想だ。

目次は次の通りf:id:Haruichiban0707:20220901171820j:image

 

p.4 ダニガン アット ワーテルロー 高梨俊一

付録ゲームの『マレンゴの戦い』(Marengo:Napoleon in Italy 14 June 1800)は、ナポレオンアットワーテルローシステム(NAWシステム)の一つだ。

流動型の戦闘システム、マストアタック、リジッドZOCの組み合わせだ。

流動型の戦闘システムとは戦闘結果表の大半が後退であり全滅が少ないものだ。

リジッドZOCとは敵ZOCにいるユニットは戦闘結果でないと敵ZOCから脱出できないことだ。

『Napoleon At War』は、『マレンゴの戦い』(Marengo:Napoleon in Italy 14 June 1800)も含むクアドリ・ゲームだ。他の3作品は、『イエナ・アウエルシュタット』(Jena-Auerstadt:TheBattle for Prussia 14 October 1806)、『ワグラム』(Wagram:The Peace of Vienna, 5-6 July 1809)、『バトルオブネイションズ』(The Battle of Nations:The Encriclement at Leipzig, 16-19 October 1813)だ。

SPIのナポレオニック・ゲームは20個ほどあるが、その2/3程度がNAWシステムだそうだ。

高梨氏はNAWはナポレオニック・ゲームに合わない、と書いている。NAWは、包囲しないと敵ユニットを撃滅できないが、ナポレオン時代の戦争は師団レベルで包囲することがあまりなかったからだという。

 

指揮官が意図しないところで戦いが発生し、退くに退けなくなり援軍を送り込むような状況、機関銃が発明される前の殺傷力が少ない火器のためなかなか相手を殺傷できず押したり引いたりの戦場に、マスト・アタックやリジットZOCは、合っていると思う。つまり、ナポレオン時代の戦場に合っている、と私は思う。流動型の戦闘システムもいいとは思うが、確かに、もう少し撃破する結果があってもいいと思う。また騎兵の突撃ルールがナポレオンの時代には必須だと思う。

 

それにしても高梨氏の記事はいつも驚く。NAWとその後のナポレオニック・ゲームの歴史について、詳細に説明していて驚く。

高梨氏は全部持っていてプレイしたことがあるのだろうか?

 

p.10 アドテクノス社が描いたナポレオニック 石川豊

アドテクノス社のナポレオニック・ゲームは4作品あったそうだ。

その解説だ。ほとんど復刻再版されていないそうだ。

 

p.14 やっぱ、ロシアンキャンペーン 山内克介

AH『独ソ戦』(Russian Campaign)は傑作ゲームだが、第2弾が出ており、最近、第5版がクラウド・ファンディングされているらしい。

 

p.16 強制戦闘が表すもの 堀場亙

マスト・アタックにもいくつか種類があるらしい。また、何を表しているかはゲームによって異なる。本論では、少し変わったシステムを紹介している。

 

p.18 77年前の"台湾侵攻" 倉元栄一

WaW83『Operation Causeway』は太平洋戦争で結局行われなかった台湾侵攻作戦をテーマにしたゲームだが、これをとりあげて、マストアタックの意味を説明している。

連合軍にとっては、戦って土地を奪わなければいけない。退路もなく上陸してくる敵を何としても海に追い落とすか撃破しなければならない日本軍。

両軍の立場は異なるがマストアタックでなければ表現できない戦いになることはよくわかる。

 

p.20 赤と黒の最終ラウンド 宮永忠将

SPI/HJ『モスクワ侵攻作戦』(Operation Typhoon)のゲーム・システムとデザイン時の問題について解説している。このゲームが対象としている時期は、ドイツ軍はヘロヘロになっており、ソ連軍の反撃が始まる前の中途半端なものらしい。(K2P『ドイツ装甲軍団2』が『モスクワ'41』と『レッド・タイフーン』の2in1にしている)

そうなった理由は、当時フリー・デザイナーだった本ゲームのデザイナーは立場が弱く、SPI社を去った正社員に押し切られたそうだ。

なんだかやるせない話だ。

 

p.28 マレンゴ余話二題 大木毅

マレンゴに関する歴史余話。ナポレオンが騎乗したマレンゴという名の芦毛の馬の話と「鶏のマレンゴ風」という料理の話。芦毛の馬、マレンゴはワーテルローで英軍に捕獲され種牡馬となり、38歳の大往生で、その骨格が今でもロンドン国立陸軍博物館(National Army Museum)に展示されているそうだ。

この頃、トマトはイタリアではまだ一般的な食材ではなかったから、今伝わる「鶏のマレンゴ風」と当時の料理は異なるそうだ。

 

p.36 官渡戦役100本組手 岩永秀明

「昔は○○というゲームを沢山プレイしたものだ」と自慢する人がいるが、本当にそんなにプレイしたのか?という疑問から実際に100回一つのゲームをプレイした結果をまとめたものだ。

「昔は・・・だった」ということは多いが、過去の経験は美しく見えるものだ。話をする度に話を盛ったり、実際にはそうでなかったことが紛れ込んだりするものだ。

自省しないといけないと思った。

 

p.40 ボードウォーゲームにおける"ユーザーインタフェース"の考察 長浜和也

ユニットやマップのデザイン上の工夫について考察している。

昔はユニット上に情報が書かれていればよかった。表がどこに書いてあっても気にならなかった。

だが、老眼が進んだ今、ユニットやその上の数字は大きい方がありがたい。短期記憶容量が少なくなったので、各種の表はマップ上のわかりやすいところにないと、「どこにいったっけ?」とガサガサあちこち探すことになる。ボードウォーゲームでもユーザーインタフェースは大事だと思う今日この頃だ。

 

p.48 第一次世界大戦航空機列伝 Age of Dogfight 宮永忠将

今回はRumpler 6Bが紹介されている。

それよりも、2022/10/29-30に開催されるゲームマーケット2022秋から『Age of Dogfight』が発売される、というビッグ・ニュースがp.78に書いてあった!!これが楽しみだ!!

 

p.52 シミュレーションゲーム批判序説 孤独な巨人、ジム・ダニガンのシミュレーションとゲーム 高梨俊一

ダニガンがデザインした近未来戦ゲームの紹介記事。ダニガンは、シミュレーションすることを第一に考え、ゲームはそのための手段に過ぎない。他のデザイナーは史実に忠実であることを重要と考える人がいる。しかし、ダニガンはプレイヤーが史実を知っている以上、史実通りにならないのだから、史実は重要ではない、という考えだそうだ。ダニガンは後知恵で見ると何でこんなことをしたのかと思うような要素を「バカ要素」(idiocy factor)と呼ぶ。そしてその例として、AH『激闘マジノ線』(The Game of France, 1940:German Blitzkrieg in the West)をあげている。

なるほどなぁ~。このゲームが好きな私にはダニガンの意図がよくわかった。

 

p.60 F-16 Fighting FALCON 追加シナリオ 小林達哉

フォークランド洋上迎撃戦で、シーハリアー2機とダガー(ミラージュ)2機、A-4 2機の戦いだ。プレイするのが楽しみだ

 

p.62 地中海戦史 第109回 第10潜水戦隊の再起 八木田和男

地中海の戦いはほとんど知らなかったが、この連載を読み、ぜひ、関連するゲームをプレイしてみたくなった。意外とイタリア軍頑張ってるのでイタリア軍でもプレイしてみたいものだ。

 

p.66 ウォーゲーム・メカニクス 第14回ゲームの解析と考察(1) 堀場亙

カード・ドリブン・システムにおけるデッキ構成についての考察。

カード・ドリブン・システムをほとんど理解していない私には難しすぎる。

 

p.70 あなたの知らない戦争マンガの世界 第28回MASTERキートン なまえしゅういち

考古学者で保険会社の調査員で元SASの教官である平賀=キートン・太一。

この作品は大好きだったのでとりあげてくれて嬉しい。

 

p.72 野獣げぇまぁ拡大版[第69回]ウォーゲームにおける「選択」 徳岡正肇

「ゲームを語る上で物語体験は非常に重用なテーマだ」とあるが、確かにそうだと思う。なぜ人間が物語性を重要と考えるのか、不思議に思っていたが、徳岡氏の論はなかなか面白い。

 

第166号の特集は独特のテーマ選定で驚いた。どの記事も面白かった。

新作ゲームでは、Forsage Games『Age of Dogfights:WW1』が楽しみだ。