Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

【参考文献】『ベルリン攻防戦』 歴史群像第二次欧州戦史シリーズ10 学習研究社 (1999/09/01)




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いよいよ、東西から挟撃されてドイツ敗戦に至るまでをまとめたムックだ。

 

春の目覚め作戦レマゲン鉄橋、ルール包囲戦、ウィーン攻防戦、トルガウの出会い、ベルリン市街戦について、写真や図解やイラストでわかりやすく解説している。

 

米ソだけでなく、米英もそれぞれの思惑がぶつかり合っており、冷戦構造の複雑さを思い知らされる。

イギリスの主張通り、エルベ川で止まらずに西側連合軍がベルリンを目指していたら、戦後世界はどうなっただろうか?

 

p.54 市内に迫る赤軍包囲下のベルリン 文/土門周平

ソ連軍対ドイツ軍

人員250万人対100万人

戦車6250両対1500両(自走砲含む)

火砲41600門対10400門

航空機7500機対3300機

 

ドイツはまさに本土決戦に及んだのだが、集められる戦力が圧倒的にソ連軍有利だった。これではどうしようもない。

日本が本土決戦を選ばなかったのは幸いだったとあらためて思う。

 

p.66 昭和20年戦争終結への道のり 文/亀井宏

戦争を終結させるのがいかに難しいか、あらためて感じる。

それにしてもソ連に仲介を頼もうとする外交音痴ぶりには驚くばかりだ。

さっさと連合軍に降伏したイタリアや、独ソの間でうまく立ち回ったフィンランドのようなしたたかさが日本外交にもほしいものだ。

 

p.120 分子から原子へ 見えない兵器の時代 文/野木恵一

第一次世界大戦の新兵器として、戦車や航空機などがあった。では第二次世界大戦に登場した新兵器のジャンルは?という問いかけに始まる。

航空母艦?これは第一次世界大戦末期に出現している。

戦車や航空機も第一次世界大戦に登場した。

戦艦から空母へ、騎兵や歩兵から戦車へ、という、兵器としての重心の移動は確かにあった。しかし、これらは第二次世界大戦で登場した新しいジャンルではない。

そこで筆者があげているのは、レーダーと原子爆弾だ。コンピュータを含めるかは微妙なところだ。一般にENIACが現在のコンピュータの元祖とされているが、これは1950年なので第二次世界大戦後だからだ。しかし、アラン・チューリングのコロッサスという暗号解読マシーンは第二次世界大戦で使われた。

レーダーや原子爆弾やコンピュータに共通するのは、目に見えない「兵器」だ。「兵器」に対して、目に見えるものは、「武器」(アームズ)と呼ぶ。

オペレーションズ・リサーチ(OR)や指揮統制通信システム(C3I)など、目に見えない「兵器」が大きな役割を果たす原型が現れたのが第二次世界大戦だった。

という結論はうまくまとめていると思う。

 

p.126 ソ連の「不死鳥将軍」ジューコフ伝 文/前川清

赤軍大粛清を生き伸び、ノモンハン事件の勝利。モスクワやレニングラードの防衛、クルスク会戦からベルリン占領までの独ソ戦の勝利。その後1946年11月、オデッサ軍管区司令官に左遷された。その理由は省略している。1953年3月5日スターリンの死後、甦る。

1957年10月、ジューコフは、アメリカとの核・ミサイル競争がソ連経済を悪化させるとして、フルシチョフと対立し失脚する。

1964年、フルシチョフ失脚後、また復活する。

第二次世界大戦後のジューコフについては全然知らなかったが、すごい人生を歩んだ人だと驚いた。

 

p.136 成功した指揮官像 欧州大戦の名将たち 文/土門周平

第二次世界大戦の名将として、アイゼンハワー、パットン、マンシュタイングデーリアンを選んでいる。

「歴史は二度と繰り返さない」から、「成功した指揮官に共通して備わり、失敗した指揮官に共通して欠けている、という性格、特性を明確に実証することはできない」し、「判断基準に定説がない」ものだ。その前提でこの4人を選び、簡単な評伝をまとめている。

 

p.144 対ソ戦略への転換と米国防組織改編 文/谷光太郎

第二次世界大戦に勝利した米英の間にこんなに大きな戦略の違いがあったとは・・・。

アメリカはさっさとドイツ本土に近い北フランスに上陸しベルリンを目指すべきと考えていた。イギリスのチャーチルは、地中海の政治的影響力を考え、イタリア上陸、ユーゴ、ハンガリーチェコスロバキア方面の作戦実施を考えていた。

 

また、大日本帝国に限らず、どこの国も陸海軍は仲が悪いものだ。アメリカの初代国防長官フォレスタルの名は、アメリカ軍の空母で知っていたが、彼が、陸海軍の対立に悩み、投身自殺したとは驚いた。

 

 

これで、歴史群像第二次欧州戦史シリーズは、いったん終了する。

この後は第二次世界大戦について、いろいろなテーマを採り上げて特集を組む形で続いてゆく。それらも入手したら読んでいきたい。