国際通信社の『コマンドマガジン』第178号を読んでみた。
付録ゲームは『碧蹄館の戦い』(The Battle of Byeokjegwan)だ。
文禄の役での戦いだ。文禄二年(1593)一月二十六日の戦いだ。
デザイナーは吉川龍虎氏だ。
マップはA1サイズでユニット数は209個と手頃なサイズだ。
ルールブックは8ページ。
1ターンは1時間から3時間。1ヘクスは約100m
1ユニットは約500人
大砲隊は数十人
マップのヘクスは写真のようにヘクスの辺について記載しないデザインだ。
私個人はこのデザインはヘクスを意識しないで地図を意識できるので大好きだ。
豊臣秀吉の朝鮮出兵は知識としては知っていても個々の戦闘がどうだったかはほとんど知らないので本誌を読んでプレイするのが楽しみだ。
目次は次の通り
- p.30 チャーチルの「ドイツ」兵 大木毅
- p.46 Axis & Allies Guadalcanal 文/諸岡幸治
- p.62 ウォーゲーム・メカニクス 第26回 戦車戦闘 文/堀場亙
- p.68 野獣げぇまぁ拡大版[第81回] シミュレーションゲーム? 徳岡正肇
p.30 チャーチルの「ドイツ」兵 大木毅
英帝国内には、ヒトラーから逃れてきた、かつてはドイツ人であったユダヤ人が多数いた。1942年3月に、ハーバート・セシル・バック大尉の提案で、SIG(Special Interrogation Group)、「特別尋問グループ」が組織され、北アフリカのドイツ軍戦線の背後に潜入し破壊工作を行うことが目的の部隊だった。
1942年6月3日の出撃直前、脱走者が出て、その男の通報のために、SAS(英特殊空挺部隊)の一体が全滅した。1942年9月13日の二度目の出撃も失敗に終わり、SIGは解隊された。
「X」隊(トループ)は1942年7月、第10コマンド隷下にユダヤ人部隊として新編された。1942年8月、ディエップ上陸作戦で攻撃に参加した。
ドイツ系ユダヤ人が祖国を追われ、ドイツの敵国イギリスが彼等をドイツ人として活用したことは、あまり知られていないことだが、歴史の一端として、記憶しておくべきことだと思った。
p.46 Axis & Allies Guadalcanal 文/諸岡幸治
見出しに「新たなパブリッシャーの手でAvalon Hillブランドが再起動」とあったので、最初に読んだ。
Avalon Hill社の『戦闘指揮官』(Squad Leader)や、『第三帝国』(Third Reich)や、『太平洋の覇者』(Victory In The Pacific)などが復活するのか、と思ったからだ。
すると、Axis & Allies Guadalcanalというゲームが復活することらしい。
ユニットがプラスチック製のミニチュアでソロモン諸島を巡る戦役をテーマにしているらしい。
2007年に発売され、長らく品切れになっていた作品をRenegade Games Studios社から再販売されるそうだ。同社は『戦闘指揮官』(Squad Leader)のライセンス交渉をしているそうで、それが気になる。
p.62 ウォーゲーム・メカニクス 第26回 戦車戦闘 文/堀場亙
K2P/IED『ぱんつぁー・ふぉー』、K2P/IED『TANKS+』、AG『Conflict of Heroes』の三作における戦車戦闘の共通点と違いをわかりやすく記述している。
私はこの三作はプレイしたことがないので新鮮だった。
戦車戦を扱った戦術級ゲームだと、命中判定と撃破判定の二段階になっているのが多いが細かい点で独自性がある。面白いのは、IV号戦車H型とT-34/85の対決を例にとると、どの作品も似たような確率になることだった。
p.68 野獣げぇまぁ拡大版[第81回] シミュレーションゲーム? 徳岡正肇
「ウォーゲーム」のことを「シミュレーションゲーム」と呼ぶのが一般的だ。
しかし、私は、自分がウォーゲームを再開してから、疑問に思うようになった。
疑問に思うようになったきっかけは、かつて大好きだったAH『サブマリン』(Submarine)で、下のリンク先のような点を発見したからだった。
haruichiban0707.hatenablog.com
haruichiban0707.hatenablog.com
ウォーゲームは、現実をシミュレートしていない、あるいは、現実をシミュレートするにはまだまだかなりの限界がある、というのが私の思いだ。だから「シミュレーションゲーム」というのはおこがましいと思っていた。
徳岡正肇氏は、今回の記事中で、以下のように書いている。
「ウォーゲームとはゲームデザイナーによる歴史の解釈である」
『「ウォーゲームは歴史小説側に属するもの」であって、「歴史研究のためのツール(ないし歴史研究そのもの)」という側面は、ウォーゲームの必要条件ではない。』
「ウォーゲームは歴史研究家歴史小説かで言えば歴史小説側により近い、エンターテイメントなのだ。」
異論はあると思うが、私はこの意見に賛成だ。
ちなみに、「シミュレーション」は、「計算や模擬装などにより、起こり得る状況を様々に想定して行う実験」(国立国語研究所)なのだそうだ。そうだとするとボード上でどれだけ精密さを求めても限界がある。
海外では、「Simulation Game]とは、車の運転や飛行機の操縦を実験・再現するものを指すそうだ。こちらの意味ならシミュレーションという言葉を使うことに納得だ。
徳岡正肇氏は「戦争における人間(あるいは人間集団)の行動をシミュレートするのがアナログのウォーゲームの目指すべき方向性だと言う。
たった2ページの内容だが、この号で一番、心に残った記事だった。
2024年8月20日発売予定なのに一週間も前にポストに入っていたのは嬉しかった。
まだ全部読んでいないが、読んだらまた感想を書いてみたい。