Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

【ムック紹介】『ドイツ空軍全史』 歴史群像第二次欧州戦史シリーズ25 学習研究社 (2007/06/25)


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写真やイラストやCGやわかりやすい解説記事で、ドイツ空軍の歴史がよくわかるお勧めのムックだ。

 

p.12 航空部隊の編制 文/佐藤俊之

飛行小隊=>飛行中隊=>飛行隊=>航空団=>航空軍団/航空師団=>航空艦隊

航空団までが戦術単位で、航空軍団/航空師団が作戦単位で、航空艦隊が戦略単位だ。

 

p.14 巨大な夜戦部隊 文/田村尚也

第二次世界大戦後期のウォーゲームに、ドイツ軍の空軍地上部隊がよく登場する。

私は飛行場を守る守備隊か、飛行場を建設する部隊が武装しているのかと思っていたが、それは間違いだった。もともとは空挺部隊が空軍にあったのだ。その後、ゲーリングの欲望によって、拡充されていったようだ。

 

p.32 ドイツ航空部隊の創設と第一次大戦 文/山崎雅弘

第一次世界大戦のドイツ航空部隊の活躍と終焉をまとめている。

タイトル横には文/山崎雅弘とあるが、章末にはせととしはるとある。どちらが書いたのだろう?

 

p.38 ドイツ空軍の誕生とスペイン内戦 文/山崎雅弘

戦間期のドイツ空軍創設と再軍備宣言後の動向だ。

この頃はまだドイツ軍は弱小だった。

 

p.42 電撃戦とバトル・オブ・ブリテン 文/山崎雅弘

p.48 酷寒のロシア、灼熱の北アフリカ 文/山崎雅弘

p.54 本土防空線とドイツ空軍の壊滅 文/山崎雅弘

p.62 ドイツ空軍の復活 文/山崎雅弘

第二次世界大戦のドイツ空軍の戦いと壊滅、そして戦後の復活を概説している。

とてもわかりやすい。

 

p.64 第一次大戦期 ドイツ戦闘機の発達 文/松代守弘 

p.66-p.67にある年別のドイツと連合軍の登場戦闘機名がわかりやすい。

1914 独 タウベ(ルプラー・タウベ)/アルバトロスBI

   連 RAF B.E.2/モラン・ソルニエL

1915 独 フォッカーEI/EIII/ファルツEI

   連 モラン・ソルニエN/ヴィッカースFB5/ニューポール11/RAF F.E.2b

1916 独 アルバトロスDI/DII/DIIa/DIII

   連 ファルマンF40P/ヴィッカースRAF F.E.9/ニューポール17

1917 独 アルバトロスDV/DVa/フォッカーDrI/ロランドDIV

   連 ソッピース・キャメル/トライプレーン/ニューポール24/ブリストルF2

1918 独 フォッカーDVII/DVIII/ジーメンス・シュッケルトDIII/DIV/ユンカースDI

   連 スパッドXII/ソッピース・スナイプ/RAF S.E.5a/ソッピース・サラマンダー/ニューポール28

第一次世界大戦では次々と新型機が開発され、どの機とどの機が同年代で戦ったのか今一つわかっていなかったが、これで整理できた。

 

また、ドイツ、イギリス、フランスの軍用機保有数や生産数や損失数の表がまとまっていたが、これを見ると総力戦の凄さがわかる気がする。

 

  保有数   1914-1918の生産数 損失数
1914 1918
ドイツ 232 2,390 47,637 27,637
イギリス 113 3,300 58,144 35,973
フランス 138 4,511 67,982 52,640

 

p.70 なぜ戦略空軍になれなかったのか 文/山崎雅弘

4発重爆を多数製造し利用した米英連合軍に対し、枢軸軍側は、4発重爆を作れなかったし活用できなかった。その原因について、まとめている。

結論から言うと、エンジン技術の遅れが原因だ。

ドイツの航空エンジン技術が遅れていた、というのは驚いた。

また、ドイツ空軍は二兎を追わなくて、戦術空軍を追究した結果、戦術空軍になったということだ。

 

p.82 ドイツ軍用機の生産体制と生産の実際 文/松代守弘

ドイツ軍の機種別航空機生産数の遷移の表が興味深い。

 

  戦闘機 爆撃機 対地攻撃機 偵察機 輸送機 艦載機・水上機 練習機・連絡機・その他 ジェット機 合計
1934 123 - - 274 192 90 1289 - 1,968
35 276 165 69 353 332 204 1784 - 3,183
36 639 289 126 275 328 242 3213 - 5,112
37 521 1099 352 71 243 316 3004 - 5,606
38 842 1344 281 197 353 249 1969 - 5,235
39 1,507 2124 930 493 577 272 1447 - 7,350
40 2,746 2852 603 971 388 269 2418 - 10,247
41 3,744 3373 507 1,079 502 183 3013 - 12,401
42 5,565 4357 1259 1,087 573 248 2462 - 15,551
43 11,198 4749 3546 1,157 1028 259 3590 - 25,527
44 25,285 2287 5496 1,686 443 141 4214 1041 40,593
45 4,936 - 1104 216 - - 337 947 7,540
合計 57,382 22,639 14,273 7,859 4,959 2,473 28,740 1,988 140,313

 

また、主要国の軍用機生産数の変遷の表も興味深い。

  ドイツ 日本 アメリカ イギリス ソ連
1939 8,295 4,467 2,141 7,940 10,342
40 10,826 4,768 6,019 15,049 10,125
41 11,776 5,088 19,433 20,094 14,942
42 15,556 8,851 47,836 23,672 25,318
43 25,527 16,693 85,898 26,273 34,879
44 39,807 28,180 96,318 24,461 40,261
合計 111,787 68,047 257,645 117,489 135,867

合計して、連合軍と枢軸軍を比較すると、下の表になる。

厳密に言えば、イタリアやフランスも下の表に加えたいところだが、これだけ見ても、いかに連合軍の軍用機生産数が凄いかわかる。

連合軍 511,001
枢軸軍 179,834

 

p.86 パイロットの養成と要求された技能 文/坂本明

ドイツ空軍のパイロット養成の流れの図が載っているが、初等飛行学校で飛行時間約150時間。

その後の単発機パイロット・コースで飛行時間150~200時間で13か月。

双発機パイロット・コースで飛行時間220~270時間で20か月。

 

戦争が激しくなったらこの期間も短縮されたようだが、やはりパイロット養成には時間がかかる。

 

p.91 ドイツが語る二人の撃墜王 文/白石光 松代守弘

第一次世界大戦で80機撃墜のレッド・バロンこと、第二次世界大戦で352機撃墜のマンフレート・フォン・リヒトホーフェンとブーベ(坊や)ことエーリッヒ・ハルトマンの評伝だ。

 

p.103 16の視点から読み解くドイツ空軍機の実像 文/飯山幸伸

01 急降下爆撃の過度の追究 ユンカースJu87、ヘンシェルHs123

02 小型の機体に大馬力エンジンを搭載 メッサーシュミットBf108, 109, 110

03 洋上哨戒・索敵と洋上航空救難 フォッケウルフFw200C, ハインケルHe59

04 新しい機種 戦闘爆撃機 メッサーシュミットBf110C-4B, フォッケウルフFw190F,G, メッサーシュミットMe210, 410

05 電波航法システムの開発と改良 クニッケバイン、Xゲレート

06 画期的だったが行き詰まった大規模空輸 ユンカースJu52/3m, メッサーシュミットBe323

07 あらゆる任務をこなす万能機 ユンカースJu88

08 対艦誘導兵器の成功と失敗 L.10/L.11/BT, ヘンシェルHs293, フリッツX

09 敵機より高く・・・成層圏での戦闘 ユンカースJu86P,R, フォッケウルフTa152H

10 短距離離着陸能力の追求 フィーゼラーFi156, フォッケアハゲリスFa223, フレットナーFl282

11 航空用ディーゼルエンジンと双子エンジン Jumo204/205/207, DB606/610

12 巡航ミサイルと弾道ミサイル フィーゼラーFi103(V1), V2

13 生みの苦しみを味わったジェット戦闘機開発 ハインケルHe178,280, メッサーシュミットMe262

14 先進的なジェット/ロケットエンジン フィーゼラーFi103(V1), バッヘムBa349, メッサーシュミットMe163B

15 各種試みられた「親子機」の開発 ミステル

16 大陸間飛行を目指した超長距離機 ユンカースJu290A/390, メッサーシュミットMe264A

 

ドイツの航空新技術への挑戦の歴史がそれぞれ1ページから2ページでわかりやすく説明している。

航空用ディーゼルエンジンの開発をしていたのは私は知らなかった。

親子機の構想は、離陸時に燃料を一番食うので、離陸を大型機が実施し、その後、単発機を切り離して航続距離を伸ばそうという考えだったとは知らなかった。

 

p.136 人物伝1 ゲーリングとミルヒ 文/守屋純

ドイツ空軍のトップ2人の評伝だ。

政治的野心の塊のゲーリングと実務の天才ミルヒは対照的で面白い。

父親がユダヤ系のミルヒだが、母クララがその伯父との間で不義密通の結果、産まれたので、ユダヤ人ではない、という説明だったのは驚く。

 

p.144 人物伝2

「インメルマン・ターン」を生み出したマックス・インメルマン

レッド・バロンの従兄弟ヴォルフラム・フォン・リヒトホーフェン

ドイツ空軍初代参謀総長ヴァルター・ヴェーファー

ヒコーキ野郎のエルンスト・ウーデット

イタリア戦線で検討したアルベルト・ケッセルリンク

悲劇の参謀総長ハンス・イェショネク

最後の空軍総司令官ロベルト・フォン・グライム

元帥から予備役編入されたフーゴ・シュペルレ

空軍高官唯一の刑死者アレクサンデル・レーア

相当大本営で爆死した悲劇の参謀総長ギュンター・コルテン

ドイツ空挺部隊の父クルト・シュトゥデント

ドイツ空軍戦闘機部隊を支えたアドルフ・ガランド

シュヴァルム、ロッテという二つの隊形を考案したヴェルナー・メルダース

 

一人1ページから2ページで評伝をまとめていて、読んでいて面白い。

 

p.160 ドイツの航空燃料裏事情 文/野木恵一

ドイツ空軍の航空燃料の約90%が石炭から合成された人造石油だったのは驚いた。

石油の枯渇が見えてきた今、もう一度石炭からの人造石油を使ってはどうだろうか?

 

p.164 遅れていたドイツ夜戦隊のレーダーと運用 文/白石光

連合軍の夜間空襲に対するドイツ軍夜戦部隊の戦いは激しかったが、イギリスに比べて遅れていたのは意外だった。

 

p.172 ドイツ航空機関連メーカー列伝 文/野木恵一

ヘンシェル、ユンカース、フォッケウルフ、フィーゼラー、バイエルン発動機製作所(BMW)、ドルニエ、ハインケル、アラド、そしてバイエルン航空規制削除/メッサーシュミットなど個性あふれるメーカーの概略史だ。