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副題にある『歴史に埋もれた「幻の3番機」』や帯にある『「3番機」がいた』を見て興味を見て買った。山本五十六は2機の一式陸攻と6機の零戦で移動中に亡くなった、と思っていたのに、3番機がいたとは、何か新発見があったのだろうか?
ネタバレになるが、3番機は、九六式陸攻を改造した輸送機で、山本五十六が向かう先に酒などの品物を届けるために向かった。一式陸攻より速度が遅いので単独で現地に飛び、P38が山本五十六機を襲撃した時には遥か後方にいたのだった。
「なぁ~んだ」と少し思ったが、本書の本質は、そこではない。
1998年生まれの著者の筆力がすばらしい。3番機の電信員だった青木藏男氏にインタビューをとり、情報の裏どりをしている点、様々な史料にあたり、山本五十六最期の15日間を、立体的に鮮やかに再現している点だ。
山本五十六がラバウル、そしてブーゲンビルに向かったのは、山本五十六のたっての願いだと思っていたが、p.30に、そうではなかったことが書いてあった。これは意外だった。
ではどうして彼はブーゲンビルに向かったのか?p.33に答えがあった。少し長いが引用する。
「ラバウルで基地航空部隊の指揮を執る草鹿と、母艦飛行隊の指揮を執る小沢は、友に海兵37期卒の海軍中将である。本来ならここでは兵学校時代の卒業成績が良かった順、いわゆるハンモック・ナンバーの順で草鹿が指揮を執ることになっていたが、虎の子の艦載機を門外漢の草鹿が運用することに第三艦隊側が反発した。(中略)連合艦隊司令長官たる山本五十六大将が、ラバウルに出向いて両者を統一指揮すればよい、というのである。」
激戦の最中なのに日本海軍ではそんなことにこだわっていたとは、驚いた。日本は負けるわけだ、とあらためて思った。
山本五十六が今村均中将と会った話や、山本五十六がガダルカナル島から撤退してきた故郷長岡の連隊の兵士を見舞った話などが、眼前で動くように再現されている。
青木藏男氏は山本五十六を一度も見ることなく任務を遂行していたが、山本五十六遭難を聞いた時の衝撃が読者にもよく伝わってくる。
ノンフィクションの書き手が減ってきている昨今ではあるが、池田遼太氏はこれからが楽しみだ。
