
最近、本ブログには、ASLSKの記事ばかりあげているが、作戦級ゲームについては何をしているか、と言うと、このところ、A氏とともに、VASSALで『北アフリカ戦役』(The African Campaign)の拡張とそのテストプレイを楽しんでいる。『The African Campaign Designer Sigunature Edition』を改修元にした。アイデアを出し、それをVASSAL上で修正するのは、もっぱらA氏で、私がやっているのは、一緒にプレイして、感想を述べるくらいだ。だが、この改修がとても楽しい。
boardgame Geekのリンク
『北アフリカ戦役』(The African Campaign)
https://boardgamegeek.com/boardgame/5182/the-african-campaign
『The African Campaign Designer Sigunature Edition』
Compass Games社のリンク
https://www.compassgames.com/product/the-african-campaign-designer-signature-edition/
boardgame Geekのリンク
https://boardgamegeek.com/boardgame/233016/the-african-campaign-designer-signature-edition
国際通信社(IED)から日本語版も出ている。
コマンド・ザ・ベスト第5号『アフリカン・キャンペーン』
https://commandmagazine.jp/magazines/single/?id=29940
このゲームは、ユニット数が少なく、シンプルなルールで、北アフリカ戦役全体をシミュレートしていて、雰囲気も伝わってきて、とても面白いのだ。だが、シンプルゆえに、現実にあっても省略されている現象や史実があるのは、致し方ない。
そこで、A氏は、ご自身で、VASSAL版『The African Campaign Designer Sigunature Edition』を改修した。
■主な改修点
『The African Campaign Designer Sigunature Edition』からの大きな改修点は、次の七点だ。
1) ターン数削減と第0ターンの追加
50ゲームターンは間延び感があってさすがに長いので、全25ターンに半減し、第0ターンとして、コンパス作戦奇襲ターンを追加し、合計26ターンとした。
2) サドンデス勝利条件の追加
A氏と私が、『北アフリカ戦役』(The African Campaign)をプレイすると、エル・アゲイラの手前、エル・アラメインの手前、ハルファヤ峠のいずれかで、やがて戦線が膠着してしまう。プレイ可能なヘクス数が少なくなったり、斜面があったりして、それぞれがチョーク・ポイントとなって、戦線を作られると、攻撃側は突破できなくなり、戦線が膠着してしまうのだ。それがわかってくると、ある程度の段階で、攻勢をやめにして、戦線を作って、じっと待機しあってしまう。引き分け狙いのサッカーの試合みたいになってしまう。
その状態を防ぐために、5ターンごとに、サドンデス勝利条件を設けて、攻勢を続けなければいけないルールとした。例えば、「5ターンまでにイギリス軍はベダフォム周辺までユニットを進めないとサドンデス負け」、とか、「10ターン時点で、枢軸軍は、エル・アデムを占領していないとサドンデス負け」といったような勝利条件だ。
3) 内陸に小道の追加
『北アフリカ戦役』(The African Campaign)では、海岸道路だけが、地図盤状にあるため、攻撃軸が、一本になってしまう。内陸に小道があると、その砂漠地帯を通って、片翼包囲する選択肢が出てくる。史実でもそのような動きが見られたので、地図盤上で、内陸に小道を、追加した。海岸道路が0.2移動ポイントなのに対して、小道のポイントは0.5なので速度は、海岸道路に比べて遅くなる。また、補給路としては機能しない。追加移動フェイズや戦略移動を加味すると、小道を通って、背後に回って補給を途絶する作戦を採れるので、侮りがたい。
4) 追加移動フェイズ
移動フェイズ=>戦闘フェイズ=>補給確認フェイズを繰り返す手順だったが、補給確認フェイズ後に追加移動フェイズを増やしている。補給マーカーによる補給を受けているユニットは、この追加移動フェイズに移動可能になる。追加移動フェイズ後に戦闘はないが、十分な戦力を持っていればオーバーランは可能だ。そのため、守る側は、追加移動も考慮して守らないといけない。
5) 補給マーカーの追加
補給マーカーとは、燃料・弾薬・食糧・水・パスタ・ワイン・ウイスキーなど、戦いに必要な物質のことだ。部隊は、補給マーカーによる補給を受けないと、その能力を最大限、使用できないのだ。
補給マーカーは自身では移動できず、トラックポイントによって、前線まで輸送しないといけない。また、敵に鹵獲されることもある。籠城している時にも必要なので、海上輸送するか、包囲を突破して、籠城部隊まで運ばないと、籠城部隊は干上がってしまう。
6) トラックポイントの追加
補給マーカーを運搬する輸送部隊を、トラックポイントとして追加しており、両軍毎ターン20トラックポイントを使用できる。補給マーカー1個を、1移動力分輸送するには、1トラックポイントを使用する。ある程度の規模の作戦を実施するには、トラックポイントを使用して前線に補給マーカーを蓄積しておかないといけない。戦線が前に進むと、前線までの距離が長くなり、輸送負荷が大きくなる。
7) 若干の地形修正
その他、トブルク周辺やガザラの位置やハルファヤ峠など、若干の地形の修正をしている。
■感想
1) ターン数削減と2) サドンデス勝利条件の追加と7)若干の地形修正
ターン数が削減されたことと、サドンデス勝利条件を追加したことや若干の地形修正によって、間延び感がなくなったこと、攻勢をとり続けないといけなくなったことで、戦線が膠着することがなくなったのがよかった。
3) 内陸に小道の追加と4) 追加移動フェイズ
内陸の小道と追加移動フェイズの追加によって、敵戦線の裏に回る可能性が出てきたので、前掛かりになりすぎると、裏に回られて、補給路を遮断されたり、補給マーカーを鹵獲される恐れがあるので、重要な峠には、後方部隊を残しておかないといけない。自軍の移動フェイズにおける移動で考慮すること、ジレンマが増えて、面白くなった。
5) 補給マーカーの追加と6) トラックポイントの追加
実際に作戦を実施するには、燃料・弾薬・食糧・水などを蓄積し、前線に送り込まないといけない。それがうまくできた方が勝利する。ノモンハン事変やガダルカナル島をめぐる戦いやインパール作戦における日本軍は、補給物資の蓄積合戦に負けたり、補給物資を最前線に送り込めずに、勝利を逸した。通常の作戦級ゲームだと、そのルールは、省略されていたり、抽象化されていて、プレイヤーは、補給物資の輸送の苦労を体験する機会は、多くはない。
独ソ戦のように多数のユニットが登場するゲームだと、煩雑になるだろうが、北アフリカ戦役規模だと、煩雑にならずに、体感できる。VASSALでなく、実物のユニットやマーカーを使うと、スタックが高くなって土砂崩れを起こしたり、マーカーの置きもれや外しもれが出るが、VASSALだとその心配もない。
このルールを追加したことで、補給物資を蓄積することの大変さ、最前線に送り込むことの苦労を、直接、体感することができる。それは、二十世紀の戦争の、最重要で本質的な部分だと思うが、その部分を比較的簡単に体感できるゲームになった、と思う。
補給物資蓄積、前線への輸送の苦労をよく実感できる
テストプレイしてみて、北アフリカの戦いでの補給の苦労を、本当によく実感できる。
イギリス軍によるコンパス作戦を受ける前に、イタリア軍が補給問題で停止したのがよくわかる。あれ以上前進したら、イタリア版インパール作戦の悲劇になっただろう。ドイツ・アフリカ軍団が、アフリカに向かう時に、補給の観点から攻勢をとるのを戒めた、というのも、本当によく理解できる。攻勢限界点という現実が、地図盤上に見事に表現される。ガダルカナル島の戦い版やインパール作戦版を作ってみたい気もするが、他にも積みゲーが多数あるから、結局作らないだろうなぁ・・・。
ある程度の規模の作戦準備をしようと思ったら、大量の補給物資を前線に進めて蓄積しないと、攻勢が停止すること、補給物資を前線に進めるのが大変なこと、前線が延びれば延びるほど、補給物資の前進が大変なことを、よく実感できる。攻勢をとって前進すればいいというものではないことが、よくわかる。
なお、こういう点をうまくルールに加えているゲーム・シリーズに、MMP社のOCS(*)があると聞いたことがあるが、A氏も私も、52ページに及ぶルールを読む気力がなく、読んでいない。
(*)サンセットゲームズさんのOCS日本語ルールへのリンク
http://www.sunsetgames.co.jp/the_gamers/ocs/ocsv4.3rule.pdf
VASSALのおかげで、個人でゲームを改修し、試行することが、簡単にできるようになったのは、とてもありがたいし、とても楽しい。VASSALがなかったら、デザイナーズ・キットのブランク・ヘクス・マップに絵を描いて、ユニット作成して、切り取って、各種チャートを印刷して、テスト・プレイしては、同じことを繰り返すしかなかった。かなり手間がかかる。まぁ、その手間も楽しいものだが、VASSALだと、適度に手間も楽しめて、短時間でプレイまでもっていける。
VASSALで修正し、テスト・プレイしてみると、細かな修正点が見つかる。それをまたVASSAL上で修正し、テスト・プレイする。また改善点が見つかり、試してみる。なかなか終わりの見えない作業だが、とても楽しいものだ。
ゲーム・デザインの苦労や楽しさを、ゲーマーが、比較的簡単に味わえるようになったのは、ありがたい時代になったものだ、とつくづく思う。