Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

シミュレーションゲームマガジン『SIMULATOR』第5号(1983/07/25)

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もくじはこちら


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隔月刊の『SIMULATOR』誌。当時の価格で400円。全59ページ。
特集は『海戦ゲーム』だ。

 

p.4 三隻のビスマルク 中野雅晴

もくじでは記事のタイトルが「3つのビスマルク」だが、p.4のタイトルは「三隻のビスマルク」だ。どちらもいいタイトルだと思う。迷ったのだろうなぁ・・・。

AH『ビスマルク』(Bismarck)と、コンピュータ・ゲームのAH『戦艦ビスマルク号』(North Atlantic Convoy Raider)、SSI『Computer Bismarck』を比べた記事だ。

この当時のコンピュータでできることが限られていたため、ボード・ゲームのAH『ビスマルク』(Bismarck)の完勝。

 

p.6 激闘!ルンガ沖夜戦 飯島秀樹

HJ『アイアン・ボトム・サウンド』(Iron Bottom Sound)、HJ『大日本帝国海軍』(IJN)、TH『戦艦大和』のルンガ沖夜戦シナリオを比較した記事だ。

夜戦では敵が何隻いるかどんな戦力かがわからない状態で戦いに入るのだが、ゲームだとそれがシミュレートされない、というのは同意する。

 

移動ルールについては、HJ『アイアン・ボトム・サウンド』(Iron Bottom Sound)とTH『戦艦大和』がプロット式。

HJ『大日本帝国海軍』(IJN)はプロットしないが、艦隊としての移動については雰囲気が出ている。

HJ『アイアン・ボトム・サウンド』(Iron Bottom Sound)は移動が自由すぎる。TH『戦艦大和』は最小直進距離があり、現実的だ。

砲撃ルールについては、TH『戦艦大和』は一瞬にして沈没してしまい、HJ『大日本帝国海軍』(IJN)は損害がほとんど出ない。HJ『アイアン・ボトム・サウンド』(Iron Bottom Sound)がその間だ。海戦ゲームの砲撃は「サイコロの振り合いになるが、実際の緊迫した感じをもっとあじわえるようなデザインのゲームを発表していただきたい」というのが飯島秀樹氏の考えだ。

魚雷発射の原理は、方位角50から60度が好射点なのだそうだ。図があってわかりやすい。敵艦が北(時計でいうと12時の方向)に移動しているとすると、2時の方向に魚雷を発射する艦がいる位置関係だ。そこにいて雷撃する艦が真横に雷撃すると、敵艦が直進しても左右に転舵しても魚雷が当たるのだ。今度試してみたい。

HJ『アイアン・ボトム・サウンド』(Iron Bottom Sound)は全然当たらなくてフラストレーションがたまる。HJ『大日本帝国海軍』は魚雷が移動しないのでよく当たるが、概念が異なるので「相当におかしい」「はっきり言ってシミュレートとはいえない」という評価。だが「海戦全体としてみると・・・感じがでている・・・このゲームの魚雷ルールは嫌いではない。むしろ好意的な評価をしている。」とのことだ。

 

p.14 ソロモンの夕陽 ゲームクラブ・アウトバーン 藤浪智之 芦川敬 大橋幸雄

EPC『日本機動部隊』第二次ソロモン海戦のバトル・レポートだ。

なかなか面白いのだが、ゲーム盤が掲載されていないのでゲームのバトル・レポートとしては今一つだ。

 

p.20 ヒゲの大佐のゲーム・デザイン講座 鈴木銀一郎

今回のテーマは移動(Moves)について。プレイアビリティが低下するのはユニット数100あたり、ダミーカウンターになると25くらいという指摘には同意する。

移動力の評価の仕方も興味深い。戦史をもとに算出するべきだというのはもっともだ。

第2次移動(セカンド・インパルス)については、momentumという概念をとりあげ、わかりやすく解説している。モメンタムとは、はずみや勢いのことだ。『タクテクス』(TACTICS)誌第3号の批判記事をとりあげ、その欠点をEPC『バルジ大作戦』で、敵のZOCから脱出する際の移動コストによって、第2次移動(セカンド・インパルス)のデメリットを克服したことを説明している。

 

p.23 クロス・レヴューに変えて

『SIMULATOR』第3号のクロス・レヴューに対してHJ『マーケットガーデン作戦』のデザイナー石川輝氏や戸島毅氏から抗議文が来たそうだ。要約すると、「評論誌なのに具体的理由を付記せず『つまらない』『シミュレーション性に乏しい』『ひどいゲーム』『失敗したゲーム』と談ずるのは『悪口』にすぎない。」、「”好み"で書いているようなので、”好み”の基準を載せるべきだ。」

 

『SIMULATOR』編集室は「①ゲームクラブの生の声をのせることによって、ゲーマーの参考にする。②批評ではなく感想である。③感想につきものの独断的な面は多人数の言葉をのせることによって、一方的にならないようにする。」と考えていたそうだ。

 

TH『タイガーI』のデザイナー滝村憲氏の反論は、拍手喝采したい。

 

何となく感じてはいたが、やはりそうなったかぁ~という感想だ。

 

新生クロス・レヴューがどうなるか次号に期待したい。

 

p.33 SPI事件の総括 中野雅晴

SPI倒産の結果をまとめた記事。

SPIはTSRの一ブランドになる。

ニューヨークに残りたい人達は会社を辞めてアバロンヒルの支援を受けてビクトリー・ゲームズを立ち上げた。

Strategy &Tactics誌とAres誌は季刊誌となり増刊2号と合わせて一応年6回発行となる。

 

SPIのゲームはアイデアが面白いが最後のテストプレイの詰めが甘く玉石混交というのが中野氏の評価だ。

 

p.40 How to Win 近代戦に学ぶ戦略戦術 近代海戦に学ぶ戦略戦術 大平英樹

今回から執筆者が深見耕一氏から大平英樹氏に変わった。

空母戦の作戦、戦術について、8ページにわたって解説している。

 

p.38 プレイヤーズノート イギリス兵だって・・・ 史上最大の作戦 デザイナーズノートへの意見 野本和広

EPC『史上最大の作戦』デザイナーズノートへの反論だ。説得力がある。

 

p.39 プレイヤーズノート スターリンヘルシンキへ逃げた日 独ソ戦 青木直樹

AH『独ソ戦』(Russian Campaign)に関する作戦研究記事。短いがよくまとまっている。

 

p.56 よくでる作戦演習問題

今回は、前号EPC『バルジ大作戦』からの出題に対する解答。AH『スターリングラード』(Stalingrad)、懸賞問題はEPC『エル・アラメイン』だ。

 

次号も楽しみだ。