Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

感想:バリ島沖海戦の自作シナリオ(SS『聯合艦隊』(Fleet Battles))を作ってみて


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サンセット・ゲームズ社『聯合艦隊』(Fleet Battles)用のバリ島沖海戦自作シナリオを作成してみて、感じたことを書いておく。

 

自作シナリオはこちらだ。

 

改修版第1合戦シナリオへのリンク

改修版第2第3合戦シナリオへのリンク

改修版第4合戦シナリオへのリンク

 

【1】インターネットのおかげで調査が容易になった

私がウォーゲームをよくプレイしていた40年前は、インターネットなどなかった。

自作シナリオを作ろうと思って、史実を調べようとすると、図書館や本屋で、関連する資料を探すしか手段がなかった。

 

真珠湾攻撃ミッドウェー海戦やレイテ島沖海戦のような有名な海戦は、当時も書籍が出版されていたが、バリ島沖海戦のような海戦を扱った書籍はほとんど見たことがなかった。

太平洋戦争を扱う書籍の参考文献に必ず出てくる『戦史叢書』は、高価だし、近所の一般書店では売っていなかった。

海外の文献を入手することなど、中学生・高校生には価格もハードルも高すぎて、手が出せなかった。

 

しかし、今はインターネットがある。

『戦史叢書』は下記リンク先で無料で読める。

www.nids.mod.go.jp

海外で、この海戦がどう扱われているかも、検索すると、いろいろな資料を見ることができる。書籍だってAmazonで入手できる。

 

いい時代になったものだ、とつくづく思う。

 

【2】市販ゲームのシナリオとしては不採用

『戦史叢書』や海外のサイトを見て、このシナリオを作って、テスト・プレイしてみたが、市販ゲームのシナリオとしては、作った私自身も不採用と判断した。

ゲーム・バランスが悪すぎるのだ。

日本軍は戦力が少なすぎるので、特別ルールがなかったら、日本軍が完敗するだろう。史実でも連合軍は、各国(いや各艦)バラバラで技術面でも日本軍に劣っていたことを特別ルールに入れざるを得ない。そうなると、日本軍の最初の一撃のダイス運でシナリオの勝敗が決まってしまうのだ。

これでは市販ゲームのシナリオには含めることはできない。

 

【3】資料を読みシナリオを自作しテスト・プレイして、当時の状況を実感できた

資料を読み、自作シナリオを作ってみて、テスト・プレイしてみることで、単に資料を読むだけ、戦況図を眺めるだけより、当時の状況を、実感できた。

 

月齢4。現代と異なり電灯が少ないだろう当時のバリ島では、漆黒の闇だろう。狭い海峡の中、どこにいるかわからない日本軍。

連合軍はほとんど一緒に訓練もしたことのない艦隊だ。単縦陣でも目の前の艦を見失いそうになる夜間戦闘だ。当時はレーダーを装備していない。目視だけが頼りだ。

連合軍は決まった航路を一航過して反対側の海峡の出口から出ることにしないと、衝突したり、他の艦を見失ったり、浅瀬に座礁したりしてしまうだろう。

 

ライトをつけない車で単縦陣を作って、真っ暗な山奥の駐車場で、敵を求めて50km/hで走り廻ることを想像したら、いかに困難か想像できるだろう。

オランダ海軍ドールマン少将の気持ちはよくわかる。

 

本当に再現しようとしたら、SS『聯合艦隊』(Fleet Battles)ではなく、コンピュータ・ゲームを使ったゲームにしないと再現できない。

背景はほぼ真っ暗だ。前を進む艦の艦影も時々見えなくなる。前を進む艦が作る航跡だけが頼りだ。史実でも単縦陣を作っていたのに前の艦を見失ってしまった例がある。

 

遠くにごくわずかな影が見える。

敵の艦影か?味方の艦影か?島影か?目の錯覚か?

疑心暗鬼にもなるだろう。

 

敵艦だとすると艦種は?艦名は?数は?距離は?速度は?移動方向は?

SS『聯合艦隊』(Fleet Battles)だと、上からの視線なので、これらは皆わかる。

しかし、ドールマン少将や阿部俊雄大佐の視点だと、これらは何もわからない。

 

そんな中で、どちらの方に移動するか?艦速を上げるか下げるか?探照灯を点灯するか?照明弾を上げるか?そのまま砲撃するか?雷撃の方が先か?を判断しないといけないのだ。

 

戦いが始まっても一瞬フラッシュのように光る閃光。轟音や硝煙の匂い。至近弾の水柱や自艦に命中した砲弾による振動。激しく燃える火災。海面に漂う重油

 

きっと何が何だかわからないうちに海戦は終わって静かになっただろう。

 

そんなバリ島沖海戦の様子を、ドールマン少将や阿部俊雄大佐の視点で描こうとしたら、CGを駆使して描くしかないだろう。そして、暗闇で影を目標に砲雷撃し、時々光る砲撃の閃光や命中して発生した火災しか頼りがない中、時間が経過して、艦隊を集めてみたら、損害に驚き、敵艦に与えた損害はわからないゲームになる。

三者のゲーム・マスターのような存在(人間でもいいしコンピュータでもいい)が、勝敗を判定することになるだろう。

 

SS『聯合艦隊』(Fleet Battles)で得られる体験とは全く違うものになる。

 

資料を読んだだけだと、ドールマン少将率いる連合軍艦隊の士気と練度の低さ、逆に日本艦隊の練度の高さと敢闘精神しかわからなかっただろう。

自作シナリオを作ってみて、連合軍がこういう戦い方を選択した理由や当時の状況を、資料を読んだだけより深く実感できた。

 

市販ゲームに含まれていない海戦シナリオをこれからも作っていきたいと、改めて思った。