国際通信社の『コマンドマガジン』第180号を読んでみた。
付録ゲームは『ゴラン』(Golan)だ。
デザイナーはIrad B. Hardy氏だ。
旧SPIのModern Warシリーズの一作で、かつて『タクテクス』(TACTICS) 第33号(1986年8月号)の付録ゲームにもなった作品だ。
もくじは次のとおりだ。
- p.4 ゴラン高原の戦い 宮永忠将
- p.10 見えない"壁"を越えて 『ゴラン』プレイレポート 文/じんぼただとし
- p.14 世紀をまたぐ2つのゴラン 文/倉元栄一
- p.18 ドクトリンがドグマに変わるとき 大木毅
- p.21 涙のカギを開けて ユニットよもやま話(第144回) 文/生駒望人
- p.34 やっと出た!!究極のバルジゲーム 文/山内克介
- p.54 ウォーゲーム・メカニクス 第28回 イニシアチブとモメンタム 堀場亙
p.4 ゴラン高原の戦い 宮永忠将
戦況図、戦闘序列があり、付録ゲームのヒストリカル・ノートとしてゴラン高原の戦いを理解しやすい。
p.10 見えない"壁"を越えて 『ゴラン』プレイレポート 文/じんぼただとし
付録ゲームの『ゴラン』のゲーム紹介とリプレイをまとめた記事だ。
とてもわかりやすくて、写真もあり、プレイ意欲がかきたてられる!!
『ゴラン』は、ゲーム開始時から4ターン辺りまでは、兵力で圧倒するのがシリア軍だ。第4ターンからジリジリとイスラエル軍が戦線を押し返し始める。
第8ターン辺りにはなると、シリア軍が危機的状況に陥るが、予備部隊を前線へ投入できるようになることで戦線の立て直しと反撃へ転じることができるようになる。
下に書いたような攻守入れ替わりの展開がゲーム中に発生する。
シリア軍の攻勢→イスラエル軍の防御→増援によるイスラエル軍の反撃と攻勢→シリア軍の防御→予備部隊導入と増援によるシリア軍の反撃と攻勢→両軍膠着状態
「シナリオ1に関しては、12ターン終了時(実際の6日間に相当)に勝利得点を計算して勝敗を決するのもショートシナリオとして試してみることをおすすめしたい。」とあるが、この意見に全面的に賛成だ。
p.14 世紀をまたぐ2つのゴラン 文/倉元栄一
Decision Games社のフォリオシリーズは40作を超えており、「ファイア&ムーヴメントシステム(F&M)」システムが一番多く使われている。
SPI『ゴラン』と同じマップで、ユニットも砲兵以外の地上ユニットはほぼ同数、レーティングも同じとなっている。
同じマップとほぼ同じユニットで、異なるシステムでリメイクしたのがDecision Games社の『Golan』なのだ。
がぜん、興味が湧いてきた。Decision Games社の『Golan』もぜひプレイしてみたい、と思った。
p.18 ドクトリンがドグマに変わるとき 大木毅
戦争を実行する軍隊にはドクトリンという戦いの原則を持っている。しかし、ドクトリンが災いしドグマと化すと国家の敗亡をもたらすことがある。
イスラエルでは、「オールタンク・ドクトリン」という思想があった。1973年の第四次中東戦争で、「オールタンク・ドクトリン」もドグマと化したことを証明してしまったのだ。
ドクトリンがドグマに変わるとき、は、いい研究材料だと思った。
p.21 涙のカギを開けて ユニットよもやま話(第144回) 文/生駒望人
『タクテクス』第4号の付録ゲーム『ブノット・ヤコブ橋』のユニットについても記載がある。
p.34 やっと出た!!究極のバルジゲーム 文/山内克介
ミスター・バルジのダニー・パーカーの『The Last Gamble』がCompass Games社から発売された。
1986年、ホビージャパン社から、1989年に3W社から『Hitler's Last Gamble』が出て一応の完成を見た。それから35年の沈黙を破り、Compass Games社から『The Last Gamble』が出た。
入手してプレイするのが楽しみだ。
p.54 ウォーゲーム・メカニクス 第28回 イニシアチブとモメンタム 堀場亙
今号で一番面白いと思った記事がこれだ。
イニシアチブは「主導権」と訳される。モメンタムは「戦勢」と訳される。これらはシステムかしづらい概念だ。
イニシアチブは、『Desert Fox』(SPI/1981)で、イニシアチブ値があり、ターン開始時に枢軸軍がダイスを振って判定する。イニシアチブを得た側は先攻/後攻を選択できる。
戦勢については、『装甲擲弾兵』(エポック/1983)で「イニシアチブ(主導権)」のルールがあり、イニシアチブは先攻/後攻の決定だけでは無く、先攻/後攻によって手順が異なる点が異彩を放っている。
イニシアチブやモメンタムは、スポーツや将棋や麻雀などでもある、と思う。ただ、「何をもってイニシアチブやモメンタムがある、と言えるか?」というと難しい。
単純に運動量が多い方にイニシアチブがあるわけではない。独ソ戦のツィタデル作戦は、動いていないソ連軍がイニシアチブを持っていてドイツ軍をおびき寄せた、と言えるだろう。
本記事では、イニシアチブやモメンタムを、ルールやギミックとして採り入れたゲームが紹介されていて、興味深い記事になっている。イニシアチブやモメンタムについてはもっと深く考えてみたい。