Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

『BANZAIマガジン』 Vol.19を読んでみた

 



ボンサイ・ゲームズ企画・制作の『BANZAIマガジン』第19号を読んでみた。

付録ゲームは『カフカス攻防戦』(Panzers Along the Terek)

どの記事も面白く隅から隅まで読んだ。

もくじはこちら


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p.4 新作ウォーゲーム情報

私が興味を持ったゲームは次の3作だ。

DG 『Narvik 1940』(2023) 

デザイナーはジョセフ・ミランダだ。

 

CG『Carrier Battle:Phlippine Sea』(2022)だ。

マリアナ沖海戦を捉え直したゲームだ。「索敵と航空機運用ルールがアナログの空母戦ゲームの到達点」という点に興味が引かれる。

 

DG『Battles In the East 1&2』

新たな東部戦線作戦級ゲームシリーズだ。

『Panzergruppe Guderian』(PGG)のルールをもとにしているそうだ。

 

p.10 カフカス攻防戦 ドイツ軍のラスト・チャンス:オルジョニキーゼ作戦

文/ジョセフ・ミランダ 翻訳/辰巳潤一郎

カフカス攻防戦のヒストリカル・ノートだ。

青作戦からカフカスへの侵攻を戦況図とカラー化した写真とわかりやすい文章で説明している。また付録ゲームのヘクス番号もつけており、この10ページでカフカス攻防戦がよくわかるしゲームの背景が十分に理解できる。

 

一点、残念なのは、ナリチクという重要な地名がp.17の戦況図にないことだ。ちょっと調べるとわかるのだが、記事中でとても重要な場所なので載せておいてほしかった。

 

p.20 テレク河畔、雨降れば激流が 『カフカス攻防戦』アフター・アクション・レポート

文/和栗南華

ルールの説明を交えてどんな意図を持って部隊を動かしたかがよくわがる。

的確な盤面写真で戦況もよくわかる。

主導権が二転三転するこのゲームの面白さがよく伝わってくる!

ぜひこのゲームをプレイしたいものだ!

 

 

p.24 知られざる決戦:コーカサスキャンペーン 窪田好男

様々な独ソ戦ゲームがコーカサスキャンペーンをどう扱っているか、マップでどう表現しているかを比較解説している記事だ。マップを比較しており、とてもわかりやすい。

デザイナーがマーク・シモニッチで、2009年に出版されたGMTコーカサス・キャンペーン』のマップを使って、史実の流れ、とりうる作戦について、説明しており、とてもわかりやすい。

 

バルバロッサ作戦やスターリングラードの戦いやクルスクの戦いなどに比べると、コーカサス・キャンペーンは有名ではない。しかし、このキャンペーンがうまくいったら、石油資源を確保し、イラン経由のレンド・リースを封じ込め、トルコが枢軸軍として参戦する可能性、北アフリカの枢軸軍との連携の可能性などを考えると、歴史が変わった可能性があったと思う。

 

そういった点で「知られざる決戦」というタイトルは、まさにコーカサス・キャンペーンにふさわしいタイトルだと思った。

 

p.28 プロが利用する商用ウォーゲームとプロがつくった商用ウォーゲーム

迷彩服を着たプロの軍人がウォーゲームで遊んで・・・失礼・・・教育育成に活用している。

その例として『Littoral Commander:Indo Pacific 』を中村正浩氏が、『We Are Coming、Nineveh』を文/リムティ・ザイディマイ、翻訳/辰巳潤一郎氏が、『全域戦場』を市川丈夫氏が紹介している。

軍事小説スリラー風の文体の市川氏の記事が読みやすかった。

 

p.42 『2022:ウクライナ』デザイナーズ・ノート

文/レイ・ワイス 翻訳/高原武志

コンフリクト・シミュレーションズ・リミテッドから『2022:ウクライナ』が出版された。そのデザイナーズ・ノートだ。

現在進行形の戦争をゲームにして遊ぶのは是か非か、という問いは海外でもあるようだが、戦争に「賞味期限」があり、それを過ぎればゲームにしていいという考え方にレイ・ワイスは賛同しない。私も同感だ。

 

ゲームによってモデル化され、作戦的課題や批判的思考について、ゲーマーは学んでいる、というのも同感だ。

 

とはいえ、現段階でロシアによるウクライナ侵攻をゲーム化し出版したのには驚いた。

ちなみにマーク・ハーマン氏デザイン中なのが『ウクライナ2022』だそうだ。

 

p.45 決してネタゲーにあらず デザイナーズは不透明な事態を如何にスマートに表現したのか 文・写真/倉元栄一

ワグネルを率いるプリゴジンの反乱とその収束はよくわからない行動だったが、それをソリティア・ゲーム化した『Prigozin's March of Justice』の紹介記事だ。

「デザイナーのフットワークの軽さや観察眼、デザイン手腕には素直に敬意を表したい」と倉元氏が書くが、同感だ。

 

p.46 2023年最大のサプライズ・ゲーム 翻訳/高原武志

アレックス・ナイトがデザインしブルー・パンサー社から発売された『Land And Freedom』を紹介している。ウォーゲームとボードゲームの中間でスペイン内戦をテーマにしたゲームだそうだ。

最近スペイン内戦に関する記事やゲームが目に入るのだが、スペイン内戦ははやりなのだろうか?

 

p.50 検証ペリリュー島の戦い 文/ジョン・ウォーカー 翻訳/高原武志

 

ペリリュー島の戦いのヒストリカルノートだ。

1944年後半の72日間、アメリカ軍第1海兵隊1万7000名と陸軍第81歩兵師団1万1000名が日本軍1万4000名と激しい戦いを繰り広げた。そのヒストリカルノートだ。

 

ペリリュー島はフィリピンを目指すマッカーサーにとっても、マリアナ諸島を目指すニミッツにとっても、側面に位置し、側面を守るために、両軍からの攻撃を受けたのだ。

 

第14歩兵師団の増強歩兵第2連隊の中川州男大佐率いる日本軍は水際防御を改め、入念に準備し、射界を連動させて、隠蔽された縦深防御を実施しようとした。

 

アメリカ第1海兵師団を率いるウィリアム・H・リュパータス少将は4日間で島を占領すると豪語していた。第81歩兵師団を率いるのはポール・ミューラー少将だった。

 

艦砲射撃は3日間続いた。6平方マイル(約15.5平方キロメートル=正方形にすると一辺3.93km)に戦艦5隻、重巡4隻、軽巡4席で1400tの砲弾で砲撃した。

 

アメリカ第1海兵師団の3個連隊が上陸し進撃し始めると日本軍の激しい射撃に遭い、多数のLVT(Landing Vehicle Tracked)とDUKWを失った。

 

「ほとんど低地で平ら」なペリリュー島のはずが、第1海兵連隊の前に30フィート(約9.14m)の珊瑚礁の切り立ちが待ち受けていた。

中央の第5連隊が目立った前進をして島の東端に達し日本軍を分断した。

Dデイの午後、日本軍の戦車17両と歩兵が米軍に反撃したが、海兵隊の戦車と対戦車砲によって撃破された。

 

Dデイ+8日目に飛行場の制圧と島南部の占領を米軍が達成した。

アンガウルとウルシーは米第81歩兵師団が早々に占領していた。

 

10月上旬にはウムロブロゴル山の日本軍抵抗拠点は400 x 900フィート(121m x 274.32m)にまで圧迫されていた。Advanced Squad Leaderシリーズのヘクスで言えば、約3ヘクスx約7ヘクスの範囲だ。

11月末、日本軍の抵抗が終わった。中川大佐は11月24日自決した。

日本軍は1万1000名を失い、捕虜はわずか202名だった。

アメリカ軍は戦史1794名、負傷または行方不明8010名だった。

 

ペリリュー島マッカーサーニミッツ双方にとって側面に位置し、側面からの妨害を防ぐために、ペリリュー島攻撃は必要だったと言われる。しかし、ペリリュー島の日本軍には米軍を妨害するだけの戦力はなかった。そのため、ラバウルのように放っておいて迂回する方法が正解だったかもしれない。

 

戦況図、写真を使ってわかりやすいヒストリカルノートだ。

私はこの記事を読むまで、ペリリュー島の位置を実はよくわかっていなかったのだが、この記事中の地図を見てよくわかった。本来なら平和な楽園であるはずのペリリュー島で、血みどろになって戦った日本兵達に黙祷したくなる。

 

p.60 『楽園』への強襲ガイドブック:基礎編 文・写真/和栗南華

ソリティアゲーム『太平洋の地獄:ペリリュー』というゲームのガイドブックだ。

プレイヤーがアメリカ軍、botが日本軍を担当する。

日本軍botが強すぎて、和栗氏は14回中2回しか上陸成功しなかったそうだ。

 

このゲームを入手してプレイしてみたくなってきた・・・

 

p.62 ボンバ百名山を征く 夏暑すぎて冬戦争 The Mannerheim Line Campaign, 1939-1940 森田勝里

タイ・ボンバ氏デザインのOne Small Step『The Mannerheim Line Campaign』の紹介記事だ。冬戦争の中でも1940年2月から3月までのカレリア地峡ヴィーブリをめぐる戦いを描いたものだ。ソ連軍は自動車化狙撃兵師団3、狙撃兵師団15、戦車旅団5、戦車軍団、騎兵軍団が登場する。フィンランド軍は24個連隊(8個師団相当)だ。

フィンランド軍は1個師団で6戦力6ステップ、対するソ連軍は1個師団が4戦力4ステップだ。

ソ連軍の一方的な展開になり、フィンランド軍がダイスを振る機会はほぼないそうだが、プレイ中の写真を見ると、プレイしてみたくなる。

和栗南華氏によるルール明確化、改訂ルールの提案のQRコードが載っている。

 

p.66ヴカシン・ニサビッチ インタビュー「今の国際情勢を鑑みても冬戦争は興味深いテーマです」 翻訳/高原武志


セルビアのプリンセプス・ゲームズ社の『フリージング・インフェルノ』のデザイナー、ヴカシン・ニサビッチへのインタビュー。ブログ『The Playersaid』(https://theplayersaid.com)の翻訳記事だ。

 

冬戦争を扱ったゲームだが、ボード・ゲームとウォーゲームのギャップを埋めようとしたゲームだ。

マップデザインやユニットが二種類あるそうだ。

このマップは美しい!!

独自デザインの20面体ダイスも面白い。

日本のウォーゲーマー向け20パーセント引きクーポンQRコードもある。(2024年末まで)

次回作はノモンハン事件を扱った『バトル・オブ・ハルヒン・ゴル』だそうだ。

 

p.70 地雷ゲーム処理 ハート・ロッカー恍惚日記 文・写真/DRAGOON

誰にもオススメできないウォーゲームを紹介しているのがこの連載だ。

だがこの記事は別に誹謗中傷しているわけではない。なぜか逆に評しているゲームをプレイしたい、と思わせてしまう不思議な魅力あふれる連載記事だ。

 

p.73 TALK WAR FILM 文・イラスト/岸田恋

今回はクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク

彼が時間軸を自在に操る監督で本作でも一週間、一日、1時間の3つの時間軸が交差する。

説明的な台詞を少なくし映像で表現しようとする同監督の映像について、いい例をいくつもあげて解説している。

同じような脱出作戦を描いた『キスカ』との比較も面白い。

 

p.74 ウォーゲームちゃんねる シーズン2

"ミリタリー"が付けばなんでもありの雑学チャンネル?!

第6回:ミリタリー・アーカイブ

宮永忠将氏の『ミリタリー・アーカイブ』チャンネル(https://www.youtube.com/@tadamasa_miyanaga)の紹介記事だ。

週に1から2本配信しているそうで、内容は兵器のことからウォーゲームやマスコットの動物のことまで幅広い。

 

p.75 このMAPのあちら側 エルサレムの地勢と歴史 文・写真/moushiran

『ストーム・オーバー・エルサレム』の地図と現代の写真。

ウォーゲームのマップと現地がどうなっているかわかって、こういう記事がいい!!

 

p.80 戦争ゲーム飯 六皿目 日本海軍の戦闘食 窪田好男

握り飯が日本海軍の戦闘食だったそうだ。

手づかみで短時間で食べることができるし、具を工夫することで栄養のバランスもとれる。

陸軍は丸、海軍は三角だったとはそんな所まで対抗していたとは驚いた。

また、握り飯を作るのに軍手で握っていたのは驚きだった。

熱いご飯を大量に握ったらやけどするだろうから納得だ。

一番印象に残ったのは、作った握り飯と笑顔で写っているのは窪田好男さんだ!

とてもいい笑顔だ!!