1982年に発売されたHJ『マーケットガーデン作戦』(Operation Market-Garden)の紹介だ。
デザイナーは石川輝氏。デヴェロッパーは桜井真一氏。ボックスアートはRodger MacGowan氏。このボックス・アートは大好きだ。(青文字は私の感想)
グラフィックやレイアウトはRieko Tsuiki氏。名前から見ると女性のようだが、珍しい。
■ゲーム・スケール
ゲーム・スケールは、次の通りだ。
●1ユニットが大隊レベル
●1ターンは、午前ターン・午後ターンが6時間、夜間ターンが12時間
●1ヘクスの対辺距離は1.6km
■地図盤
地図盤は425mm×274mmx4枚。広げると425mmx1,096mmになる。
■ルール・ブック
ルール・ブックは、ルール部分が20ページ。シナリオが7ページ
戦闘序列3ページ。ヒストリカル・ノートとデザイナーズ・ノートが2ページ
ユニットリスト2ページだ。
■ユニット数
ユニット数は400個だ。内訳はユニット194個。マーカー97個。空白109個。実質291個。
■シナリオ
キャンペーンシナリオ1個(25ターン)
ショートシナリオ6個(4ターン4個、5ターン1個、14ターン1個)
合計7個
キャンペーンシナリオでどのくらい時間がかかるかわからないが、ショートシナリオがあるのがありがたい。
■シーケンス
シーケンスは、次のとおり。
★連合軍プレイターターン
1.補給判定フェイズ
2.連合軍効果着陸フェイズ
3.連合軍砲兵隊形変換フェイズ
4.連合軍移動フェイズ
5.連合軍戦闘フェイズ
★ドイツ軍プレイヤーターン
6.補給判定フェイズ
7.ドイツ軍増援フェイズ
8.ドイツ軍砲兵隊形変換フェイズ
9.ドイツ軍移動フェイズ
10.ドイツ軍戦闘フェイズ
11.ターン更新フェイズ
■支配地域(ZOC)
敵ZOCに入ったら停止
ターン開始時に敵ZOCにいたら追加1移動力を消費して離脱可能。
ZOCからZOCへの移動禁止。
都市ヘクスに対してはZOCが及ばない。
後退、補給線設定ヘクスが敵ZOCであっても味方部隊がいたら敵ZOCの影響が及ばない。
■スタック
移動フェイズ終了時点、戦闘フェイズ間、連合軍効果着陸フェイズ間、スタック制限が課せられる。
スタック制限は2個部隊まで。(連合軍架橋工兵、独軍対空砲部隊はスタック制限外)
スタック制限オーバーした場合持ち主が選んでユニットを除去する。
■移動
機械化部隊と非機械化部隊で移動ポイントが異なる。
非補給状態の場合、移動力は1/2
孤立状態の場合、移動不可
砲兵部隊は、移動隊形の場合、移動可能。砲座隊形の場合、移動不可。
独軍は地図端ヘクスから1移動力を使い地図外移動表へ移す。
地図外移動では、1ゲームターンで最大2エリア移動可能。
移動フェイズ開始時に地図外エリアにいる部隊は、通常の移動力を消費して地図端ヘクスへ登場可能。敵ZOC内も可能だが、敵ユニット上は不可。
登場時は補給下。
エリア間移動と通常移動は同一ターン中には不可。
エリアが連合軍制圧下になったときに当該エリアにいた部隊は全滅扱い
■戦闘
戦闘比
ダイス2個
メイアタック
各部隊は1回だけ攻撃できるし、攻撃を受けるのも1回だけ。
1回の攻撃で、複数ヘクスから1ヘクスを攻撃してもいいが、複数ヘクスが攻撃を受けることはない。
攻撃側スタックは別のヘクスを攻撃可能。
防御側スタックはまとめて攻撃を受ける。
地形により地形効果レベルが設定されている。
地形効果レベルは累積しない。最も高いものを利用する。
ヘクスサイドの地形効果レベルは防御側だけ追加する。
非補給状態の場合、攻撃力1/2(端数切り捨て)、防御力通常通り
孤立状態の場合、攻撃不可、防御力1/2(端数切り捨て)
戦闘解決手順は次の通り
1)全攻撃力を合計
2)全防御力を合計
3)戦闘比を算出
4)地形効果レベルの算出
5)ダイス2個を振る
6)戦闘結果表を見て戦闘を解決する。
D1からD8
戦闘結果表の数値<地形効果レベル 効果なし
戦闘結果表の数値=地形効果レベル 防御側全部隊1ヘクス後退または1部隊の1戦力低下
戦闘結果表の数値>地形効果レベル 防御側全部隊1ヘクス後退に加えて1部隊の1戦力低下
D8(1)からD8(3)
まず( )内の数値分だけ戦力段階を低下させ( )外の数値分はD1からD8に準じる。
EX
攻防双方が1戦力段階低下させる
A1(1)D1からA(1)D5
攻防双方に適用。
複数ヘクスから攻撃し攻撃側が損失を受ける場合、各ヘクスごとに地形効果レベルの違いによる損害や後退をする。
戦闘後前進は任意で、戦闘結果で空いたヘクスに対し攻防どちらも可能。
1ヘクス目は後退したユニットが元いたヘクスに無条件で前進。
追加の前進はスタックを分割しても構わない。
1ヘクス目が敵ZOCでも、追加の前進可能。追加前進時に敵ZOCに入ったら停止。
移動禁止ヘクスやヘクスサイドを通っての戦闘後前進不可。
地形効果レベルというルールは初めて見た。通常の作戦級ゲームだと、コラムシフトやサイの目修整が一般的だ。このルールだと地形ごとの相違点が細かく設定でき低位と思う。
ルール・ブックの戦闘に関する記述は詳細でとてもわかりやすい。作戦級ゲームの戦闘に関する記述としては、最高の記述の仕方だ。
一点、わかりにくい記述なのが、[9.63]の未消化分が残っている場合の「戦闘に参加した敵の部隊が全滅した場合で、戦闘結果の未消化分が残っている場合、その未消化分を戦力段階数に換算して考え、その数値分のヘックスだけ追加して前進を行うことができる。」という記述だ。『タクテクス』第10号(1983/7)のQ&Aや第14号の『橋は遠すぎない!<HJ>"マーケットガーデン作戦"コンメンタール』でも追加説明されているから当時でもやはり誤解が多かったのだろう。
わかりにくい原因は、「戦力段階数に換算」という点だと思う。[9.45]のD1~D8の項に「損害ポイント」という考えをを追加してこう書き換えるとわかりやすいと思う。
[9.45]
i)地形効果レベルより数値が小さい:効果なし 防御側は何の損害も被らない。
ii)地形効果レベルと数値が同じ:防御側に1損害ポイント与える。
iii)地形効果レベルより数値が大きい:防御側に2損害ポイント与える。
1損害ポイントの場合、a)防御側は全部隊1ヘックス後退、または、b)防御部隊内の1部隊の1戦力段階を損失させる。
2損害ポイントの場合、a)全部隊の1ヘックス後退に加えて1部隊の1戦力段階を損失させる、または、b)部隊の中から1部隊を2戦力段階を損失させる、またはc)部隊の中から2部隊を1戦力段階ずつ損失させる
その上で、[9.63]を、戦闘に参加した敵の部隊がすべて全滅した場合で、戦闘結果の未消化分が残っている場合、その未消化分の損害ポイント分、通常の戦闘後前進に追加して前進を行うことができる。1損害ポイントの場合1ヘックス、2損害ポイントの場合2ヘックス前進できる。つまり、最大3ヘックス前進できる。
ルールブックp.12の例だと、D8は地形効果レベル5より大きいので、[9.45]のiii)になり2損害ポイントだから、2ヘックス移動できる。
■砲兵
砲座隊形と移動隊形の両方を持つものは、単一ターン中に攻撃支援射撃と防御支援射撃を行える。
攻撃支援は何個でも参加可能。
敵ZOC内の砲兵部隊は隣接していない敵部隊に攻撃支援不可。
攻撃支援時の砲兵、攻撃側の損害は被らない。
連合軍は同一師団のうち1部隊でも攻撃に参加している戦闘に攻撃支援可
英第30軍団直属砲兵は少なくとも1個の英軍部隊が参加している戦闘に対してのみ支援可能。
砲兵部隊は、味方部隊が隣接していれば、敵ユニットに弾幕射撃ができる。
隣接しているユニットが攻撃しなくても、攻撃力0のユニットでも可。
敵軍戦闘フェイズに敵ZOC内になく砲撃隊形で自身が攻撃されていなければ射程内の味方の防御力に防御支援攻撃力を加えられる。
防御支援は何個でも参加可能。
弾幕射撃には防御支援不可。
防御支援の砲兵は防御側の損害を被らない。
連合軍は同一師団のうち1部隊でも戦闘に参加している戦闘に防御支援可
英第30軍団直属砲兵は少なくとも1個の英軍部隊が参加している戦闘に対してのみ支援可能。
非補給状態の砲兵部隊は攻防支援どちらも1/2(端数切り捨て)。移動力1/2。防御力は額面通り。
孤立状態の砲兵部隊は、攻防支援どちらも0。移動力0。防御力1/2。
防御力は最低1。1未満とはならない。1/2となるときも防御支援射撃力、移動力とも最低1
砲兵部隊は戦闘後前進不可
自軍砲兵隊形変換フェイズに隊形変換可能
後退を強制されたとき、すぐに移動隊形になり、次の隊形変換フェイズまで砲座隊形になれない。
■空挺降下
エリア内に降下部隊を置き各部隊ごとに降下着陸表を見てサイコロ2個振り結果を出す。
完全戦力、半減戦力、全滅の可能性がある。
半減戦力段階を持たない部隊に半減戦力の結果が出たら損害なしとする。
降下したターンは無条件で補給下
以後は空中補給ヘクスを補給源としそこから長さ10ヘクス以内の補給線が設定できた場合、補給下
降下したターンも通常通り移動・戦闘可。
敵部隊のいるヘクスへの降下不可
敵ZOCへの降下可。ただしサイコロの目操作あり
■補給
各プレイヤーターンの補給判定フェイズにおいて、補給下か非補給下か孤立かを判断し、それが、当該プレイヤーターンの間、有効となる。
地上部隊:その部隊=>道路ヘクスまで4ヘクス以内の距離で補給線設定=>道路から自軍補給源まで無制限の補給線が設定できる
空挺部隊:その部隊=>それが所属する師団の空中補給地点まで長さ10ヘクス以内の補給線が設定できる
補給線が通れないヘクス:敵部隊のいるヘクス、味方部隊がいない敵ZOCヘクス、橋梁のない運河・大河ヘクスサイド、フェリー
道路ヘクス上の補給線は道路に沿って補給源までつながっていなければならない
独軍補給源:独軍が制圧している地図外エリアに接している地図端道路ヘクス
連合軍地上部隊補給源:地図IV南端の道路ヘクス3ヶ所
連合軍空挺部隊補給源:所属師団の空中補給地点マーカーのあるヘクス。
非補給下:補給判定フェイズに補給線設定ができない
孤立:以下の3条件を満たすとき
1.補給線設定不可能
2.敵部隊、敵ZOC、移動不可地形によりその部隊が包囲されている。
3.その部隊から2ヘクス以内に補給下または非補給状態の他の自軍部隊が存在しない
非補給下:攻撃力、移動力=1/2(端数切り捨て)、防御力=正常
孤立:攻撃、移動不可。防御力=1/2(端数切り捨て)
■橋梁
橋梁の爆破はドイツ軍のみ実施可能。任意。
連合軍が最初にその橋梁に進入したとき。つまり、一部を渡河させて後で爆破して渡河した部隊を孤立化させることはできない。
宣言し、サイコロ1個振り、橋梁破壊判定表を確認する。
■架橋工兵部隊
スタック制限外
攻撃力、防御力とも0
攻撃を受けたら即全滅
橋梁修復
連合軍移動フェイズ終了時点で破壊橋梁ヘクスサイドを持つヘクスに位置する架橋工兵は、「架橋修復中」マーカーを載せ修理を開始できる。
そのとき橋梁ヘクスサイドを持つ両ヘクスに敵部隊がなく、敵ZOCでないことが条件。
味方部隊のZOCは敵ZOCを打ち消す。
上記条件が満たされなくなったら修復中マーカーを除去する。
連合軍移動フェイズ開始時点で修復中マーカーがある橋梁は修復完了とみなす。早い!
修復された橋梁は二度と爆破されない。爆破するために準備するのに時間がかかるからこのルールは納得。
渡河支援
連合軍移動フェイズ開始時に大河ヘクスサイドに連接している架橋工兵部隊は、それが接していて敵ZOC外の大河ヘクスサイドでのうち、いずれか1ヘクスを渡河可能ヘクスサイドと指定でき、渡河支援マーカーを置く。
渡河可能ヘクスサイドを横断できるのは連合軍パラシュート部隊とグライダー歩兵のみ。追加3移動力。架橋工兵自身は渡河不可
1フェイズに2個部隊までが横断可能
渡河支援中の架橋工兵部隊は移動不可
渡河攻撃支援
敵部隊との間にある大河ヘクスサイドであっても渡河可能ヘクスサイドにできる。
次の戦闘フェイズでスタックしている他自軍部隊を持って対岸の敵部隊に対して渡河攻撃させることができる。
防御部隊の地形効果レベル=現在その部隊がいるヘクスの地形効果レベル+2
攻撃部隊の地形効果レベル=現在その部隊がいるヘクスの地形効果レベル+1
戦闘後前進は攻撃側のみ1ヘクスだけ実施可能
独軍は連合軍架橋工兵によるとか可能ヘクスサイド越しの攻撃不可
連合軍パラシュート部隊とグライダー歩兵のみ
■航空支援
連合軍のみ航空支援ポイントが与えられる
航空支援ポイントはAMまたはPMターンに使用可。夜間ターン使用不可。
支援ポイント数分だけマーカーを受け取る。
1航空支援ポイントを戦闘に参加させることで1コラムずれる。
未使用ポイントの翌日への持ち越し不可
1戦闘に2ポイントまで
最低1部隊の英第30軍団所属部隊が関与する戦闘にのみ使用可能
■特別ルール
1944年9月17日PMターンの連合軍空挺部隊が参加する攻撃は1コラム右にずらす。
1944年9月17日PMターンのドイツ軍でNeder-Rijn河以北の部隊は移動不可。
増援として上場する9SS Reconはヘクス7711に現れ、1級道路沿いにヘクス5914まで移動する。その前に敵部隊に隣接したらそこで停止する。
1944年9月17日PMターンのドイツ軍部隊の攻撃は2コラム左へずらす。
『タクテクス』(TACTICS)誌の下記号に記事が出ている。
No.6(1982/11) p.16 ヒストリカル・ノート
No.6(1982/11) p.68 ゲーム紹介記事
No.10(1983/7) p.107 Q&A
No.14(1984/3) p.50 連合軍作戦研究
■感想
ゲーム・ルールは、地形効果レベルを使った戦闘はオリジナルだが、作戦級ゲームの基本に沿ったものだ。作戦級ゲームの王道に沿ったものだ。
どのシナリオも面白そうだし、キャンペーンシナリオも面白そうだ。