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アメリカ陸軍の歴史をまとめたムックだ。
「アメリカ軍の強さとはー古今の強い軍隊と同様ー目に見える物量と技術力にではなく、それらを使いこなすソフトウエアと、それを基盤としたシステムに存在したのである。」という文が、まさにその通りだと思った。
p.39 アメリカ陸軍の誕生と発展 文/佐藤俊之
p.49 DOCUMENT 文/佐藤俊之
17世紀の植民地軍から第一次世界大戦までの経緯だ。
驚いたのは、アメリカ軍の増員と減員の激しさだ。
日本だと省益(既得権益)を守るために減員はなかなか難しいと思う。
しかし、アメリカ軍は、戦争の度に極端に増員したり減員している。
第一次世界大戦終結時300万人を超えていた兵力が22万5000人まで減ったのだ。
1939年秋には正規軍22万7000、州軍23万5000人、1941年の陸軍は150万人になった。
1945年5月には合計60個師団540万人と97万両の車両をヨーロッパ戦線に送り込んだ。
この急激に膨らむ組織とそれを支えた組織に驚くばかりだ。
p.95 米軍歩兵師団vs.独軍歩兵師団 文・監修/白石光
p.104 未来を先取りした機甲師団と完全自動車化された歩兵師団 文/田村尚也
p.110 「素人の軍隊」を精鋭に変えたマニュアル主義 文/佐藤俊之
p.116 他国に真似できない自動車主体の輸送網 文・監修/白石光
p.120 FOとFDCが可能にした柔軟な射撃法 文・イラスト 樋口隆晴
アメリカ軍は、歩兵師団に独立中戦車大隊と独立戦車駆逐大隊と独立高射自動火器大隊が派遣されることが多かったそうだ。
独立中戦車大隊は、M4が59両、M5A1が17両、独立戦車駆逐大隊には駆逐戦車36両、M20装甲車30両が装備されていた。歩兵師団本体にはトラック719両、榴弾砲66門、ジープ612両!
ドイツ軍も対戦車自走砲14両いるが、馬車が1466両、軍馬が4656頭もいたのだ。
アメリカ軍歩兵師団が実質的には自動車化歩兵師団だったのも改めて驚く。
p.124 地球規模の戦争を支えた統合・連合組織 文/中山隆志
日本軍が陸軍と海軍と政府に3分裂しており、陸軍も関東軍や中国派遣軍とそれ以外の軍に、分裂していたのに対して、連合軍が政軍を統一的な組織にまとめあげていた。どちらが全体主義国家かわからないくらいだ。東條英機より確実に、もしかしたらヒトラーよりも、ルーズベルトやチャーチルの方が権力があったといっていい。
個々の組織間では、いろいろと確執があったようだが、日本と異なるのは、米英は、問題を下で処理せず、上に上げ、上同士で話し合い、それでもダメならさらに上に上げ、最終的にはトップが決定するシステムが確立していることだろう。トップが決めたことには、下は従う。
日本は下が決め、上はそれを承認する。だから、下が勝手にあちこちに動き出すと誰も止められない。関東軍が勝手に満洲事変を起こしても、誰も止められず、追認するしかなくなったのとは大違いだ。
p.130 830万の将兵を集め101個師団を編成 文/佐藤俊之
人口の10%が戦争に行っても国民の生活を維持できるアメリカという国は凄い。
p.136 アメリカの二正面作戦 欧州か、太平洋か!? 揺れ動いた重点正面の決定 文/中山隆志
日本の陸軍と海軍の仲の悪さは有名だが、アメリカもそれに負けず劣らず、組織間ではいろいろと仲が悪い組織や人がいたようだ。
だが、最終的には、大統領が決裁し、誰もがそれを守る、という点は、アメリカの強さだと思う。
p.142 アメリカの戦時生産体制 戦前から準備されていた「民主主義の兵器廠」の内実 文/野木恵一
さすがのアメリカも戦時生産体制に移るにあたって、いろいろと問題があったようだ。それでも護送空母や4発重爆やM4シャーマン戦車を大量生産できる工業力と工場を兵器生産に転換する力は凄い。
「アメリカの広大な国土と豊富な国内資源、豊かで水準の高い人口を背景とした工業力、生産力、科学技術力と、それらを組織するマネジメント能力とが、第二次世界大戦の総力戦におけるアメリカの最強の武器であった。」という言葉がその通りだと思う。
p.150 シャーマン戦車の評価 傑作か駄作か!? 「最もアメリカ的な戦車」の真価 文/野木恵一
いろいろな意見があるとは思うが、アメリカを勝利に導いたのだから傑作戦車だと思う。