Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

堀場亙氏のTwitterスペース「戦術級について考える」を聴いて思ったこと

堀場工房の、毎月第一水曜日に開催されている堀場亙氏によるウォーゲームスペースだが、今月は堀場氏の都合により第2水曜日に実施され、私は録音で聴いた。

 

堀場工房 ウォーゲームスペース

 

テーマは「戦術級について考える」だったが、今回は、戦術級を特に定義せずに進めていた。堀場氏による戦術級ゲームの定義とその根拠を元に、ルールや時間や部隊規模やマップの広さなどから、戦術級ゲームの特徴について、深掘りするのかと私は期待していた。

しかし、堀場氏は、あえて戦術級の定義をせずに、戦術級ゲームの特徴を示唆するにとどめていて、そのためにいろいろとイメージが膨らんでよかった。

 

そもそも、戦略級ー作戦級ー戦術級の区分はグラデーションがあり、曖昧な中間的なゲームが多数あり、定義付けできるものではない。

さらに陸戦、海戦、空戦のそれぞれで違いがあるから、収拾つかなくなる。

その上、時代によっても、変わってくる。

 

■会戦級や戦闘級や作戦戦術級という区分もある

ウォーゲームスペースの中で出たのは、20世紀以前の戦いでは、会戦級があり、それは戦術級と重なるのではないか、というもので、確かに同意見だ。

また、『タクテクス』(TACTICS)誌第8号p.57で、鈴木銀一郎氏が「戦闘級」の提案をしている。そこでは「その基準は戦車が1台単位かどうか、あるいは、命中判定をするかどうかで決めればよいと思います。」とある。

 

haruichiban0707.hatenablog.com

最近は、作戦戦術級というカテゴリーもあり、ずいぶんと複雑だ。

 

■陸戦戦術級ゲームといってもいろいろあるのに驚いた

戦術級ゲームの例がいくつも出たが、私は、『Squad Leader』シリーズや『Panzer Blitz』シリーズくらいしか知らなかった。その他にも多数あるのには驚いた。

 

■プレイ時間と戦術級ゲーム

また、ゲーム中の1手に要する時間を実時間に制限する、というルールのゲームもあるそうだ。

戦場の混乱と限られた情報の中で決断した指揮官や兵士の思いを追体験するにはそのルールは確かに適切だと思う。しかし、それだったら、コンピュータ・ゲームで実現すればいいと私は思う。ボードゲームは別の道を行った方がいいと私は思う。

 

■まさか補給ルールを持つ戦術級ゲームがあるとは!

「戦術級ゲームにないルールは、補給ルールだ」というのは同意見だ。せいぜい、シナリオで補給切れ部隊の弾薬切れ確率が高いといった形の特別ルールで反映されている。と思ったら、戦術級でも補給ルールがあるゲームがあるそうで驚いた。

 

■私の考え 第二次世界大戦陸戦の場合

第二次世界大戦の陸戦ゲームでは、戦略級ー戦役級ー作戦級ー戦術級の4区分が適切だと、私個人は思う。グラデーションがあり、中間に入るゲームは多数ある。

戦略級の定義としては生産ルールがあるものだ。生産はプレイヤーがどんな兵種をどのくらいいつ生産するか選択可能ということだ。

 

戦役級は、史実にある複数の作戦をまとめてプレイできるものだが、増援ルールはあっても、生産ルールがないものだ。増援は戦闘序列表でどんな兵種のものがいつどのくらい登場するか決まっている。

 

作戦級は、史実の1作戦をシミュレートしたものだ。大雑把にいって、蓄積した砲弾や燃料などの資源を使い果たして攻撃限界点まで達したり、防御側が撤退するまでが1作戦の範囲だ。

ルール面では、隣接する敵ユニットに対して戦闘比や戦闘差で戦闘するものだ。

 

戦術級は、1日以内の戦いを再現するものだ。プレイヤーが大隊長以下の部隊長になるものだ。ルール面では、ユニットは射程を持っているのが特徴だ。私は戦闘級と戦術級を分ける必要はないと思う。

 

■私の考え 第二次世界大戦海戦の場合

第二次世界大戦の海戦ものだと、戦略級ー戦役級ー作戦級ー戦術級の4区分が適切だと思う。

戦略級の定義としては、陸戦と同じで生産ルールがあるものだ。

戦役級は、史実にある複数の海戦をまとめてプレイできるもので増援ルールはあっても、生産ルールがないものだ。AH『太平洋の覇者』(Victory in the Pacific)は戦闘序列で艦種や隻数が決まっているので戦役級だ。

また、例えばガダルカナル島をめぐる半年間の戦いを扱ったゲームもこれに当たる。

また、戦術級ゲームで、シナリオをつなげてキャンペーン(戦役)ゲームとしてプレイするのも戦役級と言っていいだろう。

作戦級は、ほぼ一回の補給で戦場に出てまた港に戻るまでの戦いを扱ったものだ。

戦術級で、1ユニット1艦で射程があり、命中判定や損害判定をするゲームはこれにあたる。

 

■私の考え 第二次世界大戦空戦の場合

第二次世界大戦の空戦ものも、海戦同様、戦略級ー戦役級ー作戦級ー戦術級の4区分が適切だと思う。

 

戦略級の定義としては、陸戦・海戦と同じで生産ルールがあるものだ。

戦役級は、史実にある複数の空戦をまとめてプレイできるもので増援ルールはあっても、生産ルールがないものだ。

 

また、戦術級ゲームで、シナリオをつなげてキャンペーン(戦役)ゲームとしてプレイするのも戦役級と言っていいだろう。

作戦級は、ほぼ一回の補給で戦場に出てまた飛行場に戻るまでの戦いを扱ったものだ。

空戦もので作戦級ゲームに相当するものはかなり少ないと思う。

次は戦術級で、1ユニット1機で射程があり、命中判定や損害判定をするゲームはこれにあたる。

 

■私の考え 20世紀以前の陸戦の場合

私自身もまだ答がない。

長篠の戦い姉川の戦いで、合戦当日を扱ったようなゲームは、確かに会戦級という区分が適切だと思う。

関ヶ原の戦いでも合戦当日だけを扱ったゲームなら会戦級とした方がいいかもしれない。

それらが作戦級ゲームといったり戦術級ゲームといったりすると確かに疑問符がつく。

 

■え!?定期的な開催はあと2回!?

今回は、堀場氏の話より、私の考えの方がボリュームが大きくなった。

それだけ堀場氏の話をきっかけにして、自分の中でいろいろと考えが拡がったからだ。

堀場氏がテーマに関する様々な示唆を、ぽっ、ぽっと投げかけて、それによって聴いた人の中でイメージが膨らむ、という今回のような形も面白かった。

 

あと2回は月一回の開催だそうだが、その後は不定期になる、というのが残念だ。

毎月1時間テーマを決めて開催するのは大変だと確かに思うが、ぜひ毎月実施してほしい。