■季刊ミリタリー・クラシックス vol.86 2024年夏号
■出版社: イカロス出版
■雑誌18441-09
■発売日: 2022/07/21
もくじは次の通り。
第一特集は、メッサーシュミットBf109。
第二特集は、八九式中戦車イ号。
メッサーシュミットBf109は、1934年2月にアラド、ハインケル、BFW(バイエルン航空機製造、のちのメッサーシュミット社)に要求仕様が出された。
ちなみに、日本海軍の九六式艦上戦闘機の試作指示が出たのが昭和9(1934)年2月、日本陸軍の九七式戦闘機が昭和10(1935)年末だから、これら二機種とBf109はほぼ同じ頃に要求仕様が出た機体だった。
Bf109の要求仕様には、各要求の優先順位について1番目に水平最高速度、2番目に上昇力、3番目に操縦性と明記していあるそうだ。この辺は、要求仕様に優先順位をつけず矛盾する要求の全てだと答えた日本海軍とは違って、ドイツ空軍は現実を見据えた要求をする点はさすがだと思った。
p.47-p.48に、Bf109の各型の性能要目表が載っている。
これを見てBf109の各型の変遷を見ているととても面白い。
Bf109B-2型は全備重量1960kg、エンジンはJumo210Dで離昇出力680馬力、最大水平速度460km/hなのだ!!
ちなみに、日本海軍の九六式艦上戦闘機2号2型で全備重量1697.2kg、エンジンは寿3型610馬力、最大水平速度243.5kt(450km/h)、日本陸軍の九七式戦闘機は1768kg(落下タンク装着時)、エンジンはハー1乙710馬力、最大水平速度468km/h)だ。
それがBf109E-1になると、全備重量が2553kg、エンジンをDB601Aに換装して1050馬力、最大水平速度が460km/hになった。
Bf109G-2になると、全備重量が3100kg、エンジンはDB605Aで1475馬力、最大水平速度が510km/hになる。
Bf109G-10では、全備重量3343kg、エンジンはDB605DCでなんと2000馬力、最大水平速度は510km/hだ。
零戦が950馬力の栄12型から1350馬力の金星62型まで改修したが、Bf109は650馬力から2000馬力まで改修したのだから驚く。
エンジンを換装すると、重くなって機体バランスが崩れるだろうし、機体の耐久性も再計算しないといけないだろうから、大変だと思うが、Bf109やスピットファイアにはできたが、日本陸海軍機にはとうていできないことだった。
よく「拡張性」という言葉を耳にするが、具体的には何があると拡張性がある、と言えるのだろうか、と考えてしまった。高馬力のエンジンと重く頑丈な機体設計だと思う。そうだとすると、1gでも軽くするために苦労して設計していた日本機にはない要素だと思う。
p.23に、翼を外して三点姿勢で鉄道貨車に載せている写真が載っている。こういう運搬の仕方があったとは、驚いた。
p.30に、Bf109の燃料タンクが400Lであること、燃費が栄二一型エンジンが100L/時間に対してほぼ2倍の210L/時間というのも驚いた。
p.31にエンジンカバーとスピナーを外して正面から撮った写真が載っている。小さな前面投影面積がよくわかる。
Bf109はドイツ軍以外でも使われていて、フィンランド、ハンガリー、イタリア、ルーマニア、ブルガリアなどの枢軸国が使っていた。スペインやスイスのような中立国も使っていた。フランコのスペインはわかるが、永世中立国のスイスが1949年まで主力戦闘機だったというのには驚いた。
ユーゴスラビアやチェコスロヴァキアでも使っていた。チェコスロヴァキアでは、エンジンを換装して1957年まで使ったそうだ。そのチェコスロヴァキア製Bf109=S199が建国間もないイスラエルに輸出され重要な戦力になった、というのも驚きだ。
Bf109に関連が深いパイロット列伝や精密な図面があり、楽しめる特集だった。
次号の特集はティーガーI重戦車とWWIIフランス戦闘機だ。