『タクテクス』(TACTICS)誌第12号(1983/11-12)の付録ゲーム『大堡塁ーボロジノの戦い1812年9月7日ー』をソロプレイしてみた。
このゲームは1812年9月7日に行われたボロジノの戦いを描いたミニゲームだ。
ゲームスケールは1ヘクスが約500ヤード(約450m)、1ターン90分、1ユニットが1軍団だ。
デザイナーはタクテクス編集部とクレジットされている。
プレイ手順は移動と戦闘を繰り返すシンプルなものだ。
特徴的なのは、移動力と戦闘力がユニット上に記載がないことだ。
移動力は、地形にかかわらず、騎兵は3、歩兵と砲兵は2だ。
戦闘力は、ユニットによって異なり、別紙にありマーカーを置いて表す。
フランス軍の最強は15、最弱は1だ。
ロシア軍の最強は14、最弱は1だ。
フランス軍は16ユニット、戦闘力合計は124だ。単純に平均すると1ユニット7.75戦力だ。
ロシア軍は17ユニット、戦闘力合計は104だ。単純に平均すると1ユニット6.12戦力だ。
スタックは軍団規模はできない。非軍団規模はできる。
敵支配地域(ZOC)に入ったら移動停止。敵ZOCからの移動は先頭結果以外はできない。
戦闘はマストアタックで、戦闘比型の戦闘結果表(CRT)を使う。
堡塁や斜面上はかなり有利だ。
戦闘の結果は、戦闘力減少と後退で表される。攻撃側もかなりの確率で戦闘力減少がある。
勝利条件はフランス軍が35勝利得点(VP)以上獲得した上で、ロシア軍よりVPが多いと勝利する。VPの獲得は敵軍を戦闘力がある一定水準以下になる大損害状態にし、その後1損害ごとに1VPを得る。フランス軍親衛隊が戦闘に参加するとロシア軍にVPが入る。
本誌が発売された1983年冬にマップとユニットをコピーし、色を塗って厚紙に貼って自作してプレイした思い出の小品だ。
その時は、激しいつぶしあいになったことを覚えている。
今回、自作マップとユニットをオークションに出品している方がいたので、購入した。
とても美しいマップとユニットだ!またホンノリといい香りもしていた。
ユニットの初期配置がしやすいように、ヘクスに番号をつけ、ユニットの後ろにヘクス番号を記載した。戦闘結果表には地形効果を追記した。
果たして今回はどうなるか?
【0】初期配置
【1】第1ターン(1812/09/07 0600)
フランス軍が前進を開始した。
下手に接敵するとマストアタックで戦闘を強要されるので、まずは離れておいた。
ロシア軍は防衛線を固める。
【2】第2ターン(1812/09/07 0730)
フランス軍が前進しボロジノ村の他4カ所で攻撃する。
ボロジノ村を守るJgs-Rは壊滅した!
フランス軍がボロジノ村を占領した。
バグラチオン突角堡手前の第VIII軍団を攻撃したダヴーの第1軍団は後退した。
0613の堡塁を攻撃したミュラーの騎兵隊がJgs-Lに損害を与えた。
0613の丘の上を攻撃したポニャトフスキーの第V軍団は損害を受けて後退した。
ロシア軍は北からボロジノ村奪還を狙って旋回する。
【3】第3ターン(1812/09/07 0900)
フランス軍は全戦線にわたって攻勢をかける。
ボロジノ村近くにいたグルーシィーの第III騎兵軍団は一旦退く。
フランス親衛隊が手薄な北に向かって移動する。
フランス軍が5カ所で攻撃する。
ロシア軍第VIII軍団が後退した。
ロシア軍Jgs-Lが壊滅した!
この辺りの部隊はステップ数が小さいのですぐに壊滅する。
ロシア軍の増援が登場する。
0613のロシア軍第III軍団がフランス軍第I騎兵軍団と第V軍団を撃退した。
【4】第4ターン(1812/09/07 1030)
フランス軍は北方のロシア軍と戦おうと部隊を集める。
ダヴーの第I-R軍団が損害2を受けた。
バグラチオン突角堡(0709)の7GDが壊滅した!
ロシア軍第IV騎兵軍団が後退した。
フランス軍第III軍団が前進しラエフスキー角面堡に取り付いた。
ロシア軍も北方で攻勢をとる。
だが、戦力が低くてあまり大きな戦闘比にならない。
グルーシィーのフランス軍第III騎兵軍団が大損害を被った。ロシア軍が3VP獲得だ。
ロシア軍第2GDが壊滅した!
ロシア軍のGDは親衛隊だと思うが戦闘力が低い!!
【5】第5ターン(1812/09/07 1200)
フランス軍が北方の森にこもるロシア軍を攻撃する。
しかし森で守っているので戦闘比が左に1列ずれる。
ロシア軍第III軍団が大損害になった。フランス軍も第V軍団が大損害になった。
ラエフスキー角面堡(0706)でロシア軍がフランス軍を撃退した。
北方ではロシア軍第II軍団が大損害になった。
ロシア軍は北方でフランス軍第IV-R軍団を包囲して攻勢をかける。
このゲームは、堡塁以外で隣接している敵を攻撃するのが義務のマストアタックなので低い戦闘比でも攻撃しないといけない。
ロシア軍第III軍団が壊滅した!
フランス軍第IV-R軍団が大損害になった。
ロシア軍第IV軍団が大損害になった。
【6】第6ターン(1812/09/07 1330)
フランス軍親衛隊が戦闘に参加すると、ロシア軍は勝利得点(VP)を獲得する。
ロシア軍が2VPを獲得した。
北方で激戦だ。
現在フランス軍は23VP
現在ロシア軍は24VP
【7】第7ターン(1812/09/07 1500)
フランス軍は北方で野戦、中央で堡塁を攻撃する。
ロシア軍も北方での野戦に応じる。なんとかフランス軍を包囲する。
ロシア軍がラエフスキー角面堡の直前にいたフランス軍第III軍団を斜面下に撃退した。
北方でロシア軍第II、第VI軍団が全滅した!
フランス軍31VP
ロシア軍34VP
【8】第8ターン(1812/09/07 1630)(最終ターン)
いよいよ最終ターンだ。
フランス軍は勝利のために攻撃をかけるしかない。
ロシア軍第IV軍団壊滅
ロシア軍第II騎兵軍団壊滅
ロシア軍第IV騎兵軍団が壊滅した!フランス軍に7VPが入った!
フランス軍が逆転した!!
フランス軍43VP
ロシア軍36VP
ロシア軍は再逆転のために前進する。
夕闇が迫ってきた頃、両軍ともに疲労困憊し戦いをやめた。
フランス軍48VP
16ユニット中16ユニット全てが残った。
大損害を出しているのは9ユニットだ。
ロシア軍39VP
17ユニット中10ユニットを失い7ユニットが残った。
残った7ユニット中、大損害を出しているのは4ユニットで、無傷の部隊はゼロだ。
【9】勝利条件の確認
フランス軍48VP
ロシア軍39VP
フランス軍は35VP以上獲得した上で、ロシア軍より勝利得点が多いので、フランス軍の勝利!
【10】感想
●戦闘結果
ロシア軍は17ユニット中10ユニットを失い7ユニットが残った。
残った7ユニット中、大損害を出しているのは4ユニットで、無傷の部隊はゼロだ。
フランス軍は壊滅したユニットはゼロだったが、16ユニット中10ユニットを失った。
大損害を出しているのは9ユニットで無傷なのは親衛隊の3ユニットしかない。
翌日、ロシア軍は後退しただろう。フランス軍には追撃する力は残っていなかった。
史実ではラエフスキー角面堡をフランス軍が占領したが、今回はロシア軍が守り通した。
フランスは後退したロシア軍を追って広大なロシアの平原をモスクワに向けて進むのだった・・・。
●ゲーム全体の感想
マストアタックで敵ZOCからの移動が戦闘結果以外はできないため、隣接するとダイスの振り合いでつぶしあいになる。
後退できないように相手を包囲すればラクに勝てるが移動力が小さい上、戦場が狭いので、なかなか包囲できない。
私は『戦争と平和』や映画『ナポレオン』と『タクテクス』(TACTICS)誌の連載記事『大陸軍の光と影』くらいしか、ナポレオン戦争についての知識がないが、ナポレオン時代の戦争の雰囲気がよく表現されている、と思う。
このゲームは、ユニット上に戦闘力の記載がないので、戦場の霧がうまく表現されている。眼前に部隊があるから、相当強いかと思ったら、意外と戦闘力がなかったり、接敵すると予想以上の強敵だったりする。
対人戦だと戦力表は、お互いに相手に見せないでプレイするのが面白いだろう。
難点はどの部隊が判別しにくことだ。ローマ数字のVIIIとVIIは違いが見にくいし、歩兵と騎兵で同じ番号があるのも間違いやすい。
戦力表は兵科順、数字の小さい順になっていると、探しやすい。
今回、スタック・ルールを正しく適用し忘れた。本当は軍団規模はスタックできないが、非軍団規模ユニットはスタックできるのだ。
そのため、両軍とも砲兵をうまく活用できなかった。
次回プレイするときには正しく適用したい。
●フランス軍の感想
フランス軍は南部では完勝できた。
中央部では堡塁に攻撃をかけたがなかなか突破できなかった。
北部では野戦にロシア軍が応じてくれ、ロシア軍を壊滅させることに成功した。
フランス軍としては中央部の堡塁での突破は難しそうだ。
可能ならば北方から回り込みラエフスキー角面堡を背後から攻略したいところだ。
親衛隊の投入のタイミングも悩ましい。ロシア軍にVPを与えるし親衛隊は意外と強くない。今回は投入のタイミングは最適だったと思う。
●ロシア軍の感想
ロシア軍は北部で攻勢に出て、あと一歩でフランス軍第IV軍団を壊滅させるところまでいったが、惜しかった。
中央部ではバグラチオン突角堡は失ったが、ラエフスキー角面堡を守り切った。
ロシア軍は攻勢に出ずに、コロチャ川東岸と堡塁にこもる作戦の方がよかったのだろうか?
次回、その作戦を試してみたい。