このシナリオは、アメリカ軍第82空挺師団の戦域の戦いを再現したショートシナリオだ。
このゲームのデザイナーの石川輝氏が『タクテクス』第14号(1984/03/01)の「橋は遠すぎない!〈HJ〉"マーケットガーデン作戦"コンメンタール」で詳細な作戦研究をしている。今回その記事を元に取り得る作戦を研究しながらソロ・プレイしてみた。
なお、シナリオでは地図盤IIだけ使用となっているが地図盤Iのワール川南岸を使用可とする。
また航空支援ポイントを各ターン1ポイントとした。
他の戦場でも航空ポイントを使うため、全体のうち1ポイントのみとした。
前々回、前回と米第82空挺師団の空中補給点をドイツ軍が占領したので、今回の米軍は占領されないよう部隊の展開に注意して今度こそ勝利を得られるようにしようと思う。
■初期配置
ドイツ軍はわずか4部隊。攻撃力3防御力5
第1ターン6部隊攻撃力13防御力14
第2ターン8部隊攻撃力18防御力20
第3ターン11部隊攻撃力26防御力28
対するアメリカ軍第82空挺師団
第1ターン11部隊攻撃力21防御力31
第4ターン15部隊攻撃力31防御力39
アメリカ軍の勝利条件は次のとおり。
①フラーフェ橋(4811-4911)とフラーフェ(4711)の占領
②マース・ワール運河にかかる5個の橋のうち1個の確保
③ナイメーヘン橋(5914)とナイメーヘンの合計8ヘクスの占領
④空中補給点の保持
①については第504空挺連隊の2個大隊を向かわせる。第2ターン以後補給切れになるので第1ターンにフラーフェを確保したい。
4-1→奇襲効果5-1なので58.3%の確率で壊滅できるはずだ。
②については、504連隊の1個大隊でマルデン橋(5115)経由ユメン(5017)からモーレンホック橋(5117)を狙う。5320から505連隊の1個大隊をモーレンホック(5117)に向かわせる。
4-1→奇襲効果5-1なので58.3%の確率で壊滅できる。後退不可能にすれば72.2%の確率で壊滅できる。
③④については、第508連隊を何部隊ナイメーヘンに送り、何部隊で空中補給点を守るか決断に迫られる。前回は3部隊をナイメーヘンに送り、空中補給点に向かわせ失敗した今回は失敗しないようにしないと。
また対戦車砲部隊と砲兵隊も5113に降下した後ナイメーヘンに送る。
P/Qから進入するドイツ軍の援軍は、
第1ターンは1ユニット、4攻撃力、4防御力。
第2ターンは2ユニット、5攻撃力、6防御力。
第3ターンは3ユニット、8攻撃力、8防御力。
合計で、6ユニット、17攻撃力、18防御力だ。
対する米軍は、
第505連隊が、3ユニット、6攻撃力、9防御力。
第506連隊が、3ユニット、6攻撃力、9防御力。
合計、6ユニット12攻撃力18防御力だ。
最終的には互角だ。
仮に、第508連隊の1個大隊と5113に降下する対戦車方部隊がナイメーヘンに向かったとすると、ナイメーヘンの戦闘は、第1ターンは4-1→奇襲効果5-1だ。ナイメーヘンは都市なので地形効果レベルが5のため、損害なしが75%。ステップロスで壊滅できる確率はわずか8.3%、後退させるのも8.3%だ。
仮に、第508連隊の2個大隊と5113に降下する対戦車方部隊がナイメーヘンに向かったとすると、ナイメーヘンの戦闘は、第1ターンは6-1→奇襲効果7-1だ。ナイメーヘンは都市なので地形効果レベルが5のため、損害なしが33%。ステップロスで壊滅できる確率は41.7%、後退させるのも16.7%だ。
ナイメーヘンには、ドイツ軍の強力な第9SS師団第9装甲偵察大隊(6-5-7)が第1ターンに到着するので、第1ターンに確実に占領しなければ、勝利条件の達成が難しい。
そのため第508連隊からは2個大隊をナイメーヘンに送ることにする。
また、第505連隊からの1個大隊と第504連隊からの1個大隊で勝利条件②を狙う。
従って、空中補給点を守るのは第508連隊の1個大隊と第505連隊の2個大隊の合計3個大隊、攻撃力6、防御力9だ。
あれっ?それだと前回と同じだ。
そこは守備位置を変えることと、勝利条件②達成後速やかに空中補給点防衛に戻ることにするか・・・。
いや、砲兵部隊を5013ではなく5520に降下させて空中補給点を守ることにする。
■第1ターン(1944/09/17 PM)
アメリカ軍第82空挺師団が降下する。
第504連隊は3個大隊全て降下成功だ。
第505連隊も3個大隊全て降下成功だ。
第508連隊も3個大隊全て降下成功だ。
空挺砲兵と対戦車砲兵も降下成功だ。
第504空挺連隊の2個大隊(完全戦力の第1、第2大隊)がGrave橋(4811-4911)を確保し、フラーフェGrave(4711)の守備隊を攻撃する。
第504連隊第3大隊がマルデン橋(5115-5216)に迫る。
ドイツ軍による5115-5216の橋梁爆破が失敗した。
Uターンしてユメン(Heumen)(5017)に向かう。
5017-5117の橋梁爆破が失敗した。
5320に降下した第505連隊第2大隊が5218に向かい、モーレンホック(Molenhock)(5117)のドイツ軍守備隊を第504連隊第1大隊とともに包囲攻撃する。
5113に降下した対戦車砲部隊がナイメーヘン(Nijmen)に向かう。
5313-5414の橋の爆破成功!
5612-5613の橋の爆破成功!
5812-5813の橋の爆破失敗!
勝利条件②マース・ワール運河にかかる5個の橋のうち1個の確保を達成した。
第508連隊の2個大隊がナイメーヘンに向かい、ナイメーヘン守備隊を包囲攻撃する。
砲兵部隊は空中補給点とナイメーヘンを砲撃できるように5617へ移動する。
第505連隊の2個大隊(第1,第2大隊)と第508連隊第3大隊で空中補給点を守備する。
ウィレル(Wyler)(5821)とフルースベルグ(Grouesbeek)(5420)の町と5521の荒地で戦線を作りドイツ軍を待ち受ける。
フラーフェ(4711)は、奇襲効果[17.1]で5-1でダイスは4、D5だ。ドイツ軍フラーフェ対空砲部隊壊滅。
連合軍がフラーフェ占領し、勝利条件①を達成した。
ナイメーヘン(5914)は奇襲効果と航空ポイントで8-1でダイスが8だ!結果はD5!
ドイツ軍ナイメーヘン守備隊が壊滅し、米軍がナイメーヘンの橋(6014-5914)南詰を占領した。
勝利条件③ナイメーヘン橋(5914)とナイメーヘンの合計8ヘクスの占領もほぼ達成確実だ。
モーレンホック(Molenhock)(5117)は奇襲効果で5-1だ。ダイスは6。結果はD4だ。
ドイツ軍守備隊が壊滅したので、勝利条件②マース・ワール運河にかかる5個の橋のうち1個の確保を達成した。
青いマーカーを置いたヘクスは連合軍占領ヘクスだ。
アメリカ軍第82空挺師団長は、まずは奇襲が成功したことにホッと胸をなで下ろした。
ドイツ軍は、第9SS装甲師団第9SS装甲偵察大隊がレント(6014)に到着し、ナイメーヘン(5914)に接敵する。戦闘比が1-1なのでアメリカ軍のみに損害を与える可能性は0だ。両者損害あり(EX)が5.6%だ。
ドイツ軍は攻撃しても損害が大きいので攻撃しない。
第406保安連隊の2個大隊で、アメリカ第505連隊第2大隊を包囲した。
荒地1で戦闘比は1-1なので、後退やステップロスは16.7%、攻撃側のドイツ軍のステップロスは36.1%、両者損害あり(EX)は5.6%、損害なし41.7%だ。
5521の戦闘でダイスは9、結果はA1(1)!
第406保安連隊第2大隊がステップロスし、ドイツ軍の両大隊が後退した。
■第2ターン(1944/09/17 夜間)
フラーフェ(Grave)(4711)にいるアメリカ軍2個大隊が非補給下になった。
フラーフェ(Grave)にいる米軍2個大隊は地図盤右に向かう。空中補給点との距離が10ヘクス以内に近づくのと、Qから進入するかもしれないドイツ軍に対抗するためだ。
モーレンホック(Molenhock)(5117)を攻略した第504連隊第1大隊と第505連隊第3大隊はQからのドイツ軍の侵入に備える。
ナイメーヘンを攻略した対戦車砲大隊はナイメーヘン市街の残りを占領した。
これで、勝利条件③ナイメーヘン橋(5914)とナイメーヘンの合計8ヘクスの占領を達成した。
ドイツ軍としては、勝利条件①フラーフェ橋(4811-4911)とフラーフェ(4711)の占領は、遠すぎるので難しそうだ。
勝利条件②マース・ワール運河にかかる5個の橋のうち1個の確保は、4921に陣取られていて進めそうにない。しかし、たった1個大隊だから、兵力を集めれば可能性はありそうだ。
勝利条件③ナイメーヘン橋(5914)とナイメーヘンの合計8ヘクスの占領は、無理だろう。
勝利条件④空中補給点の保持もこうがっちりと守られたら難しそうだ。
ドイツ軍はレント(Lent)(6014)にいる第9SS装甲師団第9装甲偵察大隊以外の部隊を地図盤外に離脱させた。次のターンの増援と合わせて、4つの勝利条件のうちのどれかを狙って、一気に攻勢をかけるつもりだ。
■第3ターン(1944/09/18 AM)
アメリカ軍はフラーフェ(Grave)(4711)攻略部隊を移動させて補給下にさせる。
対戦車砲大隊をナイメーヘンから5220へ移動させて戦線を張る。
第504連隊第1大隊は守りやすい荒地2の4919へ移動する。
ドイツ軍は地図盤外にいる7ユニットを全力投入する。
ドイツ軍は第101補充訓練大隊がフラーフェ(Grave)(4711)目指して全速前進する。
次のターンにはフラーフェ(Grave)(4711)に突入できる。
その他の部隊は4919の第504連隊第1大隊に向かって突進する。狙いはモーレンホック(Molenhoek)(5117)だ。
4919の戦闘は、戦闘比3-1でダイスは6 結果はD2だ。荒地2なので効果なしだ。
■第4ターン(1944/09/18 PM)(最終ターン)
最終ターンだ。アメリカ軍の増援が降下する。
第320空挺砲兵大隊と第80対戦車砲兵大隊第2中隊は5014と4913に降下しフラーフェ(Grave)(4711)を守る。
第319と第456空挺砲兵大隊は5520に降下して4920に砲兵支援する。
全部隊が降下成功した。
アメリカ軍はフラーフェ(Grave)(4711)に鉄壁の守りを敷いた。
ドイツ軍の勝利の可能性がなくなったのでここでゲーム終了とする。
■勝利条件の確認
連合軍は①②③の勝利条件を満たしたが、④は満たせなかった。
①フラーフェ橋(4811-4911)とフラーフェ(4711)の占領
②マース・ワール運河にかかる5個の橋のうち2個(5812-5813)(5017-5117)の確保
③ナイメーヘン橋(5914)とナイメーヘンの合計8ヘクスの占領
④空中補給点の保持
以上4条件を確保したので、アメリカ軍の勝利だ。
■感想
第1ターンでナイメーヘンを落とすことに成功したので連合軍はほっとした。
その後、空中補給点を完璧に守り切った。
ドイツ軍は地図盤外からフラーフェ(Grave)(4711)やマース・ワール運河にかかる5個の橋のうちの1個(5017-5117)を狙ったが、(5812-5813)もアメリカ軍が確保していたので、仮に(5017-5117)を確保しても勝利はなかった。
第3ターンでは、空中補給点を狙うべきだった。
だが、アメリカ軍は薄いとはいえ戦線を張って、空中補給点を守っていたし砲兵隊による支援もできたので、ドイツ軍の勝利の可能性は薄かっただろう。
少し距離があって遠いが、フラーフェ(Grave)(4711)をドイツ軍が狙う作戦があることに、今回気づいた。ここを守るアメリカ軍はどうしても補給切れになるので、うまいタイミングで攻撃できるとドイツ軍としては可能性があるだろう。
両軍にとってなかなか厳しい勝利条件のシナリオだ。
小さなシナリオだが部隊展開について考えさせられる面白いシナリオだ。