Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

第一次ソロモン海戦バトル・レポート(『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ))

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『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ)のボックスアート

 1942年8月7日、米軍海兵隊ガダルカナル島に上陸を開始した。

 上陸船団を壊滅させるために、第八艦隊が殴り込みをかけることとした。戦力は、重5隻(鳥海、青葉、加古、衣笠、古鷹)、軽巡2隻(天龍、夕張)、駆逐艦1隻(夕凪)の計8隻。

 

 2347 水上機が投下した照明弾により戦場が明るくなると青葉、衣笠の主砲が火蓋を切り戦闘が始まった。

 

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2347 第一次ソロモン海戦の開始

 

 2350 鳥海、青葉の放った魚雷が重巡キャンベラ、駆逐艦パターソンに命中した。駆逐艦パターソンは一瞬で沈没した。重巡キャンベラに大量の海水が浸水し速度が半減した。米軍駆逐艦バグレイが放った魚雷が駆逐艦ジャービスに命中してしまい、駆逐艦ジャービスが沈没してしまった。反対側に友軍がいるときには魚雷を発射してはダメなのに急な夜戦で混乱したようだ。

 先頭の旗艦重巡鳥海に米軍の砲撃が集中し、火災が発生。

 

 2353 急に速度を落とした重巡キャンベラに、後方から重巡シカゴが追突してしまった。ターンの最初の移動は1ヘクス直進しなければいけないので、隣接して後ろにいる艦は、前の艦が速度を落とすと、避けようがないのだ。

 重巡青葉の放った魚雷が駆逐艦ヘルムに命中し一撃で撃沈。

 今度は重巡青葉と駆逐艦バグレイが衝突。バグレイが沈没した。シートに移動を記入した後、同時移動のため、接近戦になっていると意外と衝突が発生する。

 重巡鳥海には米軍の砲撃が集中し火災が延焼する。重巡加古の魚雷発射管にキャンベラの主砲弾が命中し火災発生。

 敵味方入り乱れて、近くにいる敵艦をとにかく砲撃する。

 

 2356 傷ついた重巡キャンベラを重巡衣笠、重巡古鷹が砲撃を加えてとうとう沈めた。重巡ビンセンズ、クインシー、アストリアに魚雷が命中し激しい浸水により移動力を奪った。重巡加古の砲弾が重巡ビンセンズの機関室に命中し、航行不能に追い込んだ。

 重巡鳥海の火災はどんどん延焼する。加古は火災を鎮火させることに成功した。

 

 2359 米軍の増援で、駆逐艦ラルフ・タルボットとブルーが参戦。

 重巡クインシーがビンセンズに追突しビンセンズが沈没。接近戦での激しい砲撃戦が続く。

 

 日付変わって1942年8月9日0002、重巡シカゴに駆逐艦夕凪の放った魚雷が命中し撃沈。駆逐艦アストリアには重巡衣笠の放った魚雷が命中し撃沈。駆逐艦ウィルソンには、重巡青葉の放った魚雷が命中し撃沈。

 至近距離で魚雷を放つと命中率が高いし効果も大きい。

 鳥海は火災を1カ所鎮火させた。

 

 0005 加古の放った魚雷が重巡クインシーに命中し、撃沈!!

 このゲームの場合、艦船・魚雷の移動実行=>魚雷命中判定=>砲撃戦解決=>魚雷損傷判定という順序なので、ターン終了前に魚雷で沈むことになる艦が、最後の砲撃できてしまう。選択ルールの移動セグメントを利用すると、移動=>魚雷命中判定=>移動の継続(場合によっては魚雷発射もできる)=>砲撃=>魚雷損傷判定となってしまい、矛盾が生じる。移動セグメントを利用する場合、魚雷命中したらその場で魚雷損傷判定するべきだろう。

 

 0008 米軍の増援で、史実では登場しなかった東方艦隊が参戦。軽巡サン・ファン、ホバート駆逐艦モンセン、ブキャナンだ。この時点で、日本軍は、重巡衣笠1隻の損失に対し、一方、米軍は重巡シカゴ、アストリア、クインシー、ビンセンズ、キャンベラの5隻、駆逐艦ジャービス、バグレー、パターソン、ウィルソン、ヘルムの5隻の損失で、史実以上の日本軍の完勝といっていい状態。

 残存艦は、日本軍が重巡鳥海、青葉、加古、古鷹の4隻、軽巡天龍、夕張の2隻、駆逐艦夕凪1隻の合計7隻。米軍が重巡オーストラリア1隻、軽巡ホバート、サン・ファンの2隻、駆逐艦モンセン、ブキャナン、ブルー、ラルフ・タルボットの4隻で合計7隻で、数の上では互角だ。ただ、日本側は損傷が激しい。無傷なのは軽巡夕張一隻のみだ。重巡4隻は主砲が満足に機能しないものが多く火力は圧倒的に不利な状況だ。

 米軍は、ホバート、サン・ファン、モンセン、ブキャナンが無傷だ。

 

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無傷の東方艦隊 すぐ横を魚雷が走って行く

 史実どおりこの結果に満足して待避するか、輸送船団壊滅のためにガダルカナル島泊地に向かうか迷うところだ。

 火災で燃える重巡鳥海の艦橋で、三川中将は「輸送船団撃滅」を命令した。

 重巡鳥海は火災の影響で船体の損傷が激しくなっている。

 

0014 乱戦の結果、艦隊はバラバラになり、3カ所で激しい砲撃戦。

 戦いのダメージの蓄積が効いてきて、日本軍重巡洋艦が、青葉、鳥海と沈んでいった。重巡鳥海は火災の影響でどんどん船体が破損し浸水が増し沈没した。三川長官は沈む前に発光信号を送り、撤収を指示した。

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3カ所に分かれて乱戦

0017 重巡鳥海からの撤収命令を受けて、残った日本軍は撤収に入る。重巡加古、古鷹、軽巡天龍、夕張、駆逐艦夕凪の5隻だ。しかし、古鷹、夕凪がサン・ファンからの5インチ砲16門の集中砲撃により沈められる。砲雷撃ができなくなっている加古は撤収に成功。

 

0020 軽巡夕張に東方艦隊が放った魚雷が迫る。

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軽巡夕張に多数の魚雷が迫る!あと1200ヤード(約1100m)

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軽巡夕張に多数の魚雷が迫る!あと600ヤード(約550m)

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軽巡夕張が回頭して魚雷をかわす!!

 サマール島沖海戦で、戦艦大和が魚雷をかわすために魚雷と平行になって走ったのと同じ状況だ。『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ)では、艦首・艦尾方向だと魚雷命中確率が、大きく下がる。

 

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軽巡夕張が魚雷と併走!サマール島沖海戦時の戦艦大和と同じ状況!

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軽巡夕張がなんとか魚雷をかわした!

 一方、夕張が放った魚雷がサン・ファンに近づく!

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魚雷がサン・ファンに近づく!あと1200ヤード(約1100m)

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魚雷がサン・ファンに近づく!あと600ヤード(約550m)

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魚雷がサン・ファンに命中!

 魚雷の結果は、雷撃実行フェイズにならないと判定しないので、その前に砲撃戦。砲撃戦で、軽巡サン・ファンの砲撃で軽巡天龍がとうとう沈没。同じ軽巡でも砲撃力が全然違う。サン・ファンが5インチ(12.7cm)砲16門に対し、天龍は14cm砲4門。ゲームの火力は、17対5だから勝負にならない。本当に同時進行だったら、この砲撃の前の魚雷でサン・ファンは沈んだはずだから、天龍は生き残ったはずなのだが・・・。

 

 0023 軽巡夕張に無傷の駆逐艦ブキャナンが追走する。軽巡夕張の駆逐艦ブキャナンへの砲撃が、特殊損傷を呼び、なんと駆逐艦ブキャナンが航行不能になった。夕張はなんとか脱出成功。

 

日本軍 参加艦艇 損失 残存 VP 連合軍 参加艦艇 損失 残存 VP
重巡 鳥海 - 15 重巡 オーストラリア - 12
  衣笠 - 11   キャンベラ - 11
  青葉 - 11   シカゴ - 10
  古鷹 - 11   クインシー - 10
  加古 - 0   アストリア - 10
  - - - -   ビンセンズ - 10
重巡合計 5 4 1 48 重巡合計 6 6 0 63
軽巡 天龍 - 5 軽巡 サン・ファン - 8
  夕張 - 0   ホバート - 0
軽巡合計 2 1 1 5 軽巡合計 2 1 1 8
駆逐艦 夕凪 - 3 駆逐艦 ジャービス - 2
  - - - 0   バグレー - 2
  - - - 0   ヘルム - 2
  - - - 0   パターソン - 2
  - - - 0   ウィルソン - 2
  - - - 0   モンセン - 2
  - - - 0   ラルフ・タルボット - 0
  - - - 0   ブキャナン - 0
駆逐艦合計 1 1 0 3 駆逐艦合計 8 6 2 14
総合計 8 6 2 56 総合計 16 13 3 85

 

 0011に輸送船団撃滅に向かう判断をしなければ、鳥海、青葉、天龍、夕凪を失わずにすんだはずだ。振り切れたかどうかはわからないが、脱出できたとしたら、連合軍のVPは22。日本軍のVP85-22=63で決定的勝利だった。

 やはり史実通り、第一次ソロモン海戦については、一航過で撤収するのがよかったのだと思う。完勝した日本軍が輸送船団を攻撃していたらその後のガダルカナル戦が変わったのに、という話がよく出る。この戦い直後もその批判が出た。だが実際にやっていたら今回同様に日本軍重巡に相当の被害が出る結果になったのではないだろうか。水上戦では違っていても朝になってからガダルカナル島からの航空攻撃で少なくない被害を受けただろう。

 そうなったらなったで別の批判が出たと思う。

 

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艦種別に並べた残存艦(上)と損失艦(下)ユニット

 

 『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ)は、太平洋の夜間水上船を艦艇1隻単位でシミュレートしたゲームだ。

 

 このゲームでは遠距離砲戦、遠距離雷撃戦は、効果がないということだ。特に魚雷は、日本の酸素魚雷の長射程が生きない。舷側方向で11以上、艦首・艦尾方向だと13以上を出さないと命中しないが、射程距離が1-2ヘクスで+5、3-4ヘクスで+3、5-6ヘクスで+1、7ヘクス以上15ヘクスで0、16ヘクス以上だと-1なので、1-2ヘクスでないと命中しないと思っていい。もう少し当たる設定にしてもいいと思うのだが・・・。

 

 現代だとこういうゲームはネットの方が、ビジュアルが美しく、リアルタイム性もあり、人気があるだろう。 あえてボード上でやることの意味は、全体を把握することと、マウスやキー・ボードではなく、ユニットを動かしたりダイスを振るという触覚で、歴史を体感できることだろう。

 

 『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ)をやってみて、自艦も敵艦も動いている中で、魚雷を当てるのは本当に難しいことを実感した。狙って撃つというより、多数の射線を放って、どれかが当たることを期待するか、敵艦の陣形を崩すことを目的としたものだということがよくわかった。

 アバロンヒル社の『サブマリン』(Submarine)のように、「移動=>移動して停止したところに対して砲雷撃の命中判定する」というシステムが、最も一般的なゲーム・システムだろう。しかし、現実には、ターン終了時に停止する、ということはないわけで、実際には自艦も敵艦も魚雷も常に動き続けていて、しかも直進だけではなく、速度を変え、方向を変えているわけだ。それをボード・シミュレーション・ゲームで再現しようとすると、このゲームの選択ルールの「移動の同時性」のようにしないといけなくなる。1ターンの移動フェイズをさらに8移動セグメントに分割し、速度によって、移動できるセグメントが異なり、(ほぼ)同時に移動していく形にせざるをえない。それでも完全に正確なわけではないが、シミュレーションは現実とは異なるのでどこかで割り切らなければいけない。「移動の同時性」ルールを適用すると、プレイアビリティーが落ちて、プレイ時間が延びてしまう。だが、魚雷が自艦に向かってくる恐怖感や、敵艦に徐々に近づいていく期待感は、ボード・ゲームならでだ。「移動の同時性」を捨ててプレイアビリティーをとるのもデザイナーの考え方だ。どちらがいいかは好みの問題だ。

 『アイアン・ボトム・サウンドⅢ』(IRON BOTTOM SOUND Ⅲ)は、艦艇データを、主砲、副砲、魚雷発射管、船体、射撃指揮装置(MFC)の数、位置や装甲の質と厚さなど細かく分けている。砲弾や魚雷が当たったときの被害も細かく分かれている。そのため、戦記本のようなドラマティックな展開を味わえる。その一方、サイコロを振る回数や確認事項が増える。ディティールを重視するか、ディティールを省略して海戦全体を感じる方を選ぶかも、ゲーマーの好みの問題だ。

 夜戦における混乱する雰囲気や想定外の事態の発生、それに対処する艦長や海の兵士たちを体感できるいいゲームだと思う。