CMJ133『グレネード作戦』、HJ『オペレーション・グレネード』(Operation Grenade)では、ドイツ軍は急速増水と漸次増水を選択できる。
急速増水を選択すると、ローエル峡谷内の全ヘクスが沼沢地となる。もともと沼沢地だったヘクスは戦闘結果表で丘陵の行で戦闘結果を出す。つまり1コラムシフト攻撃側に不利になる。その代わりに1945/2/17開始となり、全16ターンとなる。
一方、漸次増水を選択すると、アメリカ軍はD-Dayをいつにするか選択する。1945/2/24を選択すると最短9ターンとなる。1945/2/17を選択すると最長16ターンとなる。その後サイコロを振り、12/24までのローエル川の流速が決まる。
奔流になると全攻撃側ユニットが川越えで攻撃する時の防御側戦闘力は4倍から5倍になる。急流だと3倍から4倍になる。通常は2倍から3倍だ。
『タクテクス』(TACTICS)誌第20号(1985/3-4)のp.52("Moves"誌60号リー・エンダーリン 小林祐司訳)には、ドイツ軍は漸次増水を選ぶべきだとある。
急速増水と漸次増水を選ぶことでどのくらい確率が変わるのか算出してみたい。
【1】第1ターンのアメリカ軍の移動
■初期配置
ドイツ軍の弱点はヘクス0110,0310,0908,1207だ。
同一師団効果が使えないことや、1ヘクスだけで攻撃を受けることになるからだ。他のヘクスだと2ヘクスで攻撃を受けることになる。
そのため、アメリカ軍は下の写真のように移動することにする。
8/7(第7軍団第8師団のこと。以下同じ)を0108->0109へ。
104/7を0308->0209
30/19を0508->0309
第19軍団の砲兵を0507->0308
第17軍団の砲兵を0307->0208
29/19を0707->0907
102/13を0906->1007
84/13を1106->1107
第13軍団の砲兵を0905->0906
この前提で計算してみた。
【2】漸次増水の時のローエル川の流速の可能性
漸次増水の時にローエル川の流速の可能性を一覧にしたのが下表である。
アメリカ軍がD-Dayを選ぶとすると、2/18,2/19を選ぶなら2/17にした方がいい。奔流や急流になる可能性が同じなら1ターンでも長い方がアメリカ軍としてはいいからだ。
2/20, 2/21, 2/22, 2/23, 2/24のいずれにするかは、この確率とアメリカ軍プレイヤーの考え方次第だろう。
奔流 | 急流 | 通常 | |
2月17日 | 50% | 50% | 0% |
2月18日 | 50% | 50% | 0% |
2月19日 | 50% | 50% | 0% |
2月20日 | 33% | 50% | 17% |
2月21日 | 17% | 50% | 33% |
2月22日 | 0% | 50% | 50% |
2月23日 | 0% | 33% | 67% |
2月24日 | 0% | 17% | 83% |
2月25日 | 0% | 0% | 100% |
2月26日 | 0% | 0% | 100% |
2月27日 | 0% | 0% | 100% |
2月28日 | 0% | 0% | 100% |
3月1日 | 0% | 0% | 100% |
3月2日 | 0% | 0% | 100% |
3月3日 | 0% | 0% | 100% |
3月4日 | 0% | 0% | 100% |
【3】戦闘比の可能性
【1】の移動をした場合の戦闘比の可能性を下表にまとめた。
戦力比については以前調べたこちらを参照。
「最小」は、戦力チットが攻撃側が最小、防御側が最大のときだ。
「平均」は2列あるが、左は戦力チットが平均で、コラムシフトが攻撃側にとって最低のとき。右は戦力チットが平均で、コラムシフトが攻撃側にとって最高のときだ。
「最大」は、戦力チットが攻撃側が最大、防御側が最小のときだ。
急速増水の場合、もともと沼沢地の場所が丘陵の行を使うが、ここでは全て沼沢地の場合の戦闘比に換算している。
調べてみて、戦力チットによってかなり戦力比に振れ幅があることに今さらながら驚いた。
急速増水 | 漸次増水 | |||||||||||||||
通常 | 通常 | 急流 | 奔流 | |||||||||||||
ヘクス | 最小 | 平均 | 平均 | 最大 | 最小 | 平均 | 平均 | 最大 | 最小 | 平均 | 平均 | 最大 | 最小 | 平均 | 平均 | 最大 |
0110 | 2-1 | 3-1 | 6-1 | 9-1 | 3-1 | 4-1 | 7-1 | 10-1 | 1-1 | 4-1 | 7-1 | 10-1 | 1-1 | 3-1 | 6-1 | 9-1 |
0310 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 8-1 | 1-2 | 2-1 | 6-1 | 9-1 | 1-4 | 1-1 | 6-1 | 7-1 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 7-1 |
0908 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 8-1 | 1-2 | 2-1 | 6-1 | 9-1 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 8-1 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 7-1 |
1207 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 8-1 | 1-2 | 2-1 | 6-1 | 9-1 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 8-1 | 1-3 | 1-1 | 5-1 | 7-1 |
1008 | 1-3 | 1-1 | 4-1 | 7-1 | 1-2 | 2-1 | 5-1 | 8-1 | 1-2 | 2-1 | 5-1 | 7-1 | 1-2 | 2-1 | 5-1 | 7-1 |
ヘクス0110で考えてみると、
急速増水を選んだ場合、最小2-1、最大9-1だ。平均は3-1から6-1だ。
漸次増水で急流の場合、最小1-1、最大10-1だ。平均は4-1から7-1だ。
漸次増水で奔流になると最小1-1、最大9-1になる。平均は3-1から6-1だ。
大雑把に言うと、漸次増水にすると、1コラム防御側に有利になると、思うといい。
2コラムシフト相当あるならば迷わず漸次増水を選ぶだろうが1コラムシフトだと悩ましい。
それもサイコロと戦力チット次第ではあるが・・・。
ドイツ軍からみると、漸次増水だと1コラムドイツ軍に有利になるが、ゲームターンが短くなる可能性がある。急速増水だと確実に16ターンになるが、ローエル峡谷内の全ヘクスが沼沢地になり、沼沢地だと機甲部隊が道路移動以外できなくなる。
アメリカ軍からみると、漸次増水のときのD-Dayをいつにするか非常に悩むところだ。
私ならコラムシフト1列の違いなら時間をとって2/17をD-Dayにする。このゲームでは、アメリカ軍にとって、時間が最大の味方だからだ。
少しでも渡河時点の損害を減らすために、待つのもありだと思う。悩ましいところだ。
この辺のジレンマがこのゲームの面白さだと思う。