Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

【参考文献】田村尚也『イラストでまなぶ!用兵思想入門 近世・近代編』ホビージャパン(2021/03/31)(その2)


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もくじは次の通り
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前回、全体については以下にまとめたが、本書で一番驚いたのが、第一次世界大戦の戦車戦術についてだ。

haruichiban0707.hatenablog.com

 

おかげで、菱形戦車(正確には平行四辺形戦車だが)による塹壕線突破戦術がどういうものだったのか、なぜあんな形状になったのかがとてもよくわかった。

 

当時想定していた戦い方は次のとおりだ。

「①最前列の「前衛戦車」が・(中略)・鉄条網などの障害物を踏みつぶして後続部隊の通路を切り開く。そして、第一線塹壕に近づいたら90度旋回する。」

 

ここまで読んだ時、「え?なぜ90度旋回するの?そのまま突破して敵陣の後方まで進撃するのでは?」と思った。

 

その後、「塹壕に沿って移動しつつ、壕内の敵兵を機関銃で掃射して後続の「主力戦車」の塹壕超越を掩護する。」と続く。

この文章を読んで「へ~。だから90度旋回したのか。」と納得した。

 

だが、イラストによる説明が続き、ビジュアルを見て、より納得できた。イラストがあったからよりよく理解できたと思う。

 

また、よく菱形戦車が薪のようなものを積んでいる写真を見たことがあるが、あの使い方も全然理解できなかった。

そもそも名前も知らなかった。

 

「②つぎに後列の「主力戦車」の左右どちらか1輛が、「前衛戦車」の切り開いた通路を通って敵の第一線塹壕の縁まで移動し、粗朶束(そだたば)を投下。その上を通って塹壕を超越したら、90度旋回して第一線塹壕の”後方側”から壕内の敵兵を機関銃で掃射。」

 

下のような感じだ。(本書のイラストはもっとずっと上手でわかりやすい)

なるほど~。だから菱形戦車は側面に砲や機関銃を装備したのだ!!

 

驚いた二点目はドイツ軍のいわゆる「電撃戦」だ。

①航空部隊が飛行場や司令部や通信施設や後方集結地を攻撃し、指揮系統を混乱・麻痺させたり、地上軍の前線への移動を阻止したりする。

②装甲部隊が拠点は歩兵部隊に任せて迂回し後方への迅速な前進をし、敵主力を包囲、指揮系統を寸断する。

従来は歩兵の進撃速度が基準だったが、これを戦車を基準とした速度で、実施したのが「電撃戦」だ。

第二次世界大戦のドイツ軍が初めて実施したのだが、この用兵思想の元になったのが、「浸透戦術」だったのだ。本書を読むと、「電撃戦」は「浸透戦術」を実現するために戦車やハーフ・トラックや急降下爆撃機などのハードウェアを実装したものにすぎないように思えた。

浸透戦術は、次のとおりだ。

①攻撃準備射撃を実施し敵歩兵の制圧、指揮通信系統を麻痺させる。

②煙幕に遮断された戦場を小部隊に分かれて、敵部隊の弱点を突いて前進する。

③敵戦線のわずかな隙間から敵戦線の後方に向かって前進する。

④後続部隊が残された敵拠点を包囲する。

 

①を急降下爆撃機や砲兵が、②③を装甲部隊が、④を歩兵が、戦車の速度で実施したのが「電撃戦」だとよくわかった。

 

続きの「現代編」も楽しみだ。