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ソ連赤軍の歴史をまとめたムックの全3巻中の第2巻だ。この巻では、大粛清から第二次世界大戦前半までをまとめている。
p.7 ソヴィエト赤軍興亡史II 1936~43
スペイン内戦・ハサン事件(張鼓峰事件)・ハルビン=ゴール事件(ノモンハン事件)・独ソ不可侵条約締結・ポーランド侵攻・ソ=フィン戦争・独ソ戦(バルバロッサ作戦からスターリングラード反攻までを写真・図・解説文でわかりやすく説明している。
p.40 スペイン内戦への軍事支援 文/山崎雅弘
p.48 粛清された赤軍の中枢 文/守屋純
p.56 帝政ロシア領回復を狙うスターリンの膨張政策 文/守屋純
p.64 「バルバロッサ」からモスクワ前面の反攻へ 文/山崎雅弘
p.76 最大の危機から生まれたスターリングラードの勝利 文/山崎雅弘
図や写真や解説がわかりやすくまとめている。
p.49のレーニンとスターリンの写真だが、スターリンの顔は別人の顔にスターリンの顔を合成したのではないか?
p.101 図解[大祖国戦争]ソヴィエト赤軍の戦術・戦法 文・イラスト・図版 樋口隆晴
戦車部隊の攻撃法・タンク=デサント・ソ連流野戦築上術・パルチザン戦について、図がわかりやすい。
p.112 特別図説 チェーカーからKGBまで 文/平井友義
p.172 赤軍を勝利へと導いた軍事諜報機関「GRU」の実像 文/山崎雅弘
ソ連秘密政治警察の変遷が図になっていてわかりやすい。
T-34・KVシリーズ・T-60・航空機・潜水艦・小銃・河川砲艇などについて解説している。
一番驚いたのはプロペラ推進式自走ソリであるアエロサンだ。ASLに登場したら面白い存在だ。
日本を始めとした帝国主義諸国による干渉戦争の経緯がわかりやすい。ソ連ができた時、ポーランドが白ロシアやウクライナに侵攻し、ソ連赤軍がそれを押し返したのは知らなかった。大陸国家は、ちょっと油断すると、隣国が攻め込んでくる恐ろしさを改めて感じた。
p.138 「状況証拠」が暗示する赤軍「対独先制攻撃計画」の存在 文/守屋純
1941年中にソ連が対独先制攻撃を持っていたとしたら、バルバロッサ作戦をヒトラーが1941年6月22日に始めなかったら、どうなっていただろう。歴史のifとして、ウォーゲームで試してみたいテーマだ。
p.142 赤軍はなぜ反攻に転じられたのか?スターリンの誤謬を克服したソ連の「耐久力」 文/平井友義
p.143に「主要国の潜在的戦争能力・工業生産高・人口の比較」という表がある。
その表の数値を元に、順序を入れ替え、連合軍・枢軸軍の合計を加えたのが下の表だ。
潜在的戦争能力をどうやって出したのかはよくわからない点があるが、米ソがいかに大国だったかよくわかる。
日伊の小ささもよくわかる。
潜在的戦争能力(1937) | 工業生産高(1938) | 人口(万人) | |
アメリカ | 41.7 | 28.7 | 13880 |
ソ連 | 14 | 13.2 | 19710 |
イギリス | 10.2 | 9.2 | 4760 |
フランス | 4.2 | 4.5 | 4190 |
連合軍合計 | 70.1 | 55.6 | 42540 |
ドイツ | 14.4 | 17.6 | 6850 |
イタリア | 2.5 | 2.9 | 4380 |
日本 | 3.5 | 3.8 | 7220 |
枢軸軍合計 | 20.4 | 24.3 | 18450 |
p.148に「ソ連に対する西側連合国の軍事援助(1941~45年)という表がある。
その表を元にA/Bを%に直したのが下の表だ。
A/Bがその割合だ。英米の援助が意外と少ないこと、逆に言うと、ソ連の生産量の凄さに、驚いた。
品目 | (A) | 単位 | (B)ソ連の生産量 | 単位 | A/B |
自動車 | 401,400 | 台 | - | 台 | - |
大砲 | 9,600 | 門 | 489,900 | 門 | 2% |
飛行機 | 15,000 | 機 | 136,800 | 機 | 11% |
戦車・自走砲 | 12,200 | 台 | 102,500 | 台 | 12% |
野戦電話器 | 422,000 | 台 | - | 台 | - |
毛織物 | 69,000,000 | 平方メートル | - | 平方メートル | - |
機関車 | 1,860 | 両 | - | 両 | - |
食料 | 4,300,000 | t | - | t | - |
靴 | 15,000,000 | 足 | - | 足 | - |
p.149 ソヴィエト赤軍指揮官列伝 文/山崎雅弘
ジューコフ・チュイコフ・ヴォロシーロフ・シャポシニコフ・パヴロフ・ティモシェンコ・エリョーメンコ・ブジョンヌイについて、その生い立ちや生涯を簡潔にまとめている。
p.159 「赤い星」の海軍 文/瀬戸利春
第二次世界大戦のソ連海軍については全然聞いたことがなかったが、3艦隊(バルト海・黒海・太平洋)に分かれていたこと、潜水艦大国だったこと、大粛清の影響があったこと、大和級の次に巨大な戦艦を造る計画があったことなどがよくわかった。
p.177 「関東軍特種演習」幻に終わった対ソ戦計画 文/田村尚也
どんどん開いていく極東ソ連軍と関東軍の師団数の差。質の面でも大きな違いがあった。
ドイツ軍によるバルバロッサ作戦の成功を見て、関東軍特種演習による大動員が始まったが、対ソ戦を始めなくてよかったと思う。