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ソ連赤軍の歴史をまとめたムックの全3巻中の第3巻だ。この巻では、第二次世界大戦後半以降をまとめている。
p.31 DOCUMENT
1. 1942~43年冬期大攻勢とその挫折 文/山崎雅弘
2. クルスク会戦とドニエプル渡河作戦 文/山崎雅弘
3. ウクライナ、クリミア、レニングラードをめぐる戦い 文/山崎雅弘
4. 「バグラチオン作戦」と東欧への進撃 文/山崎雅弘
5. ベルリン最終戦と欧州の分断 文/山崎雅弘
1942年の冬期大反攻から対日戦争までの概略を写真や戦況図を交えてわかりやすく説明している。
p.103 The Tactics of the Red Army 1941-45 文/イラスト 樋口隆晴
赤軍砲兵の歴史と戦術に関して、イラストと解説がわかりやすい。
シュトルモヴィクの攻撃についてもわかりやすい。
第二次世界大戦後の冷戦期におけるソ連軍の組織図や兵力や配備状況や兵器についてわかりやすい解説だ。
p.136 [検証1]「大祖国戦争」がソ連に与えた影響とは? 文/平井友義
第二次世界大戦でソ連の人命の損失は、はっきりしないが、2660万人という。それでいて、火砲も戦車も軍用機も、膨大な数を生産していたことに驚くばかりだ。
しかし、ドイツ軍捕虜になった自国兵士に対する扱いはひどい。
スターリンの息子ヤーコフが1941年7月に捕虜となり、ドイツが赤十字を通して捕虜交換を申し入れたが、スターリンが拒否した。ヤーコフの妻ユーリアは逮捕された。ヤーコフは収容所を転々とし、1943年4月監視兵の銃撃で死んだ。
息子に甘くすると示しがつかなくなるのでスターリンはそうしたのだろうが、戦争の悲劇だ。
また、少数民族に対する扱いもひどい。
p.144 [検証2]スターリンの戦時外交はなぜ成功したか? 文/守屋純
第二次世界大戦で最も損害があったが、最も得をしたのが、ソ連だろう。東欧を自国の緩衝地帯にして東側諸国の盟主となった。
その原因になったのが、第二次世界大戦末期のルーズベルトとチャーチルとスターリンの会談だろう。
スターリンは独ソ単独講和をほのめかすことで米英の譲歩を引き出していた。
p.157 ソヴィエト赤軍指揮官列伝(2) 文/山崎雅弘
ワシレフスキー、ワトゥーティン、ロコソフスキー、アントーノフ、コーニェフ、バグラミヤン、マリノフスキー、チェルニャホフスキーらの略歴をまとめている。大粛清で全ての歯を失ったロコソフスキーや、ウクライナ人のマリノフスキーやアルメニア人元帥のバグラミヤンなど個性あふれる将軍達の話が興味深い。
p.170 ロシア解放軍と自由ドイツ国民委員会 文/山崎雅弘
p.176 「スターリンの外人部隊」東欧諸国軍それぞれの戦い 文/守屋純
独ソ戦のウォーゲームだと戦力の小さい東欧諸国ユニットだが、それぞれ複雑な背景があって戦っていたことに驚く。大国の周辺にいる中小国は大国のご機嫌を伺ったり、大国に強制されたりしながら、したくもない戦場で、たった一つの命を賭けて戦わなければいけなかった。
世界史の教科書に載らないことだが、こういう歴史を学ぶことは、大国のすぐ傍にいる日本人にとって、大事なことだと思う。