国際通信社の『ドイツ装甲軍団1』には「スモレンスク攻防戦」「マーケット・ガーデン作戦」「ガザラの戦い」の3本が同梱されている。
今回はその中から「マーケット・ガーデン作戦」をプレイしてみた。
本ゲームのゲーム・スケールについては、1ヘクスの距離は記載がない。他の『ドイツ戦車軍団』ルールのゲームが1ターン1日程度だが、本ゲームの1ターンは10日間。ユニットの規模は、機甲/装甲ユニットは連隊、歩兵は師団だ。
ルールは、『ドイツ戦車軍団』のルールに空挺作戦ルールを追加したものだ。
ルールを読んで驚いたのは、タイトルが「マーケット・ガーデン作戦」なのに空挺部隊のルールがあまりに軽いことだ。防御の時に3戦闘力あるが、攻撃力はなく、移動力は0だ。空挺部隊があることのメリットは、他のユニットが空挺部隊がいるヘクスを横切るときに、そのヘクスが大河の場合、余計な移動ポイントを払わなくていい、というものだ。
『遠すぎた橋』の影響で、空挺作戦は華々しく効果が大きいイメージがある。
しかし重武装ができない空挺作戦の効果は、アイゼンハワーのような上級指揮官の視点でみると、この程度なのが真実かもしれない。
初期配置
第1ターン(1944/9月上旬)
ドイツ軍先攻だから連合軍登場ヘクスを封鎖する。
「こんなヒストリカルでないゲーム的な手でいいのだろうか?」と思ったが、後で痛い目にあう。
連合軍プレイヤー・ターン
ドイツ軍が連合軍登場ヘクスを封鎖していたが杞憂だった。むしろ、早々にドイツ軍を壊滅させるチャンス到来だ。
2532でドイツ軍第331歩兵師団、米軍第4歩兵師団相撃ち。
2535でドイツ軍第47,48歩兵師団壊滅。
2437でドイツ軍第712歩兵師団壊滅。
2037でドイツ軍第89歩兵師団壊滅。
1136でドイツ軍第70歩兵師団壊滅。
0536でドイツ軍第346歩兵師団壊滅。
ドイツ軍は初期配置に失敗した、と悟った。
一気に7個師団を失ってしまった。
第2ターン(1944/9月中旬)
1833でドイツ軍第226歩兵師団壊滅。
1234でドイツ軍第64歩兵師団、英軍第53歩兵師団相撃ち。
1034を攻撃した英軍は撤退。
0834でドイツ軍第59歩兵師団、英軍第50歩兵師団相撃ち。
両軍の損害
第3ターン(1944/9月下旬)
ドイツ軍は初期配置の失敗と第1ターンの損害が大きすぎた。
セダン(2428)でドイツ軍第345歩兵師団壊滅。同市陥落。
0928でドイツ軍第708歩兵師団壊滅。
0725でドイツ軍第719歩兵師団壊滅。英軍がアントワープ(1023)に迫る。
0525でドイツ軍退却。英軍が補給マークヘクス4個占領。
ダンケルク(0433)でドイツ軍第711歩兵師団壊滅。同市陥落。
両軍の損害
第4ターン(1944/10月上旬)
2421でドイツ軍第49歩兵師団と米軍第26歩兵師団相撃ち。
2426でドイツ軍第353歩兵師団壊滅。
ナミュール(1824)でドイツ軍第155装甲師団、米軍第Fr2Arm機甲師団相撃ち。同市陥落。
シャルルロア(1727)でドイツ軍第85歩兵師団壊滅。
アントワープ(1023)でドイツ軍退却。同市連合軍占領。これで補給制限[6.7]解除。
両軍の損害
第5ターン(1944/10月中旬)
2318でドイツ軍第246VG歩兵師団壊滅。
米軍がドイツ国内に進撃してきた。
1420でドイツ軍第344歩兵師団退却。
1520でドイツ軍第6LW歩兵師団壊滅。
1422でドイツ軍第256VG歩兵師団壊滅。
1121でドイツ軍退却。
0822でドイツ軍第84歩兵師団、英軍Pol1Arm機甲師団相撃ち。
英軍が恐れていたことが起こった。
ドイツ国内への進撃で先を越されたモントゴメリーがいよいよマーケット・ガーデン作戦を開始した。
米軍第82空挺師団はナイメーヘン(1014),第101空挺師団はケルン(2212)に、英軍第1空挺師団はアルンヘム(0912)に降下した。
第6ターン(1944/10月下旬)
このターンから主導権が連合軍に移った。
連合軍地上部隊ががナイメーヘン(1014)、ケルン(2212)に迫る。
アーヘン(2117)でドイツ軍第363VG歩兵師団壊滅。同市陥落。
1317でドイツ軍第91歩兵師団壊滅。
1219でドイツ軍第344歩兵師団壊滅。
トゥルンホルト(1120)で、ドイツ軍第180,190歩兵師団壊滅。
0822でドイツ軍退却。
地図上にドイツ軍ユニットがわずか2個になってしまった。そのうち1個は混乱状態だ。
連合軍の勝利得点
(1)アントワープの開港 5点
(2)ライン渡河 0点
(3)ドイツ国内の都市 空挺師団の配置場所はドイツ軍支配下の都市は禁止だったのでケルン(2212)は占領できなかった。
アーヘン(2117)、デューレン(2115)、ボン(2413)で2.5。あと0.5足りず勝利得点なし。
(4)ハーグ 支配していないので0
4.3 部隊の損耗
ドイツ軍機械化部隊3×3=9
14点
ドイツ軍
英軍部隊2×3=6
米軍部隊1×3=3
合計9点。
14-9=5
連合軍勝利
感想
ドイツ軍の守りは最低だった。
マーケット・ガーデン作戦が実施されたのは第2ターン(1944/9月中旬)だがその頃はとてもアルンヘムに向けて実施できる状態になかった。
史実だともっと前進していたはずだが、ドイツ軍は損害は大きかったが連合軍の進撃を抑えてはいたのだ。
このゲームはマーケット・ガーデン作戦を扱ったゲームというより、米英連合軍によるドイツ国内への進撃をテーマにしていることがよくわかった。
このゲームの地図盤やゲーム・ルールを見て、マーケット・ガーデン作戦に対する評価・視点が大きく変わった。
空挺作戦は航空機やグライダーの大量動員、高い士気の隊員達、空から奇襲で降ってくる大量の落下傘など、派手だ。一方、重砲や大型車両を運搬できず、鈍足な輸送機やグライダー、ふわふわ降りてきて対空砲火で狙いやすい落下傘など、すぐに地上部隊と連携しないと、とても弱い兵科だ。作戦上の効果も橋の電撃的な確保や敵の背後に降下して敵を妨害するなど、限られている。
マーケット・ガーデン作戦が、映画『遠すぎた橋』のような派手な作戦ではなく、ドイツ国内に進撃する連合軍の作戦の一部でしかない、ことがよくわかった。ドイツ国内に進撃するためには、補給を十分にして、マーケット・ガーデン作戦はやらない方が作戦としては有益だったのだろう。
マーケット・ガーデン作戦の本質を理解するために本ゲームはおすすめだ。
初期配置を変えてドイツ軍の作戦を変えて何度もプレイしてみたい。