国際通信社の『コマンドマガジン』第169号を読んでみた。
付録ゲームはSPI社『イエナ・アウエルシュタットの戦い』(The Battle for Prussia, 14 October 1806)だ。デザイナーは、Thomas Walczyk, Frank Davis氏。
このゲームはもともとSPI社が出版しホビージャパン社『タクテクス』第41号(1987/04)で再版された。
今回はそのリメイク版だ。
ヘクスの対辺の長さが15mmから20mmになった。
それによって、マップが427mmx551mmから594mmx841mm(A1)に拡大された。
ユニットのデザインがシルエットとイラストの二種類が含まれている。
所々に置いたのは『タクテクス』版のユニットだ。イラストのユニットがとても美しい。
ユニットを切ってプレイするのが楽しみだ。
青文字は私の感想だ。
目次は次の通り
p.4 プロイセン劇場の三段階 文/岩永秀明
付録ゲームの『イエナ・アウエルシュタットの戦い』(The Battle for Prussia, 14 October 1806)は、ナポレオンアットウォーシステム(NAWシステム)の一つだ。
流動型の戦闘システム、マストアタック、リジッドZOCの組み合わせだ。
流動型の戦闘システムとは戦闘結果表の大半が後退であり全滅が少ないものだ。
リジッドZOCとは敵ZOCにいるユニットは戦闘結果でないと敵ZOCから脱出できないことだ。
『イエナ・アウエルシュタットの戦い』(The Battle for Prussia, 14 October 1806)のリプレイ記事だ。
自分がプレイする時の参考にしたい。
p.12 歴史ノート マレンゴからイエナ・アウエルシュタットまでの足跡 文/宮永忠将
付録ゲームの『イエナ・アウエルシュタットの戦い』(The Battle for Prussia, 14 October 1806)のヒストリカル・ノートだ。
この戦いの背景がよくわかる。
p.20 ミランダ風”味変"? Emperor's First Battles 文/倉元栄一
DG『イエナ・アウエルシュタット』(Emperor's First Battle)はAusterlitzと2 in 1の、"もう一つの"『イエナ・アウエルシュタット』だ。ウォーゲーム低迷期の1995年に出版された。デザイナーはJoseph MirandaでNAW(Napoleon At War)シリーズにフォーメーションとコマンド・コントロールや士気、スタック、戦場の摩擦、ランダム・イベント、射程を持つ砲兵や逆襲する騎兵などのルールを加えたものだ。
なかなか魅力的なゲームだとわかる。
p.28 復讐を誓う老虎 アウエルシュタットのブリャッヒャー 大木毅
ブリャッヒャーのアウエルシュタットの戦いまでの半生。1742年ポンメルンの貴族の家に生まれ、1758年スウェーデン軍シュパルレ軽騎兵連隊に入隊。1760年捕虜となるが親戚が敵軍の連隊長だったためプロイセン軍に引き取られる。7年戦争後プロイセンのフリードリヒ大王の逆鱗に触れ軍を退いた。1787年大王死後、軍に戻る。1795年バーゼル和約が結ばれると軍を退いた。
フランス革命が起こると軍に戻り、イエナ=アウエルシュタットの戦いでは苦戦するが一番難しい退却戦で主力の後退を助け、リューベックで降伏し捕虜となる。
その後、ライプツィッヒ会戦やワーテルローの戦いで活躍する。
なんと浮き沈みの激しい人生だろう。スウェーデン軍に入隊し、プロイセン軍に移る、という点は、現代の国民軍の感覚からは、当時のヨーロッパの感覚がよくわからない。
p.32 ゲームから本へ、本からゲームへ 第87回ダヴー将軍と『ナポレオン 覇道進撃』 桂令夫
長谷川哲也『ナポレオン 覇道進撃』(少年画報社)の紹介。この漫画は知らなかったが、ナポレオンの戦いを知る上でぜひとも読んでみたい。
p.40 シミュレーションゲーム批判序説 孤独な巨人、ジム・ダニガンのシミュレーションとゲーム Part7 高梨俊一
空戦ゲームの歴史を紹介している。
空戦ゲームにはさすがにダニガンは手を出していないだろう、と思っていたが、実は、空戦ゲームもダニガンのデザインによる影響が大きい。だが、ダニガンは空戦ゲームにはあまり興味がないようだ。
空戦ゲームの紹介と歴史を俯瞰した良記事だ。
p.46 ON TO MOSCOW CORAL SEA 諸岡幸治
紙ペンゲームと言われるカテゴリのゲーム。「Roll and Write Games」と呼ばれる記入型シートとペン、サイコロだけで遊べるゲームだ。Worthigton Publishingの『ブックゲーム』シリーズ7作品中の2個を紹介している。
なかなか面白そうなゲームだ。
p.50 第一次世界大戦航空機列伝 その9 文/宮永忠将 イラスト/伴義之
今回取り上げたのは、Airco DH.1/DH.2とその設計者デ・ハヴィランドだ。
この飛行機は推進式(プロペラが後ろに向いている)のユニークな機体だ。
佐貫亦男氏のエッセイでとり上げていたせいで、私は大好きな機体だ。
FG『Age of Dogfithts WW1』の追加シナリオもある。
このゲームのユニットでこの機体を探したときに最初は、見つけられなかった。想像以上に翼幅があり全長が短くて、気づかなかったのだ。
設計者のデ・ハヴィランドに関する話が面白い。
p.56 F-16 Fighting FALCON 追加シナリオ 篠原史也
2002年の日本を舞台にした仮想戦シナリオだ。なんとF16J対F15改の戦いだ。プレイするのが楽しみだ
p.58 地中海戦史 第112回 重巡トレントの最後 八木田和男
地中海の戦いはほとんど知らなかったが、この連載を読み、ぜひ、関連するゲームをプレイしてみたくなった。意外とイタリア軍頑張ってるのでイタリア軍でもプレイしてみたいものだ。
p.62 ウォーゲーム・メカニクス 第17回帆船ゲーム 堀場亙
帆船ゲーム低迷期の命中判定、損害判定についての考察。
同じようなテーマでも比較すると移動や戦闘のメカニズムが異なることがよくわかる。
帆船ゲームなので士気は大事な要素だと思う。
デザイナーが何を表現したいか、ゲーマーに何を感じてもらいたいかでメカニズムが変わるのだろう。
p.68 野獣げぇまぁ拡大版[第72回]「リプレイ」のこれから 徳岡正肇
「リプレイ」=棋譜なのにあらためてこのタイトルや文中の「リプレイ文化」とは何だろう?と思って読み始めた。
ここでのリプレイは、ゲームのプレイを物語として書き起こしたものを指すようだ。
そしてそれが発展して商業的になり、映画や小説になり、ヒット作も生まれているとのことだ。
「現代に至ってリプレイという文化は「ゲームのプレイ記録」を越え、表現手法(ないしプロセス)のひとつに至っていると評価するのが妥当であろう。」ということだ。
これは驚いた。私の知らないうちにそんなことが起こっていたのか!?確かにゲームをプレイしている最中の脳内はまさに映画であり小説でもあるからそれをアウトプットできれば、と考えたこともあった。ラリー・ボンド氏の小説はウォーゲームそのものだと思ったこともあった。
「コスパ」とリプレイの論考はアナログゲーム産業のビジネスとして興味深い。
ゲーム人口>ゲーム販売数>追加データ集(シナリオ、アドオン、サプリメント)というのがアナログゲーム産業の構図だ。
しかしリプレイは入念なテストプレイが不要なためこの構図にあてはまらない。
もしかしたらゲーム人口をも上回る可能性もある。だが、現代ではこの「生産性」も損なわれている。試聴に耐えうるリプレイ動画を作るにはコストがかかるからだ。
「アナログゲーム産業はそろそろ真剣に、リプレイよりも生産性の良い新コンテンツ提供手段を考えたほうが良いのかもしれない。」
という徳岡氏の言葉は興味深い問題提起だ。