Strategy & Tactics 第77号の付録ゲーム『奇襲空挺部隊』(Paratroop)は3個の空挺作戦ゲームがついたお買い得なものだ。後にSPI社からボックス版が発売され日本でも販売された。短時間で空挺作戦の雰囲気が味わえる傑作ゲームだ。
今回は、その中の一つである『クレタ』(Crete)のバトル・レポート(AAR)だ。
常識的に考えると、空挺部隊を分散降下させず集中降下させた方が、損害が少なく戦果を上げやすい。しかし、このゲームは西、中央、東の3個の地図盤に分かれていて、地図同士の連絡路出口を、ユニットがZOCにしていると地図間移動ができなくなるというルールがある。そのため、1個や2個の地図に集中降下すると、連合軍が地図の連絡路を封鎖する作戦をとったとき、ドイツ軍はそれ以上進撃できなくなってしまう。これを私は地図間連絡ゾーンブロック作戦と名付けた。
haruichiban0707.hatenablog.com
この作戦を連合軍にとられないようにするには、ドイツ軍は、兵力が少なくなりリスクが高くなるのだが、3個の地図全てに降下しなければならない。
今回のバトル・レポート(AAR)は、3個の地図全てに降下したときの戦いの一つである。
第1ターン(1941/05/20)
ドイツ軍はマルメ空港近くに第3降下猟兵連隊、レティムノンに第2降下猟兵連隊、イラクリオン近くに第1降下猟兵連隊が、予定どおり降下成功。降下突撃連隊は、第2ターンに降下することにした。
史実では、マルメに降下突撃連隊、カニア(スーダとマルメの間にある政庁がある都市。このゲームでは勝利ポイント対象外)に第3降下猟兵連隊が降下した。午後、レティムノンに第2降下猟兵連隊、イラクリオンに第1降下猟兵連隊が降下した。このゲームは1ターン1日なので第1ターンに全13部隊が4箇所に降下したことになる。
第2ターン(1941/05/21)
降下突撃連隊の4個大隊もマルメ空港近くに降下成功。
イラクリオンでの戦闘でEeの結果が出てしまい、第1降下猟兵連隊の2個大隊が全滅。英軍も2個大隊全滅。イラクリオン攻略がかなり苦しくなってしまった。レティムノンではオーストラリアの1個大隊が全滅。
英軍はイラクリオンで反撃する。
30対6=5対1 サイコロの目は6。Ee。ドイツ軍第1降下猟兵連隊は3個大隊が全滅した。英軍も2個大隊を失った。英軍はイラクリオンの防衛に成功した。
第3ターン(1941/05/22)
レティムノンでは第2降下猟兵連隊が空港に突撃。Ju88やHe111の空爆援護もある。24:12=2:1で全力攻撃。サイコロの目は3。Ca。オーストラリア軍は12:18=1:2で限定攻撃する。サイコロの目は4。Ae。オーストラリア軍3個大隊全滅。ドイツ軍2個大隊が戦闘後前進してレティムノン空港を奪取。
マルメ空港の方は、3箇所で戦闘。
0503は12:4=3:1。0504は24:4=6:1。0303では12:2=6:1。
0503のサイコロは、4。Ca。ニュージーランド軍撤退。ドイツ軍がマルメの町を占領。
0504のサイコロは1。De。ドイツ軍戦闘後前進。
0303のサイコロは4。De。ドイツ軍戦闘後前進。これでマルメ空港は42:15で次ターンに攻撃できる。史実と違い、0404の107高地で闘いが発生していない。
英軍はイラクリオン防衛に成功したので、7個大隊26戦闘力がレティムノンに向かう。
レティムノン空港ではオーストラリア軍が12:12=1:1で限定攻撃をかけて奪回を狙うがサイコロの目は6でNe。
第4ターン(1941/05/23)
ドイツ軍第85山岳猟兵連隊第1大隊がレティムノン空港に着陸し、すぐオーストラリア軍と戦闘に入る。21:3=7:1。サイコロの目は4。De。
どれだけ戦闘後前進するか迷う。1個大隊だと次の着陸時の増援が1個大隊だけだが、2個大隊が前進すると次のオーストラリア軍の反撃に耐えられるか不安だ。今回の戦闘後前進は安全を見て1個大隊だけ。
マルメ空港近では、50:15=3:1。空軍全力飛ばしても59で1戦闘力足りない。
サイコロの目は4。Ca。ニュージーランド軍に撤退の選択肢はない。15:12でマルメの町(0503)に限定攻撃で反撃。サイコロの目は。Ne。ニュージーランド軍はマルメ空港を守れた。
英軍がイラクリオンを守備した英軍がレティムノン空港周辺に現れた。
4011を23:6=3:1で全力攻撃。
サイコロの目は5。Ee。第85山岳猟兵連隊第1大隊全滅。2個大隊戦闘後前進していたら1:1でCaだったが、そうすると1:1で反撃するから少なくとも部隊全滅は免れただろうがそうすると3913から空港に残った1部隊に攻撃があったからそちらがどうなったかはわからない。
マルメ奪回のために19:12=1:1の限定攻撃。サイコロの目は6でNe。連合軍はNeでもいいので、限定攻撃の戦闘結果表を使った戦いは有効だ。
第5ターン(1941/05/24)
第85山岳猟兵連隊第2大隊がレティムノン空港に着陸。すぐに戦闘に入る。
マルメもレティムノンも戦闘力があと1不足している。
レティムノン空港が、18:14=1:1で限定攻撃。サイコロの目は1でCa。英軍は退却するとドイツ軍が戦闘後前進してその後山岳猟兵部隊が着陸するから退却しないで戦闘。14:18=1:2で限定攻撃。サイコロの目は3でCa。ドイツ軍は1:1で限定攻撃。サイコロの目は5でNe。
膠着状態になった。
マルメ空港は50:15=3:1。サイコロの目は1。De。ついにマルメ空港を占領した。
ニュージーランド軍は、マルメ空港奪回に向けて反撃を試みる。
16:8=2:1で全力攻撃。サイコロは3でCa。ドイツ軍は0402に8:4=2:1で全力攻撃で反撃。限定攻撃だとEeの確率が1/2。全力攻撃だと1/3だからだ。サイコロの目は3。Ca。ニュージーランド軍は4:8=1:2で全力攻撃。サイコロの目5でAe。
レティムノン空港周辺では、英軍とオーストラリア軍が29:18で全力攻撃。
サイコロの目は2でEe。ドイツ軍は第85山岳猟兵連隊第1大隊と第2大隊、第85山岳猟兵連隊第2大隊が全滅した上、戦闘後前進で空港も失った。連合軍は英軍2個大隊、オーストラリア軍3個大隊を失った。
第6ターン(1941/05/25)
マルメ空港に第100山岳猟兵連隊第1大隊と第2大隊が着陸。すぐに戦闘に入る。
62:24=2:1。全力攻撃。サイコロの目は1。De。107高地を奪取。マルメ空港周辺から連合軍を完全に駆逐した。ニュージーランド軍は全滅。
レティムノン空港では、第2降下猟兵連隊第3大隊による最後の空港奪取攻撃が実施された。15:8=1:1で限定攻撃。サイコロの目は1でCa。英軍は8:6=1:1で全力攻撃。全力攻撃なら1/2の確率でEeで、ドイツ軍を全滅させることができる。1/6の確率で英軍の全滅もあるが1/2は魅力だ。サイコロの目は5。Ae。英軍全滅。ドイツ軍がレティムノン空港を奪還した。
第5ターン終了時の状況
ドイツ軍VP106点 連合軍VP42点。損害はドイツ軍7大隊。英軍10大隊。オーストラリア軍10大隊。ニュージーランド軍9大隊。
残余部隊はドイツ軍10大隊。他に7大隊が未着陸。68戦力と未着陸42戦力で合計110戦力。英軍は2大隊6戦力。オーストラリア軍2大隊3戦力。ギリシア軍10大隊30戦力。合計14大隊39戦力。
第6ターン
第85山岳猟兵連隊第3大隊、第100山岳猟兵連隊第3大隊がレティムノン空港に着陸。第14山岳猟兵連隊の3大隊がマルメ空港に着陸。
レティムノン空港周辺はドイツ軍による掃討戦が始まった。
4113は20:4=5:1でサイコロの目4でDe。3813は12:2=6:1でサイコロの目3でDe。
スーダでは、20:24=1:2で限定戦闘。サイコロの目5でNe。1706では18:16=1:1で限定戦闘。サイコロの目5でNe。
第7ターン(1941/05/26)
第146山岳猟兵連隊の3個大隊が無事レティムノン空港に着陸。そのままイラクリオン空港の攻略に進撃する。
スーダ郊外の戦闘は、72:16に空軍8戦力飛ばして、80:16=5:1。サイコロの目は1。De。
スーダは陥落寸前だ。
第8ターン(1941/05/27)
ドイツ軍5個大隊がイラクリオン空港の奪取に向かう。スーダを守るギリシア軍3個大隊はドイツ軍11個大隊に包囲された。
72:24=3:1。全力攻撃。サイコロの目2。De。ドイツ軍戦闘後前進でスーダ占領。
イラクリオン空港はドイツ軍5個大隊が英軍1個大隊を包囲。30:4=7:1。サイコロの目は2でDe。ドイツ軍がイラクリオン空港も占領。
残存部隊は、ドイツ軍は18個大隊116戦力。ギリシア軍4個連隊9戦力。オーストラリア軍が2個大隊3戦力。合計6個大隊12戦力だ。
第9ターン(1941/05/28)
ドイツ軍は残敵掃討に入る。
2706は12+6空軍:3=6:1 サイコロの目5。Ca。ギリシア軍撤退。
2709は8:1。サイコロの目1。De。
2712は16+8空軍:6=4:1。サイコロの目は3。De。
2714は18:6=3:1。サイコロの目は5。Ee。
第10ターン(1941/05/29)
ドイツ軍による残敵掃討戦が続く。
2705は20(+1空軍):3=7:1。サイコロの目は4。De。
2715は28:4=7:1。サイコロの目は5。De。
連合軍は壊滅した。
敵部隊を全滅させて得た勝利ポイントは、ドイツ軍が146点。連合軍が48点。
飛行場が5x3=15点がドイツ軍。
スーダが10点がドイツ軍。
146+15+10=171点。
171-48=123点。
ドイツ軍の決定的勝利。
損耗部隊は以下のとおり。
残存部隊は以下のとおり。
ドイツ軍降下猟兵連隊は13個大隊中5個大隊の損失だった。損耗率は38.5%に達した。
山岳猟兵部隊は12個大隊中3個大隊の損失で損耗率は25%だった。
全体では25個大隊中8個大隊で32%の損耗率だった。史実が30.2%だったからそれ以上の損耗率だった。
連合軍は史実以上の大損害を出して全滅してしまった。
感想
連合軍
緒戦はイラクリオン空港でドイツ軍を殲滅し、レティムノン空港でもドイツ軍を全滅寸前にまで追い詰めたのだが、レティムノン空港での第2降下猟兵連隊第3大隊最後の突撃に対する反撃で、サイコロの目5を出したとき、潮目が変わった。1:1で限定攻撃をしておけば時間の問題で第2降下猟兵連隊第3大隊は全滅しただろう。
その後は、マルメに増援に行くのもありだし、中央と東の地図の守備に徹するのも一つだった。
今回の初期配置では、降下したドイツ軍に即攻撃できるようスタッキングした。しかし、降下してきても連合軍ユニット上になるように、なるべく平地に薄く配置するのも一案だと思った。連合軍ユニット上に降下するとドイツ軍は不利な戦闘をしなければならないからだ。また戦闘にならなくても空港までの距離が遠いので、遅滞戦術をとることができる。空港占領が少しでも遅れるとドイツ軍は苦しくなるので、空港までのヘクスを連合軍ユニットでうめておくのは一つの作戦だろう。次回試してみたい。
ドイツ軍
やはり3個の地図全部に降下すると兵力が薄くなって苦戦する。
しかし、2個連隊あるとその地図は占領できる(今回の場合は西の地図)ので、残りの2個の地図では兵力を失わないように攻撃し、連合軍の地図移動を防ぎ、2個連隊が降下した地図からの援軍を待つのも一つの作戦だと思った。
簡単で流動的な展開を楽しめるゲームだ。