Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

『コマンドマガジン』 第163号を読んでみた


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国際通信社の『コマンドマガジン』第163号を読んでみた。

付録ゲームは『Strategy & Tactics』第326号に掲載された『MUKDEN 1905』の完全日本語化『奉天』だ。デザイナーはタイ・ボンバ氏。

 

p.4 奉天会戦 なぜ日本軍はロシア軍の包囲殲滅に失敗したのか? 長南政義

司馬遼太郎の『坂の上の雲』の影響で、乃木希典の第3軍がダメダメで奉天会戦でもチンタラ動いていて、ロシア軍を取り逃がした、と思っていた。

だが本当は第3軍の進撃は順調で隣の第2軍との間に約20kmの間隙ができたため、満洲軍総司令部が1905年3月3日1時45分、停止命令を出したのだ。その時、正面のロシア軍は混乱状態の実質二個師団だったから、停止しなければ包囲殲滅できた。

3月7日には満洲軍総司令部が「第3軍の進撃が緩慢だから猛進せよ」という命令が下されたが、その時にはロシア軍が防御を固めていたのだから、第3軍関係者は腹立たしかっただろう。

乃木希典ロンメルやパットンだったら進撃継続したのだろうなぁ・・・。

 

p.10 『奉天』リプレイ 謎解き!ムグデンの旅! 岩永秀明

いきなりバイクの話で始まる。ピーキーかフラットか、という話だ。クセがあって乗りこなすのが難しいじゃじゃ馬か、安定していて乗りやすいが面白みのない馬か、ということのようだ。今号の付録ゲーム『奉天』(MUKDEN)は、タイ・ボンバ氏デザインのゲームで、同氏のゲームはどうやら独特のクセがあるらしい。そのため熱心なファンがいるようだ。

この記事は付録ゲームのリプレイだ。戦況写真がとても美しい。ルールはまだ読んでいないが、この記事読むとルールもよくわかる。両プレイヤーが何を考えているかがよくわかって面白い。自分がプレイするときの参考にしたい。

 

p.20 復活!男泣き戦争映画塾 山内克介

日露戦争だから『坂の上の雲

「いわゆる司馬史観に基づくドラマだが、我等のウォーゲームもある種のエンタメであって、あくまでデザイナーが見せたいものを見させられているに過ぎない。」という一文が、そのとおりだなぁ~、と思った。

 

p.21 ユニットよもやま物語 生駒望人

p.24 奉天海戦ゲーム総覧 堀場亙

奉天会戦日露戦争をテーマにしたゲームの紹介記事。それぞれのゲームの特徴がよくわかる。全部ほしくなった。

 

p.34 新シミュレーションゲーム批判序説 孤独な巨人、ジム・ダニガンのシミュレーションとゲーム 高梨俊一

Wikipedia日本語版にジム・ダニガン氏の項目がないのは驚いた。

今回はダニガン氏の60年代の活動についてまとめている。

 

他のデザイナーとダニガン氏の違いをまとめたところは興味深かった。

他のデザイナーやゲーマー<=>ダニガン氏の形で比較すると次のようになる。

 

ゲームをつくるためにシミュレーションする<=>シミュレーションしたいからゲームを作る

シミュレーションゲームはゲームを楽しむための道具<=>ゲームはシミュレーションを楽しむための道具

歴史を再現しようとする<=>歴史をRe-Creation(再創造、再構築、作り直し)

ゲームを史実に合わせる<=>合理的なシミュレーションの結果が史実と異なったら史実が間違っている

 

このダニガン評は、本質を突いているし、表現がうまい!

 

ダニガン氏が学生運動もゲーム化しているのも驚いた。

 

今回はAH『JUTLAND』以外、ほとんど知らないゲームばかりだったが、次回以後が楽しみだ。

 

p.38 NATO 諸岡幸治

1983年にVictory Gamesから発売された『NATO』がCompass Gamesからリメイクされたそうだ。当時7万5000本というVG社最高のセールスだったそうだ。7万5000本で記録的なセールスだったのかぁ、と思う。今だとどのくらいで元がとれるのだろう。

 

p.41 第一次世界大戦航空機列伝 ニューポール24 宮永忠将

この連載も必ず読む連載だ。

第一次世界大戦前後の航空機産業の状況、墜落死したニューポール兄弟、その後設計を継いだギュスターヴ・ドゥラージュ。非力なエンジンを積んだ同社の機体の限界と同社の凋落。

業界が伸びている時には多くの会社が勃興し消えていくが、同社の勃興と凋落がよく描かれている。

 

p.44 マンシュタインの血統をめぐる謎 大木毅

マンシュタインが名家の出身なのに、悪い噂が駆け巡った、とのこと。

何をもってユダヤ人とするのか、「純血」とするのか定義しようがないのにしようとすることの馬鹿馬鹿しさが、現代の視点で見るとよくわかる。

 

p.46 アーヘン、それともルール河か 山内克介

VUCAの『Crossing The LINE: Aachen 1944』の紹介記事。

作戦/戦術級ゲームという言葉は私がウォーゲームを休んでいる間にできた言葉のようだ。

下記の「(作戦/戦術級ゲームの魅力とは)再現しようとするテーマに必要な要素をどれだけ細かく分析するかという、こだわりと知的満足度にある。作戦級として省略してしまうには惜しい事象を分析してルールに落とし込むか、こうした疑問や必要性が作戦級に戦術的細かさを付け加えたり、大胆なゲーム手順を導入するという挑戦が作戦/戦術級ゲームの彩りを豊かにしている。」という言葉に、作戦/戦術級ゲームの説明が凝縮されている。

ゲームスケールは、1ターン2日から8日。1ヘクス1.2km。1ユニット大隊規模。

この後、わかりやすいルール説明がある。行動ポイントを使って行動し、行動の途中で非手番側がアクションすることもできる。なかなか面白そうなシステムのようだ。

 

p.56 地中海戦史 リバプールの死闘 八木田和男

この連載を読んでイタリア軍への見方が変わった。今回もイタリア軍が頑張っている。

 

p.60 ウォーゲーム・メカニクス ウォーゲームの移動 堀場亙

今回は隠匿移動とエンドレス・フェイズ・システム。

隠匿移動は、プロット式、ダブル・ブラインド、シングル・ブラインド、ダミー方式、ソロ・プレイ・ゲームの隠匿判定が紹介されている。シングル・ブラインド方式は初耳だがどうやるのだろう?

現実の時間は区切られていないが、ウォーゲームはプレイ可能とするために時間を区切らざるを得ない。そのため「この部分は現実と乖離する」と言う言葉は、あらためて深い言葉だと思った。

 

p.66 野獣げぇまぁ拡大版 ゲームのローカライズ 徳岡正肇

ウォーゲームは海外から入ってくるものが多い。そのため、英語=>日本語の翻訳がほとんどだったが、最近は逆に日本語=>英語、日本語=>英語=>他言語というケースも出てきている。

このことはとても嬉しいことだ。

本記事は、下記が紹介されている。ウォーゲームの翻訳ではなく、仕事で海外とやりとりする人にもとても役立つ記事だと思った。

 

DeepLやGrammarlyというツールの具体的な使い方。

自動翻訳ツールに入力するための文章の具体的な書き方。

キャッチコピーやゲーム概要はプロの翻訳家に任せた方がいいというアドバイス

 

p.68 CTCシリーズ#1『F-16』がリニューアル! 音速の戦い、再び

コマンド・タクティカル・コンバット・シリーズの『F-16』がリニューアルされるそうで、現在、絶賛開発中だそうだ。

プレイしたことはないゲームだが、これは楽しみだ。

 

p.73 三楽堂店長による新兵★通信~若手ウォーゲーマー斯く戦えり~ 戦争と平和

ボードゲームカフェのゲーム会にウォーゲーマーが乗り込んだら、「この人は非常に好戦的な危険人物」というプロパガンダが行われたという話。

「おそらく求めているのがボードゲーマーは”癒やし”であって、ウォーゲーマーは"駆け引き"にあるからではないか?」とのことだ。

なんとなく感じていたが、確かにそうかもしれない。

 

ここに載せなかった記事も面白かった。

奉天』(MUKDEN)、ゲームを早くプレイしてみたい。