Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

【参考書籍】『やっぱり勝てない?太平洋戦争』シミュレーションジャーナル (2005/07/10)

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もくじ

 

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『ゲーム・ジャーナル』誌に連載された記事をまとめたものだ。

シミュレーション・ゲーム関連の人が書いたから、数値による分析が鋭い。むしろ逆にこのように数値による分析が今までなかったのが疑問だ。シミュレーション・ゲーム雑誌の記事をまとめたものだが、大東亜戦争を語る上で、本書のような分析が必須だし、あの戦争を学ぶためにはゲーマーだけでなく必読の書だと思う。

 

p.20 運命の5分間はなかった ライター:中村徹也

二式飛行艇、潜水艦による偵察が失敗したが、仮に成功したとしても、当時のこれらの偵察能力では果たしてどれだけ効果があったか疑問だというのは、賛成だ。

「利根4号機が予定時刻通りに飛んでいたらミッドウェー海戦に勝った」という説があるが、もしそうなっていたら、予定コースには米空母は不在で、敵空母を発見できなかった、という話は図もあって納得だ。逆になんで「利根4号機が予定時刻通りに飛んでいたらミッドウェー海戦に勝った」などという説が長く流れたのか不思議だ。

ミッドウェー海戦は圧倒的に有利だった日本軍がちょっとした油断で負けた、という考えが主流だと思うが、本記事を読むと、そうではないことがよくわかる。

 

p.52 ソロモン機動部隊の戦い 空母戦の評価 ライター:森哲史

この記事は、珊瑚海海戦、ミッドウェー海戦、第二次ソロモン海戦、南太平洋海戦の日米4回の空母戦の結果を基に、①航空索敵能力、②目標到達能力、③防空能力、④攻撃能力(爆撃命中率と雷撃命中率)、⑤ダメージコントロール能力の5個の観点で定量的に日米の能力を比較したものだ。とてもわかりやすく明快にまとまっている。なんでこれまでこういう分析がされなかったのか、不思議である。

これで見ると、①航空索敵能力は、珊瑚海海戦とミッドウェー海戦では日本軍の索敵機の数が圧倒的に少ない事に驚く。②目標到達能力は4回の海戦でほぼ互角。③防空能力は米軍の方が2倍以上優れている。驚いたのが爆撃命中率と雷撃命中率だ。爆撃命中率は日本軍18%に対して米軍20%で米軍の方が上だ。雷撃命中率は互角で両軍13%。

日米空母戦の見方が変わった。

 

p.66 零戦とワイルドキャットは互角だった ライター:森哲史

零戦ヘルキャットやコルセアには苦戦したがワイルドキャットには圧勝していると思っていたが、数字を見せられると、ほぼ互角、もしかしたら零戦の方が分が悪かったのに驚いた。これも驚きの記事だった。

 

p.122 机上の空論だった戦艦大和のアウトレンジ戦法 ライター:大塚好古

p.132 実戦で暴露された日本戦艦の実力 ライター:森哲史

戦艦大和の実力や日本海軍戦艦の実力や数字で明確に示されて驚いた。

 

p.148 崩壊する帝国の戦争経済

日本の戦史で軽視されてきた海上輸送戦だが、この記事を読むと、日本の船舶不足、輸送力不足の深刻さがよくわかる。この記事を読むと、あの戦争には絶対勝てなかったことがよくわかる。個々の戦闘で勝ったとしても戦争には勝てなかっただろう。仮想戦記のようにはいかないのだ。地中海の戦いは、米英軍と独伊軍が輸送船団をめぐっての戦いだったが、太平洋の戦いでは、米軍は日本の輸送船を襲ったが、日本軍はほとんど襲うことはなかった。日本は負けるべくして負けた戦いだった、とよくわかる。

 

 

 

【更新履歴】

2024/02/06 AmazonへのiFrameタグを使ったリンクが切れたのでリンクを張り直した。