TACTICS第42号(1987/5/1)を読んでみた。
第1特集は「第三帝国」
第2特集は「機甲戦」
付録ゲームは<TSR/SPI>の『魔法の大陸』(Barbarian Kings)
砲塔の上にカタパルトがあると不便だったと思うが、この表紙はカッコよくて気に入っている。
もくじは次のとおり。
p.4 TALLY-HO ! ゲームの森から
国内ニュースに、「日本ソフトバンク」の名前があり、驚いた。ファンタジー・ゲームを販売していたようだ。
p.6 TARGET MATERIALS
20個のゲーム紹介記事。ボード・ウォー・ゲームは、12個。ウォー・ゲームの衰退が始まっていたのだとわかる。
GDW『AIR SUPRERIORITY』が紹介されている。
AH『第三帝国』(Third Reich)の記事が四本。いずれもゲーム上にユニットを並べながら読む価値ある記事だ。
<AH>"第三帝国"に置けるロシア戦線 マイケル・アンカー 野村義弘/訳 ジェネラル誌19巻4号より
ムルマンスク輸送船団、南方経由援ソ貸与、赤軍を叩け!の3本の作戦研究記事。
AH『第三帝国』(Third Reich)の独ソ戦における作戦について、よくまとめている。
”第三帝国”におけるイギリスの勝利 ロバート・ベイマ
AH『第三帝国』(Third Reich)の英軍の本土防衛に関する作戦研究記事だ。
地図盤写真が豊富でわかりやすい。
歴史は駒(チット)の目で変えられる ラリー・ブッチャー 山下優/訳
様々なケースを想定した追加の状況設定駒だ。
余は運命にも勝利する 第4版英文ルールブック36ページ
p.42 <TCR/SPI>"空戦マッハの戦い"オプション・シナリオ 丸山卓久
ちょうどこの頃、『トップガン』の一作目が公開された頃だ。そのため、『トップガン』のシーンをSPI『空戦マッハの戦い』(Air War)で再現するための拡張ルールとシナリオに戦術のヒントの記事だ。A-4E改”マングース”のデータシートもついている。
拡張ルールの一つは、相互支援。目視索敵ルール(目視維持ルール)や編隊やリーダー。二つ目が、新機動ルールで、ロール例とやスナップアップやヘクス頂点方向への移動。
戦術のヒントには、バンク方向、挟み撃ち、編隊の維持と分離、太陽の有効利用、垂直戦法、F-14側、A-4側の注意、分離戦術、サンドイッチ、増援などの編隊戦術もある。
これは、このシナリオだけでなく、空戦ゲーム全般に有益な戦術だ。
p.73 War in the East 独ソ戦史 第15回 「ウマーニ包囲戦」 山下竜二
1941年夏のウマーニ包囲戦をまとめた記事。残念だが、いったんこれで連載終了とのことだ。
p.76 Squad Leader Clinic スコード・リーダー・クイズ 問題8:シナリオ7不意打ち 回答・討論編 ジェネラル誌19巻4号 ビル・ナイチンゲール 訳/小山純一
皆さんいろいろな考え方があり、それぞれ説得力があると思う。
実際にユニット並べて考えてみたい。
これまでナポレオンものは全然プレイしたことがないが、この連載を読んできて興味が湧いてきた。
p.86 石川輝の戦術基礎講座 防御編1 防御の原則 石川輝
防御とは「地形の利用や準備の周到など待ち受けの利益によって、勢力の劣勢を補い、我の火力および逆襲などによって敵の攻撃を破砕するために行う戦術行動」と定義し、図を交えて、防御の考え方をわかりやすくまとめている。
1.後に行う攻撃のために有利な条件をつくりだす
(1)時間の余裕の獲得
(2)攻撃の支とうとなる地域の確保
(3)敵の戦闘力の減殺
2.他正面での行動に戦闘力の集中をはかりその地域の勢力を節約するための防御
3.特定の地域に対する敵の侵入を拒否するための防御
防御の利/不利
利
1.防者に有利な戦場選択
2.攻撃に比べて時間的余裕がある
3.攻撃に比べて戦闘力発揮が容易
4.戦闘力の強靱性を増し、勢力の劣勢を補える
不利
1.受動=>分散=>自由を失いやすい
2.消極的になりやすい
3.心理的に好ましくない
防御の原則
1.地形の利用
2.警戒
3.相互支援
4.全周防御 これは円陣ではない。想定している正面だけでなく、予備部隊や予備陣地や障害や火力や警戒を活用して、防衛戦を破られないようにすること。
5.縦深防御
6.組織的火力
7.組織的障害
8.柔軟性
9.主導的な戦闘指揮
p.104 SPI栄光と悲惨 全真相 佐藤弘明
あれほど勢いがあったSPI社がどういう経緯で倒産したかを書いた記事だ。
1969年頃、ジェネラル誌は2500部、Strategy & Tactics誌は1000部程度だったようだ。
アバロン・ヒル社がウォーゲームを年に1作出版するのに対し、SPI社は異なるシステムのゲームを年に20種から40種も出版していた。
1977年のSPI社のシェアは49%。アバロン・ヒル社が44%だった。
1978年にウォーゲームがブームになり、1981年にSPI社は32万セット250万ドルを売上げ、従業員61名になっていた。だが、ブームになったシミュレーションゲーム業界に新規参入者が増えたため、SPI社のシェアは12%に低下していた。
佐藤弘明氏は本文と注の中で、「ダニガンは、異なったシチュエーションには異なったシステムが必要であるという信念を持っていた」が、「シリーズ物をふやし、新システムの開発を怠った。」と書いている。ゲームという点ではそうかもしれないが、SPIの倒産は市場とビジネスという点で考えるべきだと思う。
よく従業員100名前後の頃がベンチャー企業経営の大きな壁になるというが、SPI社もそこを超えられなかったのだと思った。多数のゲームを出版するビジネス・モデルから転換しきれなかったのだと思う。
ダニガンとSPI社のおかげで今、私達がこのホビーを楽しめているとつくづく思う。
p.108 みなさんのお便り 読者コーナー
「ゲームと歴史」論、いよいよ最終回・・・!
松本直樹氏(以前は松本直極と記載されていた)、三重の村田光稔氏、岩崎孝弘氏、そして見開き2ページに及ぶ長文の山村右近氏のお便りが載っている。皆さんの熱い思いが伝わってくる。今の私は、「シミュレーションゲームとは、あくまでも歴史の一部を再現したものであり、歴史の全てを再現した(あるいはしうる)ものではない・・・それを理解した上で、過大評価することなく、過少評価することもなく、シミュレーションゲームを歴史に対する理解の一助とし、自分なりの歴史観(それがデザイナーの考えに一致するかしないかは別として)を構築し、それを自分の将来に生かしていく事が、「ゲームを通じて歴史を学ぶ」ということになる」という岩崎孝弘氏の考えに賛成だ。