Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

シミュレーションゲームマガジン『SIMULATOR』第14号(1985/03/05)

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もくじはこちら

隔月刊の『SIMULATOR』誌。当時の価格で400円。全67ページ。

前号が、1984/11/25だから約3ヶ月強の遅延。

 

p.4 作戦研究 バルジ大作戦(レック=エポック社)大平英樹

EPC『バルジ大作戦』の作戦研究だ。

このゲームは現在、国際通信社から再版されていて、その中にある『コンプリート・ガイド バルジの神話』に再録されている。『シミュレイター』誌の写真だとどのユニットがどこに配置されているか不鮮明だが、国際通信社版では綺麗に写っている。

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p.20 『アップフロント』は戦術級ゲームの革命児となるか? 中野雅晴

AH『戦闘指揮官』(Squad Leader)をカードゲームにした、という触れ込みで発売されたAH『アップフロント』(Up Front)のレビューとバトル・レポート(AAR)だ。

ルールがわかりやすく説明され、バトルレポートも簡潔でわかりやすい。

その上で、このゲームの評価をしている。

長所は(1)プレイが優しいこと (2)キャラクター・ゲーム的なプレイ感覚 (3)大胆なバクチあgできる

欠点は(1)ゲームが地味なこと (2)作戦が立てにくいこと (3)ゲームが単調なこと

 

ゲーム評論記事としては、わかりやすくて、説得力があって良記事だと思う。

 

p.28 チャレンジ ザ★クロス・ワード

今だとわかるが、当時だったら解けなかったなぁ~。

ただ、タテのカギ13とヨコのカギ16の問題がないのと、タテのカギ16に脱字があるのが、残念。

 

p.31 第1回シミュレイター・オリジナル・ゲーム・コンテスト 第一次選考を終えて 審査委員代表 黒田幸弘

3作品が残ったが、講評を読むと、選考基準に達していない作品がほとんどだったようだ。

 

p.34 OBSERVATION POST スターリングラードへの情熱 中野雅晴

Phoenix Games『Streets of Stalingrad』、Nova『Fire on the Volga』『Battle for the Factories』『Battle for Stalingrad』の開発をめぐるDana Lombardy、David Parham、John Hillの3人の物語だ。ほぼ同時期に同じ資料を元にゲーム・スケールとルールの違うスターリングラード関連ゲームを3人で作っていたそうだ。

ゲーム開発の裏話として興味深い。

 

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p.37 コンピュータ・ゲーム・クリニック 最新の国産シミュレーション・ゲーム 高田誠

『テープ アスキー』から発売された2本のゲーム紹介記事。こんな雑誌があったとは知らなかった。『アスキー』誌にはプログラムリストが載っているそうで、PC勃興期の様子を思い出した。

 

p.42 近代海戦史 軍事技術史上からの一考察 石橋孝夫

南北戦争期のハンプトン・ローズの戦いを解説。あまりなじみのない南北戦争だが、登場艦艇のイラストや簡単な地図を交えてわかりやすく解説している。

 

p.46 有坂氏の壮大なる勘違いに寄せて 中浜隆逸

『SIMULATOR』第13号に載ったTH『司政官』へのガイドに対する有坂純氏の反論への反論記事だ。

ガイドは、編集部に責任があるので、無記名とのことだ。

そして、EP制、暴動やテロに対するVPなどについて、有坂氏が前号で反論したことに反論している。EP制はもっと簡単にならないか、革命家と過激派は違うのだから、単純にテロ行為に対してVPが得られるのは、おかしい、ということだった。

 

『SIMULATOR』誌は「ゲーマーのためのゲーム評論誌」だったが、こうして実際に記事を読むと、ゲーム評論は難しいと思った。

 

p.48 「歴史小説」としてのシミュレーション・ゲーム 黒田幸弘

9号の松浦義樹氏のEPC『関ヶ原』への疑問について、デザイナーとして答えた記事だ。

 

簡潔にまとめると次のようになる。

歴史小説とシミュレーション・ゲームは歴史的事実を題材にしているが、作家やデザイナーの解釈で再構成している点で似ている。

そして、シミュレーション・ゲームでは、全ての内容を含めることはできず、誇張や省略がある。

松浦氏は「城郭から見た関ヶ原」というものだが、EPC『関ヶ原』では「参考になる」以上のものではない。なぜならEPC『関ヶ原』は戦略級・作戦級ゲームだから城郭の細部はゲームの本質にかかわらない部分だからだ。そのため論争の対象にならない。

 

この黒田氏の主張は全くもってその通りだと思う。

 

p.50 シミュレーション・ゲームの批評は可能か? 高梨俊一

シミュレーション・ゲームを批評できるのか?という疑問に始まる。

『SIMULATOR』誌の『クロス・レビュー』事件をとりあげ、批評する側、される側、読者の未熟さがあの事件の原因だった。

ゲーム批評の視点としては、ゲーム・デザイナーの意図がゲームでどこまで実現できているかという結果の評価につきる。

 

そしてデザイナーの意図とその実現がなされているかを、マイナーなゲームをとりあげて解説している。

 

今、『コマンドマガジン』誌に高梨俊一氏が「新シミュレーションゲーム批判序説」を連載しているが、これに通じるものがある。

 

p.66 編集後記 大場福満

編集長の大場福満氏が編集長をやめ、次号から140ページ予価800円になるとの報告。

 

次号からの新生『シミュレイター』が楽しみだ。