Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

【書籍紹介】堀場亙『ゲームの中の帝國陸軍』IED(国際通信社HD) (2023/09)


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コマンドマガジン第38号(2001/04)から第54号(2003/12)に掲載された同名連載記事をとりまとめ、その他のコマンドマガジン掲載記事をまとめたものだ。

連載当時からの2023年時点での変更情報も追記してある。

2023年から見ると20年以上前の古い記事をまとめたものだが、ウォーゲーム出戻りの私にとってはブランク期間だったので、知らないゲームばかり紹介されており、逆に新鮮だった。

ゲームシステムの特徴、簡単な史実、両軍プレイヤー視点での勝利のための作戦方針、両軍プレイヤーがどこに迷い悩むのかを中心に、それぞれのゲームを簡単に解説しており、とてもわかりやすい。

 

【1】CMJ042 『Battle for China

Microgame Co-op社から1999年に発売されたゲームで、デザイナーはBrian Train。『コマンドマガジン』第42号付録になった。テーマは支那事変。支那事変の本質を的確に突いた好ゲームのようだ。

 

【2】WG055/CMJ044 『OKINAWA

『Wargamer』誌55号付録で1986年に発売されたゲームで、デザイナーはRoger Nord。『コマンドマガジン』第44号付録になった。

米軍は部隊のローテーションを考えないといけないし、日本軍は反攻か持久か悩むそうだ。

当時の司令官の苦悩を追体験できそうな、幕僚会議ルールがあるそうだ。

 

【3】『Bushido Denied:The Battle of Bataan and Corregidor』

Schutze Gamesから発売されたゲームで、デザイナーはPaul Rohraugh。『バターン』と『コレヒドール』の2in1だ。見出し部分の出版年は2000年だが、本文では2001年、Boardgame geekでは2000年となっている。

本文記載のURLはアクセスできなかったが、下記サイトで£10.95で今でも販売しているようだ。

 

VirtueMart Category View SCHUTZE GAMES

 

補給がカギになるそうだ。

 

【4】AH『Guadalcanal』

1966年にアバロンヒル社が発売した作品だ。デザイナーはLarry PinskyとLindsley Schutzだ。アバロンヒル社黎明期に当時としては斬新なルールを採用したが思ったほど販売数がなかったそうだ。

2021年にWar Diary PublicationsからMike Nagel氏によるリメイク版が出たそうだ。

ガダルカナルの戦いは興味あるのでいずれは入手したい。

 

【5】3W『TARAWA The Battle of Bloody Betio』

1992年にWorld Wide Wargame社(3W)から発売され、デザイナーはMark Seamanの、タラワの戦いを描いたゲームだ。ここには陸軍は登場せず海軍陸戦隊がいたので、厳密に言うと本の題名に偽りありになる。

システムはいいが、デヴェロップ不足と堀場氏が指摘しており、ルールの改善案を提示している。これも入手して堀場氏の改善ルールでプレイしてみたいものだ。

 

【6】OKINAWA

International Teamから1981年に出版されたデザイナー不明のゲームだ。

Boardgamegeekで見ると、1979年でデザイナーはイタリア人のMarco Donadoniだそうだ。

日本軍は隠匿配置されている。日本軍は徹底防御か反撃するか試すことができそうだ。

boardgamegeek.com

【7】6A『Sakhalin 1945』

1995年に山崎雅弘デザインで、SIX ANGLES社から発売された作品だ。

古屯の町に近づくにつれて次第に円形防御にもっていけるよう心がけるのが日本軍の戦い方だそうだ。

 

【8】EPC/K2P『マレー電撃戦』『シンガポール攻略戦』

1984年にエポック社から発売され国際通信社のジャパン・ウォーゲーム・クラシックスから再版されている。

デザイナーは鈴木銀一郎、打木進太郞だ。

2023年現在これは入手しやすいゲームだろう。イベント・カードを利用している。

このゲームのテーマは「モラル」だ。

 

マレー電撃戦のおまけゲームがシンガポール攻略戦だ。デザイナーは黒田幸弘だ。

これも「モラル」がテーマで、ミニゲームだがとても面白いらしい。

 

【9】The March on India, 1944

1975年にJagdpanther社から発売されたインパール作戦をテーマにしたゲームだ。デザイナーはThomas R. Fowlerだ。インパール作戦だからやはり補給ルールが気になる。堀場氏の解説を読むとうまく簡潔にゲーム化しているようだ。

 

 

【10】DG『Red Sun, Red Star』

Mark Stilleがデザインして、1993年にDecision Games社から出版されたノモンハン事変をテーマにしたゲームだ。日本軍が戦闘や砲撃をするには支援ポイントが必要で、急襲や夜襲は支援ポイントが不要なので、日本軍は急襲と夜襲に頼らざるを得なくなるそうだ。ノモンハン事変を扱った本に書かれているような展開になりそうだ。

 

【11】PRP『Last Elephant Offensive』

Pacific Rim Publishing社から1995年に出版されたBrian L. Knippleデザインのインパール作戦をテーマにしたゲームだ。堀場氏が「椅子」と呼んで重宝しているグッズが紹介されている。残念ながら正式な名称やどこで販売しているか記載がないが、どうやったら入手できるのだろう?

 

【12】3W『Bloody Buna』

3W社から1979年に発売され、デザイナーはBob Latterだ。補給ルールがポイントになるゲームだ。「内田野戦病院」部隊というユニットがあり、日本軍の損害が増すごとにこのユニットのステップが回復していくのだそうだ。ニューギニアの悲惨な戦いを象徴するユニットだ。

 

【13】LPS 『North Wind Rain』

LPS社から2003年にMark E. Stilleがデザインして出版されたゲームだ。関東軍によるソ連侵攻を扱った仮想船ゲームだ。いわゆる関東軍特種演習(関特演)で実際にソ連に侵攻した場合どうなるかを扱ったゲームだ。補給や補充にルールの不明確さがあるようだが、プレイしてみたいものだ。

 

【14】XTR『Samurai Sunset』

XTR社から1990年に、国際通信社から1995年に発売されたJoseph Mirandaデザインの本土決戦を扱った仮想戦ゲームだ。「集団自決」がルールとしてあるプレイするには複雑な気持ちにさせられそうなゲームだ。

 

【付録1】無敵行軍、亜細亜を制す~帝國陸軍最良の日々~

コマンドマガジン第57号(2004年6月)に掲載された記事で、米英との開戦に至る経緯と、マレー、シンガポール、フィリピン、蘭印攻略戦を概説している。とてもわかりやすい記事だ。

【付録2】CMJ072『Vinegar Joe's War : CBI Theater』

コマンドマガジン第72号(2006年12月)に掲載された記事。Decision Games社のJoseph Mirandaデザインの『Vinegar Joe's War : CBI Theater』というゲームの解説記事だ。1941年12月から1945年終戦までの仏印、タイ、マレーシア、シンガポールビルマ、インドと中国の一部を舞台にしたゲームだ。堀場氏は「帝國陸軍もののゲームとしては久々にクリーンヒットな作品」と絶賛している。

【付録3】CMJ077『TIGER OF MALAYA』

コマンドマガジン第77号(2007年10月)に掲載された記事。Avalanche Press社の『TIGER OF MALAYA』の解説記事だ。マレー半島南端のジョホール州とシンガポールでの戦いをテーマとしている。

インパルス・チットシステムを採用しているそうだ。これが「部隊運用時における「ままならしさ」をも演出している」そうだ。私個人は、チットを選ぶことで移動や戦闘に制限がかかるシステムは好きではないが、実際の戦場では、部隊が思うように動かない「ままならし」い場面が多数出ていただろうから、その方が実際の指揮官の心境に近いだろう。

 

【付録4】英烈千秋

コマンドマガジン第111号(2013年6月)に掲載された記事だ。

ウォーゲームに復帰して驚いたのが、アメリカや日本以外の国々でウォーゲームを製作販売していることだった。これも中国製日中戦争ゲームだ。ルールがシンプルでカードの使用により歴史的フレーバーが楽しめる良作だそうだ。ユニット管理に難があるようでその改善ルール案を提示している。

【付録5】RG『LAST BATTLE:IE SHIMA, 1945』

コマンドマガジン第127号(2016年2月)に掲載された記事だ。Revolution Games社から発売されたMike Rinellaデザインの『LAST BATTLE:IE SHIMA, 1945』というゲームの紹介記事だ。大東亜戦争末期の戦いは一方的で読むのも辛いが、このゲームは「プレイの上では全く一方的ではない。」そうだ。

【付録6】War in the Wind:The Battle of Attu Island, May 1943

コマンドマガジン第151号(2020年2月)に掲載された記事だ。Compass Games社の『War in the Wind:The Battle of Attu Island, May 1943』というゲームの紹介記事だ。

初めて「玉砕」という言葉が使われた1943年(昭和18年)5月に戦われたアッツ島の戦いがテーマだ。「米軍は時間と損害のジレンマに苦しみ、日本軍は空間喪失と兵力減少のトレードオフに苦しみ、どちらの陣営を担当しても、タフな戦いを強いられることは間違いない」ゲームだ。

アッツ島の戦いといえば、小学生の頃、アッツ桜の話を読んだことを思い出した。日本兵が故郷の桜を思い、米兵が故郷の植物を思いながら、戦って二人が死ぬ。その後に、二人の思いが合わさったような花が咲き、それがアッツ桜だ、という話だった。今、Wikipediaで見ると、原産は南アフリカ共和国のドラケンスバーグ山脈らしい。

 

【付録7】関特演~第二次日露戦争の可能性~

コマンドマガジン第53号(2003年10月)に掲載された関東軍特種演習(関特演)に関するヒストリカルノートだ。関東軍の戦力が最も充実した1942年夏で、歩兵師団14、戦車師団2、兵員約65万、戦車675輛、飛行機750機だった。同じ時期のソ連軍は狙撃師団29、戦車師団2、兵員約145万、戦車・自走砲など2589輛、飛行機3178機!!

砲の数について記載がないがソ連の方が多いのは確実だ。弾薬にいたっては30個師団会戦分、糧秣が16個師団換算で2ヶ月分しかなかった。

第二次日露戦争を始めなくてよかったと思う。

 

堀場氏が語るとどのゲームも魅力たっぷりで面白そうだ。

機会を見て、ここで紹介されたゲームを、実際にプレイしてみたいものだ。