Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

カード内容を全く知らないスリルある戦い WGJP006『箱館戦争』バトル・レポート(AAR)その1

 

wargamejapan.jp

◆ウォーゲーム日本史(国際通信社) 第6号 『箱館戦争/箱館湾海戦』


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ウォーゲーム日本史第6号の付録ゲーム『函館戦争』をA氏にインストしていただきながらプレイしてみた。

このゲームは函館戦争全体をシミュレートしたゲームだ。

マップは北は乙部、鷲ノ木、南は松前、函館が範囲だ。ヘクスではなくポイント・トゥー・ポイントで表している。

1869年(明治2年)4月9日から5月18日までの約1ヶ月を扱っている。

カード・ドリブンのゲームで、カードの山が2回なくなるとゲーム終了だ。

1ユニットは海軍が1隻、陸軍は指揮官1名や1隊だ。

 

ゲーム手順は次の通りだ。

1)新政府軍が自分の山の一番上のカードをめくる

2)新政府軍が相手のオープンカードと自軍のオープンカードを使って、「作戦」「イベント」を実行する。

3)旧幕府軍が自分の山の一番上のカードをめくる

4)旧幕府軍が相手のオープンカードと自軍のオープンカードを使って、「作戦」「イベント」を実行する。

 

2)と4)では、次の三種類の行動がとれる。

「作戦」「作戦」

「作戦」「イベント」

「イベント」「イベント」

 

特徴的なのは、相手のカードと自軍のカードの両方を使うことだ。

相手が何をする可能性があるかは、半分はわかっており、半分は相手がどのカードを引くかによるのでわからないのだ。

戦場の霧をうまく現している面白いシステムだ。

 

勝利条件はカードが全てなくなった時点で重要拠点を3箇所新政府軍が獲得していたら新政府軍のサドンデス勝利だ。

または、カードが2回全て無くなった時点で重要拠点6箇所を新政府軍が獲得していると新政府軍の勝利だ。

それ以外は、旧幕府軍の勝利になる。

 

ちなみに本ゲームのVASSALモジュールはこちらにある。

 

◆ウォーゲーム日本史(国際通信社) ─ VASSALモジュール

 

カード・ドリブン方式のゲームはどんなカードが何枚あり、それぞれのカードで何ができるか知っていないと自由に動けない。

A氏は、だいぶ昔とはいえ、このゲームを何度かプレイしたことがあるそうだ。

私はこのゲームをプレイしたことはない。

だからカードに何があるか全く知らない。

 

私が新政府軍、A氏が旧幕府軍を担当した。

 

さてどうなるか?

 

目次

  1. ■初期配置
  2. ■前半戦(1869/04)
  3. ■後半戦(1869/05)
  4. ■勝利条件の確認
  5. ■感想

■初期配置

旧幕府軍は鶉に土方歳三衝鋒隊を、榎本武揚彰義隊が森に、大鳥圭介と陸軍隊を鹿部に配置した。

その他、茂草には社陵隊、松前には一聯隊、木古内には新撰組、矢不来には伝習士官隊、二股に伝習歩兵隊を配置した。

 

新政府軍は乙部に山田顕義津軽隊2個を上陸させた。

ほぼ史実通りの上陸だ。

 

 

■前半戦(1869/04)

新政府軍カードは「上陸」カードだ。

早速、江差に、黒田清隆松前と備後福山を上陸させる。

この展開も史実通りだ。

しかし、ここで「上陸」カードが出なかったら、新政府軍は乙部の3ユニットで戦わないといけないからかなり厳しい序盤戦だと思った。

 

旧幕府軍のカードは「補充」だ。

「上陸」と「補充」は旧幕府軍は使えないので、作戦ポイント11を使う。

 

二股から鶉に伝習歩兵隊を集める。

また上ノ国に伝習士官隊を進める。

これで江差の部隊も乙部の部隊も蓋をされてしまった。

 

 

新政府軍は、上ノ国旧幕府軍に戦闘を仕掛ける。

新政府軍は戦闘力6だったが、振れるダイスは最大5個だ。

戦力5の単位でスタックさせるといいようだ。

ダイスは2,3,5,5,6だ。

黒田清隆がいるので、ダイス2を裏返して、3,5,5,5,6にして損害2にする。このゲームでは指揮官ユニットの能力まで、ダイスを裏返すことができる。ゾロ目が出ると損害1、出目が3個揃うと損害2になるのだ。

 

またダイスの目の合計値が少ない方は撤退しなければいけない。

 

旧幕府軍伝習士官隊は稲穂峠に後退した。

 

 

新政府軍は、旧幕府軍が引いた「海軍作戦」カードを使って松前を甲鉄と朝陽で艦砲射撃したが効果がなかった。松前は砦のため、攻撃力が半減するのだ。

 

新政府軍は、松前と備後福山で稲穂峠を攻撃し、旧幕府軍伝習士官隊を壊滅させた。

 

 

ここまでは新政府軍は順調な感触を持った。しかし、次の木古内は砦なので新政府軍の攻撃力が半減する。

 

旧幕府軍木古内新撰組と陸軍隊、鶉に土方歳三衝鋒隊、伝習歩兵隊を集めて、新政府軍の突破を防ぐ構えだ。

 

 

 

 

新政府軍は鶉の土方歳三を攻撃するが、撃退された。旧幕府軍は2、新政府軍は3の損害を受けた。

 

 

旧幕府軍は「座礁」カードを引いた。

当然ながら旧幕府軍は使わないが、次の新政府軍の手番ではこれを使うのは目に見えている。

新政府軍は「芯止之松」というカードを引いた。これは次のプレイヤー・ターンの間、敵軍プレイヤーが一切の攻撃を行えなくなる恐ろしいカードだ。

史実で一体どういうことが起こったのだろう?新政府軍は「座礁」カードのイベントを発動する。旧幕府軍は千代田型が座礁して失われた。「芯止之松」カードもイベントで使用した。

 

旧幕府軍は遊軍になっていた大鳥圭介松前まで移動させた。

内浦湾への上陸がないと見たのだろう。

「上陸」カードは一体、何枚あるのだろう?今、内浦湾に上陸したら背後から函館を突けるのに・・・。

後で聞くと上陸カードは2枚だそうだ。

既に1枚使ってしまったので残り1枚だったのだ。

 

旧幕府軍は「見国隊上陸」カードを使って木古内を固める。

 

新政府軍に待望の「上陸」カードが出た!!

これで内浦湾に上陸できる。

新政府軍は薩摩と長州を上陸させた。

 

旧幕府軍は函館から峠下に遊撃隊、会津遊撃隊、彰義隊を送る。

薩長と戦いだ。

薩長のダイスは1,2,5,5,5 損害2だ。

旧幕府軍のダイスは3,3,3,4 損害2だ。

 

ダイス目の合計は新政府軍の方が多いので、峠下を新政府軍が占領した。

 

これでカードを全て出した。

この時点でサドンデス勝利の可能性を探るために重要拠点を新政府軍がいくつ占領したか数える。

重要拠点は、弁天台場、七里浜、四稜郭、二股、矢不来、松前の6箇所だ。

新政府軍はまだ1箇所も占領していないのでサドンデス勝利はない。

 

■後半戦(1869/05)

新政府軍は大野に下がった彰義隊を追撃する。

彰義隊は函館へ退却する。

これで新政府軍は鶉の土方歳三隊を包囲した。

包囲しても補給切れの概念がこのゲームにはないので別に何でもないのだが、それでも有利な状況だ。

このまま函館にも突入できる。

函館を守る旧幕府軍はわずかに彰義隊と額兵隊の2ユニットだ。しかも彰義隊は損害2、額兵隊は損害1と手負いの状態だ。

 

 

旧幕府軍は矢不来を放棄して函館に榎本武揚会津遊撃隊、陸軍隊、新撰組彰義隊を集める。

この時、旧幕府軍五稜郭を空にした!!

新政府軍は「上陸」カードが出たので、矢不来に上陸する。

 

新政府軍は二股に進撃し、土方歳三隊を包囲した。

さらに七里浜と四稜郭に進撃した。

ここで空白になった五稜郭を占領すればよかったのだが、重要拠点占領に固執してしまい五稜郭を見逃した!!

 

 

稲倉石でついに土方歳三隊が壊滅した。

土方歳三も戦死した!!

 

 

 

旧幕府軍は弁天台場から五稜郭に部隊を集める。

その後、新政府軍は五稜郭を力攻めするが、攻略できなかった!!

 

■勝利条件の確認

重要拠点は、弁天台場、七里浜、四稜郭、二股、矢不来、松前の6箇所だ。

そのうち新政府軍が占領したのは、七里浜、四稜郭、二股、矢不来の4箇所にととまったので、旧幕府軍の勝利だ!!

 

■感想

カード・ドリブン方式のゲームで、カード内容を知らなかったので、常に何が起こるかわからないスリルと不安の中の戦いだった。戊辰戦争を指揮した人達の感覚に没入できて大満足だった。

 

ゲーム上は敗戦だったが、土方歳三を戦死させ、あと一歩で函館も占領できそうだったので、負けた気がしない。

 

登場部隊数が少なく、移動先が少ないミニゲームではあるが、箱館戦争の雰囲気をうまく再現したとても面白いゲームだ。

 

新政府軍の敗因は、空白になった五稜郭を落とさなかったことだった。

五稜郭は重要拠点ではないが、交通の要衝でここを落とさないと弁天台場に陸から進めない。

新政府軍の敗因の二つ目は、弁天台場攻略をしなかったことだ。

弁天台場を攻略するために海軍を差し向けて海戦をするべきだった。

 

ゲーム上は新政府軍は敗北したが、この後、歴史はどう変わっただろうか?

榎本武揚旧幕府軍は、新政府軍と講和を結び、何らかの形で新政府の中に居場所を得て、日本の近代化に貢献することになっただろう。

 

後でルールブックをよく読むと、次の3点で実際には政府軍の勝利だった!

1点目は、[8]上陸と輸送ルールの2個目の●だ。「新政府軍プレイヤーは自分の手番開始時、カードをめくる前に、錨駒が置かれている町一つを選んで、そこに手元の駒を「輸送」できます。輸送できる駒の数は青い三角形内の数値以下です。」とある。

これを使えばもっと容易に政府軍は兵力を上陸し攻撃できたはずだ。

 

2点目は[7]作戦の5個目の●「函館で移動を終えるなら、拡大マップ内の好きな町に駒を置きます。」だ。拡大マップ内の移動にそれぞれの道で1移動力を使っていたから、それを使わないですんだならもっと自由に動けたはずだ。

 

3点目は[5]ゲームの流れの(5)の2個目の●の「新政府軍の駒が五稜郭に入ったら、その時点で新政府軍の勝利でゲームは終了します。」だ。今回、旧幕府軍が空っぽになった五稜郭に入らなかったが、あそこで入っていたらゲーム終了だったのだ。

 

このゲームは町にユニットを配置するとその町の地形や地名を読めなくなるので、マップデザインはエリアになっているとよかったと思う。

 

ルール上の疑問点

 部隊が壊滅したらスタックしていた指揮官が壊滅したらどうなるか?

 

戦場の霧が上手く表現されているし、少ないユニット小さなマップの割にいろいろ考えないといけないのでとても面白いゲームでまたプレイしてみたい。

 

榎本武揚と幻の蝦夷共和国政府については、『歴史群像』No.183に良記事が出ていて参考になる。

haruichiban0707.hatenablog.com

 

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