Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

丸 2021年10月号 特集『日本初の超弩級戦艦 「扶桑」型戦艦』 付録 第二次大戦海戦大事典

丸 2021年10月号 特集『日本初の超弩級戦艦 「扶桑」型戦艦』

付録 第二次大戦海戦大事典

 

 

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丸 2021年10月号 もくじ

 

 付録の『第二次大戦海戦大事典』が欲しくて購入した。

 ヨーロッパや太平洋の海戦概要が載っていてとてもわかりやすい。

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第二次大戦海戦大事典の表紙

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第二次大戦海戦大事典のもくじ

 

 本誌はおまけのつもりだったが、特集の戦艦扶桑は、あの独特の形をした複雑な艦橋、完成当初は世界一の大型戦艦だったのに改装の連続、アメリカとの戦争開始後も第二線で活躍できず、スリガオ海峡海戦であっけなく沈められた悲惨な最期を迎える悲劇的な一生もあって、興味ひかれる戦艦だ。

 

「扶桑」型戦艦の建造計画&先進メカニズム 及川研二

 扶桑型戦艦の設計思想、建造計画、改装状況がよくわかる。

 

「扶桑」型戦艦の幻の計画案&改装プラン 小高正稔

 扶桑は、三番四番砲塔が分散したため、主砲配置で、主砲の爆風が艦上全体に及ぶこと、弾火薬庫の防御が分散することが、問題点だった。兵装の数が多ければいいというわけではないのがよくわかる。後の伊勢型で改修された理由がここだったわけだ。

 他に、41cm砲搭載案や航空戦艦、空母改装案があったのは知らなかった。空母案では空母隼鷹のような外見の図などいくつかあるが、カタパルトなしで扶桑の機関・速度だと空母としての運用は厳しいだろう。

 

”「扶桑」型vs米戦艦"砲撃戦能力比較 堤明夫

 スリガオ海峡夜戦の経過、日米海軍の砲戦術から、スリガオ海峡での戦艦対戦艦の昼間戦闘のifを分析している。

 スリガオ海峡夜戦の経過を読むと、航空機による爆撃、魚雷艇駆逐艦巡洋艦の襲撃により、戦力を落とし、最後は戦艦による艦隊決戦(それもT字型で戦う)・・・「あれ?これは、日本が戦前想定し猛訓練してきた邀撃漸減作戦を、米軍が逆にやったということだ」と思った。

 「彼我ともに変針することにより、相対運動に対する測的に時間を要し、正確な射撃計算できない」、「変針変速後は最低でも一分間以上それぞれが直進しなければ正確な射撃に利用し得るまで安定しない」、「最低三分間は自艦及び目標艦がともに直進しないと正確な相対運動解析結果が得られない」という、当時の技術力の限界には驚いた。

このあたりをシミュレーション・ウォー・ゲームで再現している例はほとんどないだろう。

 砲戦術では、日本が「命中率の重視」に対し、米国が「命中率の低さを発射速度と発射門数の多さによる「命中速度」(単位時間内に得られる命中弾の数)でカバー」という違いがあったことは勉強になった。

 日本:戦艦2隻(扶桑・山城)(36cm砲x12) 対 米:戦艦6隻(ウェスト・ヴァージニアとメリーランドの2隻は40cm砲x8、ミシシッピー、テネシー、カリフォルニア、ペンシルバニアの4隻は36cm砲x12)の砲撃戦では、米戦艦6隻で9分間に距離2万から2万2000mで297発中山城にたったの2発命中(命中率0.72%)だった。巡洋艦8隻で18分間に距離1万3000mで、3379(!!)発を発射し確認できる命中弾は23発(命中率0.68%)だったとは、かなり命中率が低かったのがわかる。

 結局は、戦艦2隻対6隻では、いかに扶桑と山城が善戦しても最後は勝てなかっただろうが、ここまで一方的な戦いにはならなかっただろう。

 

 ”名誉ある戦い"スリガオ海峡の米駆逐艦 大塚好古

 スリガオ海峡夜戦での米軍駆逐艦の戦いの記事。米軍駆逐隊が日本軍駆逐艦よりも積極的で勇敢に近づき、魚雷を発射し退避したことがよくわかる。日本側も負けずに砲撃しているが、いかにせん多勢に無勢で、次々と魚雷が命中し沈んでいった。これは本当は日本側がやりたかったことだが、多勢に無勢とはいえ、もう少し戦えたのではないだろうか。

 

 井上和彦の封印された日本の近現代史

 戦後、ベトナム独立のために戦った残留日本兵が約600人もいたり、ベトナム初の士官学校「クァンガイ陸軍中学」が設立され、その教官が全員日本陸軍の昇降と下士官だったのだそうだ。敗戦後、様々な人生があったのだなぁ。

 

 誰も知らないニッポンの防衛産業 桜林美佐

 日本の防衛産業の調達ルールの問題をわかりやすく説明している。

 「プライム企業が利益を上乗せするのがいけない」とのことだが、そんなことしたら誰もその調達に参加しないだろう。企業が努力してコストダウンしたらその分を防衛省に返納するなどというアホなルールもあるらしい。逆にコスト超過があった場合、超過額は企業がやり抜くしかない。私が株主だったり経営者ならそんな調達やめろ、と言うだろう。新型機の設計・生産のようにリスクが高くてコスト超過の可能性がある場合、リスクが大きすぎてとてもじゃないがやれない。アメリカでも新設計の機体の場合、コスト超過が発生するのが多々ある。政府がそれを支払っているのに日本では政府が払わないというのなら、企業としてはやらない方がいいだろう。

 日本の防衛産業の問題ではあるが、中央省庁と企業の問題でもあり、考えさせられた。