コマンド・マガジン別冊のコマンド・ザ・ベストの1作目『大西洋戦争』(VICTORY AT SEA)をソロ・プレイしてみた。
アバロン・ヒルの『英独 大西洋の戦い』(War At Sea)を、同ゲームのデザイナーであるジョン・エドワーズ自身がアップデートした、とのことで、期待が膨らむ。
開いてみると地図盤のデザインが大きく変わっている。
北大西洋と南大西洋が大きく横に広がり、カリブ海が増えている。
地中海や北海が相対的に狭くなっている。
地図盤上にその海域に入れるかどうか、戦闘不能や帰還時にどの港に帰るのか記載がありわかりやすいくなっている。
軍港が細かく分かれ軍港ごとに修理ポイント数が分かれている。
ユニットは小さく薄くなった。新たに提督ユニットやダミーマーカーができた。
国籍別に色が分かれた。
ルールは、解釈しにくい部分を明確にしたことと、歴史的な要素を散りばめたものが多い。
たとえばプレイの手順が手順10まで詳細化された。
イタリア艦は地中海に出た後、英軍の様子を見て緊急帰港できるルールがあり、これは史実をより反映させようとする意図だろう。
Uボート・テクノロジー・ルールによって、Uボートのサイコロの目が有利になったり連合軍のサイコロの目が有利になったりする。これはサイコロによってどちらが有利になるか行ったり来たりする。
制海権ポイント(POC)計算の仕方がより明確になった。POC計算後、輸送船団が到着したかどうかで、POCが変わる。このルール変更と輸送船団登場回数が増えたため、連合軍はより一層、輸送船団防衛の意義が増す。枢軸軍は輸送船団の到着を防がないといけない。
フランス侵攻ルールもある。フランス侵攻作戦を連合軍が実施することで、ドイツ軍がフランスを使えなくなる。
やってみると一海域増えただけだが、連合軍はずいぶんと守りにくい。イギリス軍の気持ちだと、「アメリカさん、もっと艦艇投入してカリブ海は、自分で守ってくださいよ。」と言いたくなる。『英独 大西洋の戦い』(War At Sea)だとアメリカ海軍がサイコロの目で6が出ないと登場しないが、『大西洋戦争』(Victory At Sea)だと確実に登場するので頼もしい。
枢軸軍は一海域増えただけでもずいぶんと攻撃しやすくなった。通商破壊戦ルールもあり、より史実らしく、ポケット戦艦による通商破壊戦の雰囲気を味わえるようにようになった。
ルールブック中に『鋼鉄の暴風域『大西洋戦争(Victory At Sea)』作戦研究』という鹿内靖氏の作戦研究兼レビューの中で、
「シミュレイション性とエンタテインメント性の理想的な両立がそこにある。(中略)『ビクトリー・アト・シー』は傑出した作品と言えるだろう。」
と書いているが、同意する。『英独 大西洋の戦い』(War At Sea)は、ユニットはそれぞれ第二次世界大戦の艦艇だが、第二次世界大戦とは全く別のどこか仮想世界の戦いになりがちだった。『大西洋戦争』(Victory At Sea)は、よりヒストリカルな形で戦え、雰囲気を味わえ、それでいて、シンプルな『英独 大西洋の戦い』(War At Sea)のDNAを引き継いでいる。バランスのとれた作品と言える。