Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

アバロン・ヒル 『サブマリン』(Submarine)の問題点

 アバロンヒル社の『サブマリン』(Submarine)は大好きなゲームの一つで若い頃ずいぶんプレイした。当時は何も疑問を持たなかったが、約40年経過してこちらが大人になってみて、プレイしてみるといろいろ問題点に気がついた。「もっと前に気づけよ。」と叱られそうな点ばかりだろう。問題点に気づいてもこのゲームが好きというのは変わらない。好きだからこそ書いておきたい。

 

(1)移動終了後の艦船にしか魚雷は命中しない

 艦船の移動=>魚雷発射・移動の順序のため、艦船の移動終了後停止した場所に対して魚雷が移動して命中する可能性がある。同時移動性を重視するなら、ターン中に、艦船を1ヘクス移動ー魚雷も1ヘクス移動を繰り返すしかない。そうなるとプレイアビリティーはだいぶ落ちてしまう。魚雷のスピード感もなくなってしまう。『サブマリン』(Submarine)が採用したルールの方が個人的には好きだ。

 

(2)1ヘクス=100ヤード(約91.44m)だから潜水艦の全長は1ヘクス、大型艦の全長は3ヘクス必要

 『サブマリン』(Submarine)では、艦船は皆、2ヘクス(200ヤード=約182.88m)で表現されている。しかし、第二次世界大戦中の潜水艦は、100mないものが多い。一方、戦艦や空母などの大型艦は全長200m以上のものが多い。だから本当は、潜水艦ユニットは1ヘクスで、大型艦は3ヘクスで表現しないと正確ではない。主役の潜水艦ユニットが小さくなって存在感が薄れるが、その方が爆雷攻撃の命中確率が減るからいいのではないだろうか。大型艦は魚雷侵入角度が増えるので魚雷命中判定表が複雑になるが、魚雷命中確率が上がるからその方がいいと思う。

 

(3)旋回半径の問題

 シミュレーション・ゲームだから何かをルールとして採用したら何かを落とすという風に、現実世界のデフォルメが必ずあるのはわかっている。しかし、『サブマリン』(Submarine)の一番大きな問題点はどの艦船も回頭が自由にできる点だろう。

 どの艦船もやろうと思うと、下図の左側のように1ヘクス前進したら60度回頭することができる。この場合で、直径3ヘクス(300ヤード=274.32m)で旋回できてしまう。

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旋回直径3ヘクスと旋回直径9ヘクスの比較

 有名な下の写真を見ると空母蒼龍は直径1000m位の円を描いている。これが最小旋回半径かどうかはわからないし、その時の速度にもよるだろうから、正確な直径はわからない。爆弾回避中の旋回だから全力に近いのではないかと推測する。この写真を見た限り、蒼龍の全長は227.50mの5倍くらいの直径はある。

 少なくとも自艦の全長とほぼ同じ直径で旋回することは無理だろう。

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ミッドウェー海戦で旋回する空母蒼龍

 大和型の場合、Wikipediaによると、「旋回直径は26ノットで横640m、縦589m(横2.43、縦2.23)」ということだが、大きめに見積もっても、上の右の旋回直径9ヘクス(900ヤード=822.96m)のように、ある程度前進してから回頭できるようにするべきだろう。この例では、4ヘクス(400ヤード=約365m)前進してから回頭している。本来なら各艦ごとに旋回までに何ヘクス前進が必要かデータにすべきだろう。

 戦記を読むと、艦隊を組んでいると、戦闘中以外は現実にはそんなに回頭できなかったようだから、史実に近づけようとしたら、回頭を制限するルールを作るべきだろう。だがそうすると、潜水艦が発射する魚雷が命中しすぎて、水上艦プレイヤーががっかりすることになるだろう。

 『サブマリン』(Submarine)では回頭が自由だからこそ、水上艦プレイヤーが潜水艦プレイヤーを出し抜くために頭を使う楽しみがある。潜水艦対水上艦の戦いの雰囲気を味わうには回頭は自由な方がいいのだろう。

ja.wikipedia.org

 シミュレーション・ゲームのデザインは、相反する要素のうちどこにバランスを置くかがポイントになる。

 プレイアビリティーをとるか、正確なシミュレーション性をとるか。ヒストリカル性をとるかゲーム・バランスをとるか。

 『サブマリン』(Submarine)は、シミュレーション性やヒストリカル性より、プレイアビリティーやゲーム・バランスを重視したゲームである。そのため、本当は退屈な時間が長い潜水艦戦闘を、エキサイティングなものに表現しえたのだと思う。

 『サブマリン』(Submarine)が潜水艦ゲームの傑作であることは間違いないと思う。