Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

小説風バトル・レポート(AAR)『奇襲空挺部隊 エバン・エマール』(Paratroop Eben Emael)

Strategy & Tactics 77号『奇襲空挺部隊 エバン・エマール』(Paratroop Eben Emael)は短時間で簡単にソロ・プレイができるゲームだ。ソロ・プレイのバトル・レポート(AAR)を今回は小説風にまとめてみた。

 

1940年5月10日0430、DFS230グライダーはJu52輸送機に曳航されて、エバン・エマール要塞を目指して離陸した。途中で隊長の乗ったグライダーともう1機の曳航策が切れた。無事着陸してほしい。曳航策が切れて死亡なんて、戦死として扱われるのだろうが、なんともやりきれない。

残った9機で要塞を目指す。

要塞まで20マイル(約32km)手前、高度7000フィート(約2133m)でグライダーが切り離された。無事着陸できるかはグライダーのパイロットの腕次第だ。

グライダーで降下している時は対空射撃の絶好の的だし、こちらからは何もできない不安な時間だが、幸い、対空射撃はほとんどなかった。

0520 グライダーが着陸。AbH15ホローチャージ爆弾や火炎放射器などを持ち、グライダーから降りて目標の砲台に向かってすぐ走る。訓練と同じだ。

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1940年5月10日 0520 グライダー9機がエバン・エマール要塞に着陸

ベルギー軍の対応は早かった。砲台が次々と戦闘態勢に入ったようだ。我々ドイツ軍が#13と名付けた中央南トーチカや、#26ヴァイスⅠトーチカは、観測所もあるので最優先で破壊する目標だ。

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砲台が次々と戦闘態勢に入る

ベルギー軍の猛射が正確で凄い。#14を狙ったHeineman指揮する第7分隊のいたあたりに砲撃の大きな土煙が上がる。第7分隊からの連絡が途絶えた。無事であってほしい。

隠顕式砲塔を持つ#31北砲塔に向かって匍匐前進しているUnger第8分隊は、#26と#31の中間で動けなくなった。#26ヴァイスⅠに爆弾を仕掛けていたHuebelの第10分隊も#24のキューポラからの砲撃で動けなくなった。#12マーストリヒトⅠ、丘の上の#18マーストリヒトⅡ、観測所を持つ#13中央南、#29/30ブロックⅣ、観測所を持つ#19中央北など5ヶ所を破壊することに成功した。#16のキューポラも破壊成功したが、砲は装備されていなかった。どうやらダミーのようだ。攻撃後10分で6基破壊成功したが観測所がある#26ヴァイスⅠと#31北砲塔が残っているのが厄介だ。

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ベルギー軍の猛射

#31北砲塔の破壊に向かったHaug率いる第5分隊がベルギー軍#32キューポラからの正確な砲撃で全滅。Ungerの第8分隊は、#31北砲塔まであと100mだが、砲撃が激しく、地面に這いつくばったまま動けない。

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第5分隊全滅

0545 #4ブロックⅡ砲台も破壊成功。#26ヴァイスⅠの西でHuebelの第10分隊も、#31北砲塔まであと100mのUngerの第8分隊も、あいかわらず、地面に這いつくばったまま動けない。#9ヴァイスⅡには2分隊がAbH15ホローチャージ爆弾を使ってしまったので通常爆弾で破壊を試みるがうまくいかない。

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#4ブロックⅡ破壊

0600 南にある2基のベルギー軍キューポラや中央のキューポラからの射撃が正確だ。#26, #31にある観測所からの指示が的確なのだろう。

6個分隊から応援要請の悲鳴があがるが、こちらも自分の身を守るので精一杯だ。

「砲撃も永遠に続くわけじゃない。落ち着いて合間を見て反撃しろ!俺たちは並以上の訓練しているんだ。何とかなる!」と叫ぶだけだ。

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ドイツ軍7個分隊中、6個分隊がくぎづけ状態

 

0610 砲撃の一瞬の隙をついて、#9ヴァイスⅡ、#26ヴァイスⅠを破壊!#14も破壊した。砲火が見えないから予想はしていたが、これもダミーだった。当初の目標は残り2基だ。#24と#31北砲塔だ。Ungerの第8分隊は、#31北砲塔まであと100mの場所から、あいかわらず動けない。

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3ヶ所破壊!残り2ヶ所

0628 動けない第8分隊の横を2個分隊が、#31北砲塔に向かって走る。ベルギー軍のキューポラからの砲撃が集中する。砲撃の土煙でどうなったかわからない。土煙がおさまるとそこにはドイツ軍の制服を着た動かない兵士達の姿があった。残ったドイツ軍兵士による復讐に燃えた射撃だ。#31北砲塔のある丘の上や丘の周囲にいるベルギー軍兵士が次々と倒れる。白兵戦も辞さない覚悟で突撃すると、そこには戦えるベルギー軍兵士は既にいなかった。

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#31北砲塔をめぐる攻防

 

0638 あとは落ち着いて#31北砲塔を破壊すればいい。爆薬をセットして起爆装置を起爆させる。大音響とともに砲台が爆発し破壊成功だ。

#24にも3個分隊が突撃したが、2個分隊が頭を上げられないくらいの砲撃を受けて動けなくなった。残った1個分隊が砲台に駆け寄り、訓練どおりすばやく爆薬をセットして爆破成功。

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#24と#31北砲塔も破壊

作戦目標の11基の砲台と目標外の砲台1基の破壊に成功した。これだけ破壊すれば要塞としては機能を失ったと言えるだろう。

ベルギー軍3個分隊も全滅させた。こちらも約3分の1の3個分隊の損害を受けた。

ともに訓練に明け暮れた仲間達の死には心が痛む。

あとは陸上部隊が来るまで要塞内にベルギー軍を閉じ込めておくだけだ。

0830には、曳航策が切れた2機のグライダーに乗った部隊と隊長が到着した。無事でよかった。

 

翌日、ようやく地上軍が到着し、要塞の地下に閉じ込めておいたベルギー軍と戦った。しばらくしてベルギー軍は降伏した。捕虜は約1000名。捕虜の長い列を見た時、こんなにいたのか、こちらは100人程度だったからよく戦えたものだ、と思った。ベルギー軍が出口から自由に出てきたら、この人数ではとても抑えきれなかっただろう。出入り口を早めに塞いだのは正解だった。

 

今回はうまくいった。次はどこの戦場に降下することになるだろうか。

次の作戦のためにまた訓練だ。

 

(あとがき:「小説風」と銘打ったが、こうして書いてみるとあまり小説になっていない。こうして書いてみると、いろいろな点でわからないところだらけだとあらためて強く思った。

どんな風、気温、音、土、草だったのか。参加した隊員一人一人がどう思いどう行動したのか。戦いの後どうなったのか。どんな装備でどんな風に戦ったのか。

歴史として残らないものがほとんどで、歴史として残されるものはほんのわずかなものでしかないということを。

そんなわずかなものへのイマジネーションに浸ることが、シミュレーション・ゲームの魅力の一つだと思う。)