翔企画のSSシリーズは、「Sサイズ・シミュレーションゲーム・シリーズ」の略で、「早い」「安い」「うまい」の吉野家のように、「短時間でプレイ可能」「安価」「面白い」がウリだったかと思う。(ちょっと違うかもしれないが)
このゲームは、第1ターンが1944年12月16日の一日。第2ターン以後第6ターンまで1ターン2日間。第6ターンが12月26日で終了だ。
このゲームの手順は次のとおりだ。
1. ドイツ軍プレイヤーが1ユニット(あるいは1スタック。機械化部隊のみスタックできる。)を選び移動させる、またはパスする。
2. 敵ユニットに隣接したら戦闘する。
3. 連合軍プレイヤーが1ユニットあるいは1スタックを選び、移動させる、またはパスする。
4. 敵ユニットに隣接したら戦闘する。
以下全ユニットが移動・戦闘を終わらせるか、両軍が続けてパスするまで続く。
主な移動ルールは次のとおり。
移動力は全ユニット6移動力。機械化部隊の移動力の優位性がない。
荒地や森林は3移動力。
機械化部隊は森林ヘクスに道路ヘクスサイド以外からは入れない。
道路は1/3移動力だが味方ユニットがいる道路の場合、そのヘクスの道路以外の地形の移動力となる。味方のユニット上の敵ZOCは移動できる。
これがミソとなり渋滞が発生する。
1ユニットの移動後、隣接すると戦闘解決なので、じっくり包囲して戦闘というわけにはいかない。
戦闘は戦力差方式。
移動後の戦闘終了後、または戦闘結果によって、ユニットを裏返す。裏返すと戦力が落ちるユニットもある。
敵ユニットに隣接する味方ユニットがいるとそのユニット数分ダイス目修整がある。
地形効果はなし。川を挟んでも、森林でも荒地でも平地でも同じだ。
都市にいる敵ユニットへの攻撃ではダイス目修整なし。
ドイツ軍は燃料不足のため、裏になったユニットを表にできるユニット数に制限がある。
勝利条件は、占領した都市の数。連合軍が英軍に増援を頼むとターンによって勝利ポイントがドイツ軍に入る。
ドイツ軍はセットアップ時22ユニット、増援16ユニットの合計38ユニット。
連合軍はセットアップ時9ユニット、増援21ユニット、英軍増援5ユニットの合計35ユニット。両者合計73ユニットだ。
1ユニットの移動と戦闘に1分として、73ユニットx1分x6ターン=438分
438分÷60分=7.3時間
この計算は全73ユニットが1ターンから盤上にある場合の計算なので、実際にはもっと短いはずだが、それでも、「短時間でプレイ」という点では、SSシリーズのコンセプトと、全然、違うじゃん!!
とはいえ、1ユニットずつ動かすので、非常に頭を使う。
Aを動かしBに隣接させて、戦闘で退却させ、戦闘後前進して空いた空間にユニットCが前進するはずが・・・ダイスの結果は、両者が動かないので空間が空かず・・・ということが発生する。
Dを動かし戦線に穴を開けて「やったぁ~」と喜んだら、援軍が道路移動を使ってやってきて戦線をすぐに塞がれる、ということもしょっちゅう起こる。
何しろ道路移動力が1/3なので最大18ヘクス移動できるのだ。南北17ヘクス東西20ヘクスしかないマップなので18ヘクスも移動すると端から端まで到達できる。
一手一手動かすので息を抜けない緊張感がある。
Aさんが連合軍を、私がドイツ軍を担当したのだが、全然前進できなかった。サン・ヴィッツは占領したが、バストーニュ手前で止められ、「バルジ(突出部)」の戦いのはずが、バルジ(突出部)が全然できなかった。そのため後世の歴史家は「Aカップの戦い」と呼び、フェミニストの人達から激しく糾弾され、改名を要求されることとなりましたとさ。(とほほ・・・)
冗談はさておき、このゲームは、交通渋滞が発生するし、ドイツ軍の苦しい戦力事情が、簡単なゲーム・ルールで、うまく表現されている。例えば空軍ルールを思い切ってなくしているため、ゲーム・ルールが簡単になっている。しかしドイツ軍の進撃しにくさがうまく表現できている。
連合軍もドイツ軍の奇襲により作戦目的がわからないのでどこに戦力を振り向けるといいかわからない。そんな戦いの雰囲気がうまく表現されている。
SSシリーズの「短時間でプレイ」のコンセプトとは異なるかもしれないがバルジの戦いを扱った本格的なゲームだと思った。
ネットを見ると、「バルジの戦い」を扱ったゲームの一覧と特徴がまとまったサイトがあった。バルジの戦いは人気テーマだけに沢山あるものだと改めて思った。