Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

ホーカー・ハリケーンと同時代の戦闘機を比べてみた 『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズ

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ホーカー・ハリケーンとライバルのユニットたち


ミリタリー・クラシックス vol.76でホーカー・ハリケーン特集があったので、AH『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズで、ホーカー・ハリケーンの性能カードについて調べてみた。

このシリーズのゲーム・スケールは、1移動力=時速50マイル(約80km/時)、1ターン10秒、高度は100ftごと(約304.8m)、1ヘクス約222mである。

同シリーズでは、ハリケーンIがカード11B、ハリケーンIIがカード10Bになっている。

同誌でライバルとされていたスピットファイアI、Bf-109E、M.C.200、零戦21型、隼、そして同じ年に要求仕様が出た96式艦上戦闘機と比較してみた。同誌では他にカーチスP-40やベルP-39やグラマンF4Fがあったし、同時代の英海軍艦載機はグロスター・グラジエーターになるだろうが、本稿では割愛した。

 

寸法修整

全幅12.9m。全長9.75mの大きさで、ゲームの寸法修整は+2だ。ほぼ同じサイズの機体と同じだ。

 

目標特性

ハリケーンIは、主翼(W)は6。胴体(F)は5。操縦席(C)は3。発動機(E)は3。燃料タンク(L)は3。ハリケーンIIは、主翼(W)は6、胴体(F)は6、操縦席(C)は3、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は3で、ハリケーンIより胴体の防御力が1上がっている。

スピットファイア主翼(W)は5、胴体(F)は5、操縦席(C)は3、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は3で、ハリケーンIの方が主翼(W)の防御力が1高い。

ライバルのBf-109Eは、主翼(W)は5、胴体(F)は4、操縦席(C)は3、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は3なので、ハリケーンの方が頑丈にできている。

M.C.200は、主翼(W)は5、胴体(F)は5、操縦席(C)は3、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は3だ。

96式艦上戦闘機主翼(W)は4、胴体(F)は3、操縦席(C)は2、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は2なので、それより頑丈だ。ちなみに零戦21型や隼は主翼(W)は4、胴体(F)は4、操縦席(C)は2、発動機(E)は3、燃料タンク(L)は2だ。防弾板がない日本機はやはり脆い。

 

加速力

加速力は、ハリケーンIは、29,900ft(9,113m)まで1だ。同じエンジンを積んだスピットファイアIも同じだ。990馬力から1,319馬力にアップしたエンジンを搭載したハリケーンIIは19,900ft(6,065m)まで2、36,500ft(11,125m)まで1だからかなり加速力がいい。ライバルのBf-109Eは、4,900ft(1,493m)まで2、34,900ft(10,637m)まで1だ。M.C.200は19,900ft(6,065m)まで1だ。96式艦上戦闘機は14,900ft(4,541m)まで1。零戦21型と隼は24,900ft(7,589m)まで1だ。

 

速度(運動速度)

緑色の運動速度は、ハリケーンIで、4,900ft(1,493m)まで2(160km/時)から4(320km/時)。19,900ft(6,065m)まで3(240km/時)から4(320km/時)だ。

ハリケーンIIだと19,900ft(6,065m)まで3(240km/時)から4(320km/時)だ。

スピットファイアIが14,900ft(4,541m)まで3(240km/時)から5(400km/時)だ。

Bf-109Eは9,900ft(3,017m)まで3(240km/時)から5(400km/時)。14,900ft(4,541m)まで3(240km/時)から4(320km/時)。19,900ft(6,065m)まで4(320km/時)だ。

M.C.200は9,900ft(3,017m)まで2(160km/時)から4(320km/時)。19,900ft(6,065m)まで3(240km/時)から4(320km/時)だ。

96式艦上戦闘機は14,900ft(4,541m)まで2(160km/時)から4(320km/時)。19,900ft(6,065m)まで2(160km/時)から3(240km/時)。24,900ft(7,589m)まで3(240km/時)だ。

零戦21型は14,900ft(4,541m)まで3(240km/時)から5(400km/時)。19,900ft(6,065m)まで3(240km/時)から4(320km/時)。29,900ft(9,113m)まで4(320km/時)だ。

隼は14,900ft(4,541m)まで3(240km/時)から4(320km/時)。19,900ft(6,065m)まで4(320km/時)だ。

こうして比較するとハリケーンの運動性が高い速度域は遅くて狭い。

 

速度(標準速度)

黄色の標準速度の最大は、ハリケーンIが5,000ft(1,524m)から24,900ft(7,589m)の6(480km/時)。

ハリケーンIIが20,000ft(6,096m)から24,900ft(7,589m)の7(560km/時)だ。

スピットファイアIが15,000ft(4,572m)から24,900ft(7,589m)で7(560km/時)。

Bf-109Eが10,000ft(3,048m)から19,900ft(6,065m)で7(560km/時)。

M.C.200は5,000ft(1,524m)から19,900ft(6,065m)で6(480km/時)。

96式艦上戦闘機が19,900ft(6,065m)まで5(400km/時)。

隼が10,000ft(3,048m)から19,900ft(6,065m)で6(480km/時)。

零戦21型が5,000ft(1,524m)から29,900ft(9,113m)で6(480km/時)だ。

ハリケーンは、スピットファイアIやBf-109Eとは同等だが、イタリア機や日本機より高速だ。

 

速度(降下速度)

赤色の降下速度はハリケーンIもIIも最大10(800km/時)。

スピットファイアIが9(720km/時)。

Bf-109Eはほとんどの高度域で9(720km/時)。

M.C.200は意外にも高速が出せてほとんどの高度域で10(800km/時)。

96式艦上戦闘機零戦21型や隼は最大8(640km/時)。

ハリケーンの機体が頑丈であることが評価されている。

 

旋回性能

『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズでは旋回性能は、60度回頭するまでに前進するヘクス数で表現されている。数字が小さい方が旋回半径は小さくなるが速度低下もあるので、本来は加速力も加味しないと旋回半径が出せないので、目安としてみてほしい。

旋回性能はハリケーンIで4,900ft(1,524m)まで1。19,900ft(6,065m)まで2。それ以上で3だ。

ハリケーンIIは19,900ft(6,065m)まで2。34,900ft(10,637m)まで3だ。

スピットファイアIが4,900ft(1,524m)まで1。19,900ft(6,065m)まで2。それ以上で3だ。

意外だが、スピットファイアIとハリケーンIは同等と評価されている。

Bf-109Eは14,900ft(4,541m)まで2。29,900ft(9,113m)まで3。それ以上で4。ハリケーンIの方が同等か若干よい。

M.C.200は9,900ft(3,017m)まで1。19,900ft(6,065m)まで2。それ以上で3だ。

96式艦上戦闘機零戦21型と隼は19,900ft(6,065m)まで1。それ以上で2。

ハリケーンで日本機と巴戦で戦ってはいけない。

 

上昇力

『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズでは、上昇力は、高度変更スクリーンと速度変更スクリーンを見ないといけないので一見しただけでは、判定できない。実際にプロットしてみないとわからない。

ハリケーンIは20,000ft(6,096m)まで9.8分だが、『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズでは、61ターン=610秒=10分10秒かかる。

ハリケーンIIAで8.6分となっているが、37ターン=370秒=6分10秒で上昇してしまった。増速力2が効いている。

スピットファイアIは高度3,000mで上昇力665m/分。

Bf-109Eは6,000m(19,685ft)まで6分18秒となっているが、『ヨーロッパ上空の戦い』(Air Force)シリーズでは、30ターン(5分)で上昇してしまった。

以下はプロットする力が尽きたので何ターンかかるか調査できていない。

M.C.200は6,000mまで7分33秒。

96式艦上戦闘機は、5,000mまで7分18秒。

零戦21型は6,000mまで7分27秒。

隼は5,000mまで5分13秒。

 

最大上昇限度

最大上昇限度は、ハリケーンIは34,200ft(10,424m)、ハリケーンIIは36,500ft(11,125m)、スピットファイアIは31,900ft(9,723m)、Bf-109Eは36,000ft(10,972m)、M.C.200は29,200ft(8,900m)、96式艦上戦闘機は32,200ft(9,814m)、隼は38,500ft(11,734m)、零戦21型は33,800ft(10,302m)だ。96式艦上戦闘機の上昇限度は『丸メカニック 第28号』によると8,520mだから27,900ftが正しいだろう。少し良すぎるようだ。

 

後方視界

後方視界が悪かったと言われるハリケーンの視認修整は、液滴型風防の零戦21型と比べると確かに悪い。6時の方向は低-3,中-3,高-2だ。零戦が低-3,中-2,高-1だから後方の同高度や高高度は1ずつ悪い。つまり16.7%発見確率が低い。

 

武装

武装については、7.7mmx8挺なので、翼に2M2M 2M2Mの合計8Mだからさすがだ。7.7mmx12挺装備のIIB型は2M2M2M 2M2M2Mの12Mと凄い。同じ頃に開発要求が出た日本海軍の96式艦上戦闘機が7.7mm機銃x2で、1M 1Mの2Mだから大きな差だ。

 

比較してみた感想

ホーカー・ハリケーンは、スピットファイアに比べて低評価だと思うが、頑丈で重武装で、当時の機体としては、意外といい機体だと思った。

 

戦闘機の要求を出す際には、将来の戦争がどういう様相を呈するか考え、有利に戦うためにどんな性能を持ったどんな機体が必要か、考えて要求をまとめて出す必要がある。

そういう点で、ホーカー・ハリケーンの要求を出したイギリス空軍の先見性は驚く。

日本で爆撃機を迎撃するための上昇力があり、高速で、重武装の戦闘機の考えが出たのが、陸軍で1937年(昭和12年)から38年(昭和13年)の重戦で、海軍では1939年(昭和14年)の局地戦闘機だ。陸軍の重戦は対爆撃機のための迎撃戦闘機というわけではなかったようだ。そして、1942年(昭和17年)二式単座戦闘機鍾馗となり、海軍の局地戦闘機は、1943年(昭和18年)、雷電となる。

ホーカー・ハリケーンの要求が出たのが1934年(昭和9年)だから、日本軍は3年から5年遅れていたといっていいだろう。攻撃や決戦は考えていたのかもしれないが、本土や飛行場を守るという考えは及ばなかったのかもしれない。当時の日本は技術面だけでなくどんな戦争が起こりどんな兵器が必要かという想像力という点でも遅れていたのだと思う。