HJ『マーケットガーデン作戦』(Operation Market-Garden)で、イギリス軍第30軍団の前進について研究してみる。
【1】進撃距離
1級道路をArnhemまで進むとして距離を測ってみる。
Valkenswaard(1309)まで8ヘクス(12.8km)
Eindhoven(2010)まで15ヘクス(24km)
Zon橋(2308)まで20ヘクス(32km)
Veghel橋(3108)まで31ヘクス(49.6km)
Grave橋(4811)まで49ヘクス(78.4km)
Maars-Waal運河の橋(5612)まで57ヘクス(91.2km)
Nijmegen橋(5914)まで61ヘクス(97.6km)
Arnhem橋(7012)まで74ヘクス(118.4km)だ。
一級道路の移動力は1/4だから19移動力分。7移動力の機械化部隊なら3ターン(約1日)で突破できる。ドイツ軍との戦闘に手間取って仮に二倍になっても約2日だ。
史実でこの作戦を考えた参謀はそう考えたのだろう。実際にはそうはいかないのだが・・・。
【2】『タクテクス』誌での石川輝氏の提言
ドイツ軍の初期配置は下の写真のようになっている。(上が北東、左が北西)
イギリス第30軍団は、3ユニットがフロントラインより南、それ以外はヘクス0409とその周囲合計7ヘクスに自由配置だ。
このゲームでは機械化部隊は小河川を越えて移動できないので、この地図盤は下の写真のように複数の三角形に分断されてしまうのだ。
そのため中央の1級道路の突破を主攻軸とするとはいえ、それだけだと渋滞が発生し進めなくなるのだ。
そのため『タクテクス』第14号(1984/03/01)の「橋は遠すぎない!〈HJ〉"マーケットガーデン作戦"コンメンタール」で石川輝氏は、次の①から⑤の作戦を提示している。
①軍団全力で1級道路を主攻軸とする
②1級道路を進むが両脇のドイツ軍に対して警戒部隊を置く。
③主攻軸を1級道路、左翼の2級道路の二本で攻撃する。
④主攻軸を1級道路、右翼の2級道路の二本で攻撃する。
⑤中央の1級道路には若干の部隊を残し左右の2級道路を主攻軸とする。
それぞれ一度は試してみたい。
【3】地形効果レベルの比較
ドイツ軍部隊が配置されているヘクスの地形効果レベルを比較してみる。
このゲームで何らかの戦果を与えるには戦闘結果表でDnが出たとき、n≧地形効果レベルであればいい。
以下で[ ]内は、Dn n≧地形効果レベルになる確率が50%を超える、つまりサイコロの目が7以下となる戦闘比である。
A)2/22PGが守る0406は平坦地に運河橋で1+2=3[5-1]
B)6Penaltyが守る0507は平坦地の1[3-1]
C)2/6FJが守る0909は森2[4-1]
D)1/6FJが守る0809は荒地(Broken)の2[4-1]
E)2FJが守る0609は荒地(Broken)の2[4-1]
F)2/20PGが守るBoelhoef(0511)は町に運河橋で2+2=4[6-1]
G)16FJが守る0513は平坦地に運河橋で1+2=3[5-1]
左翼か右翼のどちらが攻撃しやすいかといえばA)F)G)を比べるとわかるとおり左翼のA)か右翼のG)になるだろう。ただG)を攻めるには部隊の移動のために時間がかかるのでA)つまり左翼からの攻撃がやりやすい。
また右翼の2級道路は0909で中央の1級道路に合流してしまう。
合流せずにValkenswaard(1309)まで機械化部隊の移動力で進むとすると、左翼で6、右翼でで10かかる。また左翼だとさらに左に1級道路があるのでそこからEindhoven(2010)を目指すこともできる。
Eindhoven(2010)までの移動力を比べても左翼10、右翼14。
小河川に分断されている右翼に比べ左翼は分断が少ない。つまり渋滞が発生しにくく、移動の選択肢が多い。
また右翼のVからドイツ軍の増援がきて戦いに巻きこまれる可能性がある。
これらの理由から二本目の攻撃軸は左翼の方がいいだろう。
今回、石川輝氏の作戦③「主攻軸を1級道路、左翼の2級道路の二本で攻撃する」を試してみる。
【4】検証
試しにショートシナリオ5をプレイしてみる。
■初期配置
赤い矢印が主攻軸、黄色い矢印が左翼の2級道路を使った攻撃軸だ。
■第1ターン
0406は2-1奇襲効果に航空支援で4-1
サイコロの目6以下だと戦果あり。
6でD3
2/22PGは1ヘクス後退。
0507は15-1。11-1になるのでサイコロの目が12以外ならば損害が出る。
8だったのでD8
6Penalty壊滅。
0609は24-4=6-1 奇襲効果と航空支援で8-1なのでサイコロの目が12以外ならば損害が出る。6でD7
0511は17-3=5-1 奇襲効果で6-1 橋の地形効果がなくなるので地形効果レベルは町の2。サイコロの目が9以下で損害が出る。
6でD8
Boelhoef(0511)占領。
ドイツ軍はValkenswaard(1309)に援軍を送る。
■第2ターン
0506で7-1 サイコロの目8 D4
2/22PG壊滅。左翼はこれで前進できそうだ。
0709で16-1 サイコロの目10でD6。2FJ壊滅。
0612で17-2=8-1 サイコロの目8 D5 2/20PG壊滅
2G/5が袋小路に入ってしまった。こういう動きをしてはいけない例だ。
ドイツ軍はイギリス軍の左翼(ドイツ軍の右翼)からの突破を防ぐ。
■第3ターン
イギリス軍機甲部隊は中央突破をやめて左翼突破に切り替える。
1207は16-5=3-1 航空支援で4-1 サイコロの目が7以下なら何らかの戦果が出る。
6 D3 1222歩兵連隊壊滅。
0809で25-3=8-1 サイコロの目9 D4
0513で9-3=3-1 航空支援で4-1 サイコロの目5 D3 16FJ壊滅。
ドイツ軍は地図盤IVからイギリス軍が突破するのを防ぐ。
■第4ターン
0908は25-2=12-1 38(1) 1/6FJ壊滅
1610で16-3=5-1 地形効果レベルは3 サイコロの目が7 D3
ドイツ軍は1ヘクス後退
連合軍は地図盤外に離脱できなかったのでドイツ軍の勝利だ。
イギリス軍は、石川輝氏が言う「③主攻軸を1級道路、左翼の2級道路の二本で攻撃」した。
ドイツ軍をほぼ全滅させた上で中央と左翼の両方の道路を使って、かなりうまく進めたがあと1ヘクス前に進めなかった。
ヘクス1910に非機械化部隊を配置することで、ヘクス1909-1910間の小河川にZOCが効いてイギリス軍の地図盤突破を防ぐことができるのだ。
この後、ドイツ軍は、イギリス軍に突破されてしまうのは明らかだ。
しかし、寡兵でよくイギリス軍を止めたといえよう。
少ないユニット数で、短時間で検証できるショートシナリオだから、いろいろ検証できて面白い。