Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

『歴史群像』No.180(ワン・パブリッシング)(2023/08)を読んでみた(その1)

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もくじはこちら


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読んだ時点でブログにあげていこうと思う。

 

p.33 日米最終空母決戦 マリアナ沖海戦 日本軍痛恨の中部太平洋失陥 文=宮永忠将

マリアナ沖海戦に至るまでの連合軍の葛藤を中心に説明した記事だ。

 

キング作戦部長が、対日投入戦力が米軍の15%にすぎなかったのを30%に増やすべく主張した。

マッカーサー案のニューギニア/ソロモン諸島=>フィリピンという経路に対して、ギルバート諸島=>マーシャル諸島=>マリアナ諸島と進む案を提示した。

パイロット出身の将官・仕官を「ブラウンシューズ」と呼び、大艦巨砲主義に凝り固まる将官を「ブラックシューズ」と呼んでおり、パイロット免許を持っているが飛べない将官を「キウイ」と呼んでいた米軍。

キングやニミッツと対立していた航空専門家のタワーズが閑職に追いやられ、下からの突き上げて更迭させられたパウナル。パウナルの消極的な指揮に対する不満はルーズヴェルト大統領まで上がっていた。パウナルの後任がブラウンシューズ第一世代のマーク・ミッチャーだった。

 

パラオの占領=>ミンダナオ島上陸が定石だが、陸軍航空隊アーノルドはB-29を対日戦略爆撃に集中しようと考え、キングはマッカーサーへの対抗上、マリアナ攻略を優先しようとした。

マッカーサーマリアナ攻略作戦阻止に動いた。マリアナ攻略にはエニウェトクからも1000浬(約1800km)もあり、リスクが大きいので、パラオの占領=>フィリピン攻略を目指すべきだと言うのだ。

海軍首脳部もキングに反対する中、米大統領直属の軍事顧問団である東郷参謀長会議(JCS)は、マッカーサーニューギニア攻略とフィリピン作戦に集中させ、ニミッツには6月の間にマリアナ侵攻作戦の実施を決定した。

 

一方の日本軍は1943年10月末に始まった「ろ号」作戦で、約二週間の戦いで投入機材の70%、47%の搭乗員を失った。第三次ブーゲンヴィル沖航空戦で、レーダーと戦闘機官制、VT信管の組み合わせで、日本軍は大損害をこうむったのだ。

1944年春空母に着任してくる補充搭乗員の大半が飛行時間150時間を割り込んでいた。

「あ」号作戦では、パラオあるいは西カロリンでの艦隊決戦を狙い、ミンダナオ島とボルネオの中間地点にあるタウイタウイ泊地に集結した。

米艦隊を自軍勢力圏内に引き込んだ上で射程外からのアウトレンジ戦法であり、基地機と空母機が連携する戦いを策定していた。しかし、搭乗員の訓練はできておらず、通信網も不十分だった。

 

1944年6月、ヨーロッパで「オーヴァーロード」作戦が実施されている頃、太平洋では、正平0万、600隻の艦艇がマリアナ諸島を襲った。正規空母7隻、軽空母8隻を擁するTF58だ。TF58.1の空母はホーネットⅡ、ヨークタウンⅡ、ベローウッド、バターン。TF58.2はバンカーヒルとワスプⅡとモントレー、カボット。TF58.3はエンタープライズレキシントンⅡ、プリンストン、サンジャシント。TF58.4はエセックス、買うペンス、ラングレーだ。艦載機は艦上戦闘機443機、夜戦27機、艦上爆撃機233機、艦上攻撃機193機だ。また、TF58.7には7隻の戦艦がいた。

 

日本軍は第一航空艦隊(基地機)が第61航空戦隊に零戦154,月光31、彗星14、銀河67、彩雲5、一式陸攻22。

第22航空戦隊に零戦111、雷電49、月光7、彗星24、天山11、一式陸攻60、百式司偵2。

第26航空戦隊に零戦22、彗星3、一式陸攻17

 

第一機動部隊 甲部隊に、空母大鳳、翔鶴、瑞鶴(艦戦80、戦爆11、艦爆79、艦攻44)

乙部隊に、空母隼鷹、飛鷹、龍鳳(艦戦53、戦爆27、艦爆40、艦攻15)

第三航空戦隊に空母瑞鳳、千歳、千代田(艦戦18、艦爆45、艦攻27)

 

日本軍は予定通り、アウトレンジ作戦を展開したが、スプルーアンスマリアナ諸島占領を最優先して、防空戦闘に徹するように厳命した。ミッチャーら機動部隊の将兵スプルーアンスの命令に激怒していたが、レーダーと戦闘機管制の組み合わせで日本軍攻撃隊を文字通り全滅させた。

TF58は帰投が夜間になる危険を冒して日本軍攻撃のために戦闘機85機、急降下爆撃機77機、雷撃機54機の合計216機を発進させ、探照灯を真上に照らして攻撃隊の帰投を助けた。この攻撃で空母飛鷹が沈み、翔鶴、隼鷹、千代田が損傷した。

 

[感想]

仲が悪かったり主張が真っ向からぶつかり妥協できなかったりするのは、人間社会だから、どの国、どの時代にもあることだ。キングやニミッツvsマッカーサー、ブラウンシューズvsブラックシューズ、スプルーアンスvs現場将兵など。

そういう対立に対する対応の仕方に国民性が出ると思う。日本はうやむやにして、玉虫色の解決を図ろうとする。一方、アメリカは、どんどん上にエスカレーションして、上が判断する。パウナルに対する不満がルーズヴェルト大統領まで上がっていたのは驚きだ。

空母決戦では先制攻撃が勝利につながるのが常識だった当時、上陸部隊を支援するために日本軍空母を追わずに防空戦闘に専念させる判断をしたスプルーアンスの判断も凄い。

規模は違うが同じような状況だったミッドウェー作戦時の南雲長官の判断と比べると興味深い。

スプルーアンスの指揮が結果的には成功したわけだが、仮に失敗していたら責任を問われ彼は更迭されただろう。ミッドウェー作戦で敗北したのにその責任をとらせずに南雲長官に空母部隊の指揮をとり続けさせた日本軍とは対照的だ。

 

日米の軍隊という組織/社会の違いがよくわかる面白い記事だった。