Haruichibanのウォーゲームのおと

80年代にシミュレーションゲームにはまったが長い冬眠に入り、コロナ禍やライフイベントの変化により、再開した出戻りヘッポコウォーゲーマーのノート。

AT『ノルマンディ上陸作戦』作戦研究その1 ステップ1上陸作戦準備 連合軍


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アド・テクノス『ノルマンディ上陸作戦』(Normandy Operation Overlord)の作戦研究第1弾として、ステップ1上陸作戦準備の作業のために、様々な計算をしてみた。

 

本ゲームでは、上陸作戦準備時のどの作業が何に効果があり、そこにかけるコストがどの程度なのか、将軍の支援をどの程度加えるといいのか、初めてゲームをするときにわからない。

 

それぞれの作業が何に効果があるのか説明し、私が思う優先度を高中低で説明する。

 

 

連合軍の作業

連合軍の作業には、次のようなアクションをとれる。

(1)作業量消化(輸送システム)

(2)作業量消化(DD)

(3)作業量消化(上陸用舟艇)

(4)作業量消化(輸送機)

(5)作業量消化(海軍)

(6)作業量消化(空軍)

(7)作業量消化(マルベリー=人工港)

(8)訓練

(9)偵察(海岸防御陣地)

(10)偵察(砲台)

(11)偵察(戦闘ユニット)

(12)機密保持

(13)交通破壊

(14)スパイボックス(ドイツ軍上層部の判断)

(15)スパイボックス(交通破壊のポイント)

(16)スパイボックス(西方総軍・国防軍予備ボックスにある戦闘ユニットの部隊名)

(17)作戦会議

 

連合軍の作業期待値は次のとおりだ。この表は『タクテクス』(TACTICS)第26号(1986/01)にも載っているが、同誌では「1ターン当たりの平均的作業量」とあるが、これは平均値ではなく期待値である。

例えば、スタッフ0で作業修正5で1.00とある。平均だと思うと作業量2や3があるような錯覚に陥るが、スタッフ0の場合、最大1だ。期待値1だから確実に1作業量は消化するが、2作業量消化することは絶対にないので注意を要する。

スタッフ表期待値 作業修正0 作業修正1 作業修正2 作業修正3 作業修正4 作業修正5
スタッフ0 0.17 0.33 0.50 0.67 0.83 1.00
スタッフ1 0.50 0.67 0.83 1.00 1.00 1.00
スタッフ2 1.17 1.50 1.67 1.83 2.00 2.00
スタッフ3 1.67 2.00 2.33 2.67 2.83 3.00
スタッフ4 2.17 2.67 3.17 3.50 3.83 4.00

【1】作業量消化(輸送システム)

上陸師団数+後続師団数の合計で作業量が決まる。

史実のように上陸師団5個後続師団4個の合計9個師団の場合、42ポイントとなる。

 

未消化ポイントの半分(端数切り上げ)だけ、後続師団ユニットを取り除き、揚陸師団とする。

つまり、8ポイント未消化の場合、4個師団を後続師団から揚陸師団にする。

これは最重要作業と言っていいので、優先順位は高だ。

 

【2】作業量消化(DD)

DDタンクユニットは上陸時だけ登場する。

上陸に成功すると師団による攻撃の時にDDユニット数分だけサイコロの目修正できる。

上陸師団の戦闘力によって差があるが、上陸師団の戦闘力が6の時、DDが2ユニットあるとサイコロの目修正+2になる。その時の期待値は下の表の通り-1.83となる。1戦力の海岸防御陣地なら、ほぼ壊滅できる計算になる。DDが3ユニットあれば期待値2なので、2戦力の海岸防御陣地を壊滅させることが可能だ。

  dr±0 dr+1 dr+2 dr+3
期待値 -1.50 -1.67 -1.83 -2.00

上陸師団の戦闘力が4の時の期待値が下の表である。

DD1ユニットで期待値-1.17なので、1戦力の海岸防御陣地なら撃破できるだろう。

  dr±0 dr+1 dr+2 dr+3 dr+4 dr+5
期待値 -0.83 -1.17 -1.50 -1.67 -1.83 -2.00

未消化分ポイント数だけDDユニットを取り除く。

DDは、上陸時だけ使用し、上陸戦闘のサイの目修正なので、優先順位は低だろう。

 

【3】作業量消化(上陸用舟艇)

上陸師団ユニット数をもとに決定した作業量+DDタンクユニット数+コマンドユニット数で作業量が決定する。

未消化の場合、未消化分ポイント(端数切り上げ)だけ、上陸師団の戦闘力を減らす。

上陸時の戦闘力は通常の戦闘力より大きいとはいえ少しでも戦闘力が高い方がいいので、この作業の優先順位は高だ。

 

 

【4】作業量消化(輸送機)

降下師団のユニット数に基づいて決定する。

4個空挺師団の場合、作業量70だ。上陸師団4個の場合の作業量27と比較すると、2.6倍のコストがかかる。

上陸時の基本戦闘力6に対して空挺師団の基本戦闘力4である。

同じ4個師団でも戦闘力は空挺師団16に対して上陸師団24だから、上陸師団の戦闘力は空挺師団の1.5倍だ。

空挺師団の1作業あたり0.23戦闘力に対して、上陸師団のそれは0.89と3.8倍効率がいい。

 

つまり、空挺師団を降下させるのは、労力がかかる割に小さい戦闘力の部隊にしかならないのだ。

 

未消化ポイントの半分(端数切り上げ)だけ、降下ユニットの戦闘力を減らす。

 

空挺部隊は上陸部隊の補助として少数降下させるのにとどめるべきだ。

 

優先順位は中から低だ。

 

【5】作業量消化(海軍)

海軍ユニットは上陸時だけ登場する。

上陸時に艦砲射撃を実施し、海岸防御陣地や砲台を破壊できる。

海岸防御陣地は1/3の確率で、砲台は1/6の確率で破壊・除去、3/6の確率で火力を減少できる。

海岸防御陣地は上陸師団がDDによるサイの目修正で破壊できる。

砲台を破壊できるのは、コマンドと海軍だ。

コマンドによる破壊や火力減少確率は下の表のとおりで56%だ。

砲台破壊・除去 14%
火力減少 42%
損害なし 28%
上陸失敗・除去 17%

海軍による破壊や火力減少確率は下の表のとおりで67%だ。

砲台破壊・除去 17%
火力減少 50%
損害なし 33%

そのため海軍の方が砲台破壊や火力減少の確率は高い。

 

作業量は海軍1ユニット目が17作業量だが、それ以上増やす際は1から2作業量である。

 

未消化ポイントだけ、海軍ユニットを減らす。

 

砲台を確実に破壊するためには、優先度中だ。

 

【6】作業量消化(空軍)

空軍はステップ1上陸作戦準備時の交通破壊、ステップ3陸上戦闘時の航空阻止と活躍する。

作業量も空軍1ユニット目が12作業量だが、それ以上増やす際は1から2作業量である。

 

未消化ポイントだけ、空軍ユニットを減らす。

 

ステップ3まで活躍するので、優先度高だ。

 

【7】作業量消化(マルベリー=人工港)

マルベリー=人工港は、意外にもプレイでは何にも効果がない。史実でも嵐で1個破壊され役に立たなかったというからそんなものかもしれない。

しかし、勝利条件には大きく影響する。

マルベリーをドイツ軍が1個除去すると2勝利ポイント、始めから連合軍がマルベリーマーカーを1個しか配置しないとドイツ軍が2勝利ポイントを得る。

 

未消化ポイントだけ、連合軍の勝利得点を減らす。

 

勝利条件に直結するので、優先度は中から高だ。

 

【8】訓練

空挺降下や上陸時のサイコロの目修正があり、戦闘力減少数に影響がある。

練度Cだとサイコロの目+1、練度Aだとサイコロの目-1になる。

 

連合軍の訓練はスタッフ数と将軍の作業修正値により、訓練ユニット数が変わり、サイコロの目によって練度が上昇する数が変わる。

訓練しないと1ターンに1ずつ練度が落ちる。

サイコロの目によるので、期待値は3だから、1ユニットあたり1ターンごとに期待値としては2練度が上昇する。

 

練度を上げておかないと戦わずして戦闘力が落ちるので、優先度は高だ。

 

【9】偵察(海岸防御陣地)

海岸ヘクスのうち3ヘクスを選びそこに海岸防御陣地があるかどうか確認する

これをすると、上陸地点を教えるようなものだ。

5月や6月になるとドイツ軍はほぼ全海岸ヘクスに海岸防御陣地を配置できているし、DDや海軍ユニットによる掩護を十分にすれば海岸防御陣地は恐るるに足らないので、優先順位は低だ。

 

【10】偵察(砲台)

連合軍プレイヤーがこれを宣言すると、ドイツ軍は砲台を設置した全ヘクスを答えなければならない。

砲台を破壊できるのは海軍とコマンドだけだ。海軍とコマンドの配置場所を確定させるために、Dデイの数ターン前の優先順位は高だ。

 

 

【11】偵察(戦闘ユニット)

内陸ヘクスのどれか1ヘクスを選び、そのヘクスと隣接ヘクスにドイツ軍ユニットがいる場合、ドイツ軍は戦闘ユニットの兵科とヘクス番号を答える。

内陸ヘクスは数が多いので、外れることが多い。

また、これをすることで空挺降下ヘクスを教えることにもなる。空挺降下で狙っているヘクスはここだと思わせ、実は別なヘクスに降下する駆け引きとしても使える。

重要ヘクスについては、確認しておく必要があるが、偵察後、部隊が移動してくることもあり得る。

 

的中する確率が低いので、優先順位は低だ。

 

【12】機密保持

連合軍がサイコロを振り、出た目とスタッフ表の交差したところの数値を、ドイツ軍に伝える。

ドイツ軍はサイコロを振り、連合軍に教えられた機密保持の数値と交差したところの数値だけ上層部表のマーカーを動かす。

-4から-6だとカレー説、+4から+6だとノルマンディ説になる。

ロンメルがヒトラーとの交渉をするときにカレー説だとサイコロの目-1、ノルマンディ説だとサイコロの目+1となる。

 

ドイツ軍の交渉表の確率は以下のようになる。

  A B C D E F G H
カレー説 0% 0% 6% 11% 22% 25% 28% 8%
通常 0% 3% 8% 14% 25% 22% 22% 6%
ノルマンディ説 3% 3% 14% 17% 25% 19% 17% 3%

AからHの意味は下記の通りだ。

A ロンメル、西方総軍司令官に任命 (増援あり)

B グデーリアン、ノルマンディ説に同意

C 西方総軍の指揮権強化 (増援あり)

D ノルマンディに、装甲師団の投入を認められる (増援あり)

E 西方総軍予備からの増援を認められる (増援あり)

F 口約束

G 要請拒否(ヒトラーイニシアチブ+1)

H 内陸機動戦略採用(ヒトラーイニシアチブ+1) (ノルマンディから部隊が移動する)

 

なるべくカレー説にしておく必要がある。

増援が増えたり減ったりするので影響は大きい。

しかし、ドイツ軍がロンメルを総統本営に置いていないと、ドイツ軍はこの交渉を行えない。

 

優先度は中だろう。

 

【13】交通破壊

連合軍空軍の作業が進み、作業量マーカーが空軍ユニットのあるマスに入り好天ターンである場合、ドイツ軍プレイヤーがサイコロを振り、1の目が出ると、ドイツ軍は交通破壊マーカーを1つ進める。

 

交通破壊マーカーが1以上の時、ドイツ軍の増援を地図盤に登場させる際にサイコロを振り、交通破壊ポイントより大きい目が出ると増援が登場する。場所によっては交通破壊ポイントの半分(端数切り捨て)より大きな目の時増援が登場する。

 

空軍の作業を進めると自然に発生するので、粛々と進めればいいだろう。

 

【14】スパイボックス(ドイツ軍上層部の判断)

【12】機密保持で述べたようにドイツ軍上層部がカレー説かノルマンディ説かによって増援の可能性が変わってくる。しかし、ロンメルが総統本営にいないとその影響は発揮されない。

将軍をスパイボックスに配置するより他の作業を支援した方がいいと思う。

優先度は低

 

【15】スパイボックス(交通破壊のポイント)

交通破壊ポイントの影響は、【13】交通破壊で述べたとおりだ。

ドイツ軍増援の登場がどの程度サイコロの目に影響するか知ることができる。

将軍をスパイボックスに配置するより他の作業を支援した方がいいと思う。

優先度は低

 

【16】スパイボックス(西方総軍・国防軍予備ボックスにある戦闘ユニットの部隊名)

確認した時の状況から変化するだろう。

将軍をスパイボックスに配置するより他の作業を支援した方がいいと思う。

優先度は低

 

【17】作戦会議

作戦会議ボックスに将軍を集めると、以下の4つのうち1つを実施できる。

(1)上陸ヘクスの変更

(2)降下ヘクスの変更

(3)スタッフ数の増加

(4)Yデイの変更またはDデイの決定

 

ただし、作戦会議中は、作業に対する将軍達による作業修正が実施できなくなる。つまり作業が遅れる。

 

そのため、ここぞという時にしか作戦会議は実施できないものと思った方がいい。

 

 

【18】で、Dデイをいつに設定して、どんな戦力を準備し、将軍をどこに配置するといいの?

「細かい計算はわかった。で、結論として、Dデイをいつに設定して、どんな戦力を準備し、将軍をどこに配置するといいのかね?」

アイゼンハワーだけでなくこのゲーム・プレイヤー全員が知りたいところだ!

 

その研究はまた今度です。乞うご期待!